第二章【水回りの間取り 】洗面脱衣室・浴室・トイレの配置と動線のポイント| 一級建築士と学ぶ!「提案力が上がる」住宅設計術
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連載『「提案力が上がる」住宅設計術』では、住宅のプランニングで押さえておきたいポイントや設計のコツを紹介します。第二章のテーマは、「水回りの間取り」です。
洗面脱衣室・浴室・トイレは、毎日の身支度や入浴、洗濯などに欠かせない場所です。配置によって家事のしやすさや生活動線が大きく変わるため、間取りを考えるうえで重要なポイントのひとつです。
今回は、 暮らしを整える場所でもある水回り「洗面脱衣室・浴室・トイレ」をプランニングする際に配慮したい動線や、施主に確認しておきたいポイントをまとめましたので、ぜひご一読ください。
1.水回りの間取りを考える前に| 洗面脱衣室・浴室・トイレはどのような場所か
洗面脱衣室は、手洗いや歯磨き、洗顔などの身支度を行う「洗面室」と、主に入浴の前後に服を脱いだり着たりする「脱衣室」を一部屋にまとめたスペースを指します。浴室は、髪や体を洗う洗い場と、湯船につかる浴槽で構成されています。トイレは、排泄をするための場所です。
いずれのスペースも、使用する時間が朝・夜に集中することが多く、日々の暮らしを快適に過ごし、からだを整えるために必要不可欠な場所と言えるでしょう。
また、いずれのスペースにも給排水設備を備えつけるため、それぞれの設備について知識を身につけておくことも大切です。住まい手の叶えたい暮らしに合わせ、設備の特性を踏まえた的確な提案や、適切な配置計画を目指しましょう。
2.洗面脱衣室・浴室・トイレの間取りを検討しよう
①水回りスペースはひとつにまとめる
洗面脱衣室・浴室・トイレは、生活の中で同時に使用することが多い空間です。
例えば、トイレを出てから洗面脱衣室で手を洗う、洗面脱衣室で服を脱いでから浴室に行く、浴室を出てから洗面脱衣室で身支度を整えるなどといった使い方があります。そのため、3つのスペースが隣り合うようにするとスムーズな動線計画となるでしょう。
また、先ほども触れたように、これらのスペースには給排水設備を備え付けます。3つのスペースをまとめれば、配管距離も短くなり、効率のよい給排水計画が可能になります。さらに、家事動線を考慮し、キッチンとの距離もできる限り近くなるようにするとよいでしょう。
②「洗濯」家事動線を考慮する
今回は水回りに関係する家事のうち、洗濯に注目しましょう。洗濯では、「洗う」「干す」「たたむ」「しまう」という動作があります。それぞれの動作を行う場所が近くにあると動線がスムーズになります。
まず、「洗う」では、洗濯機を使用する場合と、手洗いで洗濯をする場合が考えられます。洗濯機や乾燥機は、洗面脱衣室に設置することが一般的です。脱衣室で服を脱ぎますし、洗面台や浴室で部分的に手洗いした衣類をそのまま洗濯機へ入れることができるため、利便性が高いと言えるでしょう。
続いて「干す」という動作ですが、外に干す場合と室内に干す場合が考えられます。外の場合はどこに干すのかを住まい手と相談し、干すまでの動線 導線がスムーズになるよう提案します。室内に干す場合は、どのスペースに干したいのか確認します。専用のサンルームを設けたい場合やあるいは普段あまり使用しない部屋でよい場合もあります。最近では、花粉や黄砂、突然の雨など、外に干すことが難しい日も多くあるため、できる限り室内に干せる場所を提案すると喜ばれるでしょう。スペースの確保が難しい場合には、浴室に洗濯物を干すためのパイプや、設備を提案するのも一つの方法です。
「たたむ・しまう」という動作では、住まい手によって好みが分かれます。家事用の作業スペースでたたみたい場合や、リビングなどでテレビや子どもを見ながらたたみたい場合もあります。あるいは、毎日乾燥機を使用するため、そのまま洗面脱衣室でたたみ、洗面脱衣室に設置した衣装ケースにしまう場合もあります。最近では、取り込んだ後は、家族ごとに分別するだけで、しまう作業は各自に任せるケースも見られます。ヒアリングを十分に行い、それぞれの住まい手に合わせた動線計画を心がけましょう。
③キッチンから近い場所にする
洗う、干す、たたむと動作が分かれているように、洗濯という家事は一日の間に数回に分けて行います。そのため、洗面脱衣室が日常的に過ごす場所から近い場所にあると、効率よく家事を進めることができます。具体的には、料理をするキッチンや家族が過ごすリビングなどです。
④トイレは利用しやすい場所に配置しよう
家族の中に小さな子どもや年配の方がいる場合、特に気をつけたいのがトイレの位置です。
例えば、外出先から帰宅し、急いでトイレを使用したい場面や、夜中にトイレに行きたくなる場面も少なくないでしょう。そのため、トイレは家族の出入りする場所や配慮が必要な家族の寝室から近い場所に配置することがおすすめです。子どもや年配の方がいない場合でも、数十年先の未来まで考慮しておくと、先を見越した思いやりのある計画となります。
また、洗面脱衣室との位置関係も大切です。洗面脱衣室を必ず通ってトイレに行く間取りでは、家族が洗面脱衣室を使用している時にトイレに行けなかったり、そうでなくとも動線が重なってストレスを感じたりする場合があります。前述した通り、トイレは洗面脱衣室から近い場所にあるとよいですが、奥まった場所にならないように注意しましょう。
3.洗面脱衣室・浴室・トイレの間取りを計画するときの5つ のポイント
①音に配慮した間取りでプライバシーを守る
水回りでは、音への配慮も大切です。玄関やリビングから近い方が便利ですが、あまりにも近くに配置してしまうと、来客や家族からプライバシーを守ることができません。適度な距離を取ることも忘れないようにしましょう。
また、隣り合わせになる居室には、水回り側の壁に防音性能を追加したり、クローゼットなど収納を配置したりして、伝わる音が小さくなるように工夫します。
②湿気を溜め込まない換気計画を
水回りは湿気がこもりやすく、カビや結露が発生しやすい場所です。換気設備と窓を組み合わせ、効率よく換気ができるように工夫しましょう。そのため、建物の四隅にL字で配置する、もしくは外壁側に並べて配置するなど、外壁側で検討すると配置計画がスムーズに進むでしょう。窓を配置する場合には、隣接する建物や道路なども確認し、外部からのプライバシーや防犯にも配慮します。
③温熱環境に配慮する
リビングや個室から出たときに、夏場であれば暑い、冬場であれば寒いと感じた経験があるのではないでしょうか。居室であれば、暖房や冷房で快適な温度を保とうとしますが、短時間しか使用しない水回りでも同じような環境を整えることはなかなか難しいと言えるでしょう。
しかし、洗面脱衣室・トイレ・浴室は、服を脱いで使用する場面がしばしばあります。水回りでの温度差による不快感や、冬場のヒートショックによる健康被害を減らすために、居室との温度差をできる限り抑える必要があります。そのためには、居室だけでなく水回りの断熱性能にも十分配慮し、熱の出入りを極力小さくすることが重要です。
④トイレは介助者が入れるスペースを
トイレは一人で使用するとは限りません。子どもが小さい場合には、トイレトレーニングが必要で、大人が見守ったり手助けしたりする必要があります。介護が必要な方の中には、一人でトイレに行くことが困難になる場合もあるでしょう。住宅で、公共施設にある多目的トイレのようなスペースを確保することは難しいですが、多少なりともゆとりを持たせることができるように検討します。スペースの確保が難しい場合には、扉を開けた状態であれば介護できるかどうかも確認してみましょう。
⑤ストックやタオルなどの収納スペースも確保
洗面脱衣室やトイレ、浴室では、複数の洗剤やシャンプー、トイレットペーパーなど、多種多様なストックが必要です。頻繁に補充する機会が発生することから、ストックを収納する場所は、水回りから近い方が利便性が高くなります。また、タオルや下着類などの着替えを置くスペースも確保し、ストレスなく身支度できる場所を提案しましょう。どのくらいの収納スペースが必要か、棚や扉は必要かなど、住まい手と相談しながら進めるとよいでしょう。
4.4人家族の水回りの間取りを3Dで解説
ここまで、水回りの配置や、洗面脱衣室・浴室・トイレを計画する際のポイントについて解説してきました。
ここからは、実際に一級建築士が計画した4人家族の二階建て住宅を3Dで見ながら、「なぜこの配置にしたのか」「どのような暮らしを想定したのか」を詳しく見ていきましょう。
一級建築士が計画した4人家族の2階建て戸建てプラン
今回も夫婦と子どもが2人、4人家族の住まいですが、2階建の住宅として計画しました。
今回は2階建なのですね。設計のポイントはどこですか。
1階は、中央の階段を挟んで西側に水回りをまとめ、東側にキッチン、ダイニング、リビングをまとめました。子ども部屋や寝室は2階に配置し、個室に入る前に共同の読書スペースを設け、第二のリビングのような空間としました。
では、この間取りを3Dで見てみましょう!
洗面脱衣室を広くとっていますね!
スペースを細長くしたのはどうしてですか?
洗面脱衣室を細長い形にすることで、トイレ側とキッチン側の2カ所に開口部を設置でき、回遊性を持たせています。洗面脱衣室としての本来の使いやすさを維持しながら、慌ただしい時間帯でも家族がスムーズに移動しやすくなるようにしました。
複数の方向から水回りへアクセスしやすくした回遊動線
また、キッチンから洗面脱衣室へ、洗面脱衣室から階段側へ移動できるため、家事動線も考慮できました。
なるほど。階段側へ直接移動できるので、2階にも上がりやすいですね。
今回の住宅は、2階に物干しスペースを設けています。階段上がってすぐ、踊り場スペースを広くとり、室内で洗濯物を干せるようにしました。天気のよい日にはバルコニーでも干せるように、踊り場スペースと隣り合わせに配置しています。
洗濯物を「干す・しまう」までスムーズに行える動線計画
青:洗濯物を干す動線 / 緑:洗濯物をしまう動線
外に干せるだけでなく、天気が不安定な日にも洗濯物を干すことができて、家事のストレスを軽減できそうですね。
取り込んだ洗濯物は、隣りの読書スペースを活用してたたむこともできます。
また、そのまま各部屋に収納しにいくこともできるので、無駄な動きは少なくなるはずです。
洗濯という家事ひとつにおいても、動線にとても配慮されているのですね。
今回もありがとうございました!
執筆者
一級建築士・住宅収納スペシャリスト
意匠設計事務所で、新築からリノベーションまで住宅を主軸として、図面作成から施主や現場での打ち合わせ、現場監理まで携わる。
10年以上の実務経験をもとに、現場で役立つ設計・図面作成の考え方を監修。
本連載では、住宅のプランニングで押さえておきたいポイントや設計のコツを解説している。







