[連載]家づくりは「外まわり」で決まる―外構から考える住まいづくり 危険ブロック塀と防災・備災のはなし

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マイホームデザイナープラスをご覧の皆様、こんにちは。
日本庭女子会〜にわとわに〜のメンバーによる 「家の外まわり(外構やお庭)」にまつわるお役立ち情報をお届けしていた本コラム、先月最終回を迎えました。

ちょうど防災の月である9月。今回は番外編として「家の外まわり(外構やお庭)」の視点から防災・備災について考えます。まず初めに、今夏中に発生しました令和8年熊本地震、千葉や名古屋をはじめとする各地での記録的豪雨など、相次ぐ災害で被災された地域の皆様に心よりお見舞い申し上げます。(本コラムは9月中旬に執筆しております)

今回取り上げるのは、皆様がお住まいの街の風景の中に必ずある身近な「ブロック塀」です。 
災害に備えるうえで、家づくりや家の保全のために知っておきたいことをお伝えします。

前回(最終回)に引き続きまして、ブロック塀診断士の資格をもち、地元横浜市の危険ブロック塀改善工事にも積極的に携わっている、株式会社アフロとモヒカン芦川がお届けいたします。(プロフィールはこちら)

ブロック塀って本当に危険なの?

「地震でブロック塀が倒れた」というニュースを見たことがある方も多いと思います。
では、ブロック塀そのものが危険なのでしょうか。答えは、そうではありません。

現在の補強コンクリートブロック造の塀には、安全性を確保するため、高さや厚さ、鉄筋の入れ方、基礎、倒れにくくするための控壁などについてルールが定められています。 

ブロック塀の設計基準は、建築基準法施行令第62条の8(塀)、平成12年建設省告示第1355号などによる安全基準があり、日本建築学会からもより安全性を考慮した規準が示されています。 私たち外構専門業者の多くはこの規準の仕様に従い、ブロック塀を設計・施工しています。

正しく設計・施工されたブロック塀は、決して「危険なもの」ではありません。
日常の安心を確保するほか、強風による物の飛来や雨水の流入、車両の侵入などの外的危険から敷地を守る役割もあります。

ブロック塀は非常に有益な建材であり、法規制のもとにある「建築物」であることを皆さんにぜひ知っておいていただきたいと思います。

ブロック塀とは、そのなりたち

ブロック塀とは、ブロック状の建材を積み上げて造る塀です。

日本では明治〜大正にかけて西洋の建築技術とともにレンガ・石造、あるいは空洞ブロック造などの「組積造(メーソンリー)建築」が広まりました 。しかし、大正12年(1923)の関東大震災でその多くが倒壊し、法改正で建築構造の主流から外れた一方、「塀」としてはその後も広く使われました。

関東大震災で倒壊した横浜・山手80番館遺跡

また、建築材料としてのセメントやコンクリートブロックも国内で普及し、戦後にはアメリカからの技術導入などもあり、「運搬・施工性などの有益性の高い不燃建材である」こと、「型枠などの予備資材が不要で築塀できる」という利点から、鉄筋で補強した「補強コンクリートブロック造」がRC造の画期的代用品として広く普及することになります。その中で、製品規格の乱立を防ぐためJIS規格化され、以降大きな地震が起こるたびに法の規制や資格制度も強化されていきました。

また日本では「屋敷には塀」という家構えが好まれ、金属フェンスが普及する以前は、一般住宅でも高いブロック塀が多く採用されました。ちょうど、日曜夕方の国民的アニメ一家のお宅のような塀が、一時期の日本の一般的な街並みを形成していたのは皆さんご存知の通りです。

注意したい3つのブロック塀

では、その安全対策が施されてきたブロック塀の中で、どのようなものが今 「危険」とされているのでしょうか。そこには大きく3つの原因があります。

①鉄筋で補強されていない「組積造の塀」

一般に「ブロック塀」と呼ばれるものには、「組積造の塀」と「補強コンクリートブロック造の塀」があります。

組積造の塀は、レンガや石などを積み上げ、材料同士のかみ合わせや摩擦、自重などによって自立するものです。大きめの地震の際に「倒れたブロック塀」と称されたニュースを聞くことがありますが、鉄筋の入っていない、組積造の塀を指しているケースが多くあります。

一方「補強コンクリートブロック造の塀」というのは、積み上げたコンクリート製の空洞ブロック内に鉄筋を配し、モルタルを充填して分離しないよう一体化したものです。
法令等の行政上ではその2種類を合わせて「ブロック塀等」と称しています。

一般的には「レンガや石」あるいは「コンクリートブロック」である差であったり、「馬目地(噛み合わせるような交互な目地の積み方)」あるいは「芋目地(鉄筋を通せるように目地が交差した積み方)」である差などから見分けられる場合もあります。
ただし、古い塀などでは外観だけで正確な判断はできないので、ブロック塀診断士などの専門家に相談するか、鉄筋探査機などを用いた内部確認をお勧めします。

大谷石の組積造の塀(馬目地) ※現在の法規に抵触する高さです(現在は改善済み)

補強コンクリートブロック造の塀(芋目地)

②古くなり、劣化が進んでいる塀  

現在「組積造の塀」にも「補強コンクリートブロック造の塀」にもその安全性を確保するための法規制がありますが、法改正前の古いものについてはその限りではありません。そのような、建築当時は適法だった建物が、その後の法改正で現行法に合わなくなった状態を「既存不適格」と言います。

既存不適格な補強コンクリートブロック造の塀 ※現在の法規に抵触する高さです

改善工事で昔のブロック塀を壊すと、中には強健なものもありますが、多くは基礎が小さかったり、鉄筋量が不足していたり、中には新聞紙や空き缶が詰まっているよう手抜きや突貫的なものもあり、法規制が緩かった分その出来にかなりムラがあることがわかります。

またコンクリートブロックの耐用年数は、設置環境や手入れ状況によっても異なりますが、おおよそ30年程度と言われています。
経年劣化や地震、樹木の圧力などでひび割れが生じると、塀の内部に水が入り鉄筋が腐食し(錆び)ます。腐食が進むとコンクリートの爆裂や鉄筋の断面欠損を招き、塀の強度が低下します。

そのような古い既存不適格の塀を有した家があったとしましょう。
古い既存不適格の塀は、そのまま使われているケースも少なくありません。 しかし、もしその塀が倒れて他者に危害を及ぼした場合、所有者・管理者へ責任を問われる可能性があるので、軽視せず充分な注意と是正が必要です。

③安全基準を満たしていない塀

もうひとつ注意したいのが、建築時から法令上必要な基準を満たしていない塀です。
 法改正により「既存不適格」となったものとは異なり、そもそも法を守っていない「違法」なものも多く存在します。

これは、建築確認申請の対象になっていない後付けの外構工事やリフォーム・DIYなどで、必要な知識がないまま設計・施工してしまい、結果、基準を満たさない塀ができてしまうことを意味します。 意図の有無にかかわらず、法基準を満たしていなければ、どちらも安全上問題のある違法建築物となります。

ブロック塀で起こった事故と、その対策

このような危険と判断された「ブロック塀等」の中でも、大きく問題となった事故がありました。
それが2018年の大阪北部地震の際に起きた、小学4年生の女児が犠牲となった小学校のブロック塀倒壊事故です。

事故後の調査では、ブロック塀と擁壁をつなぐ接合筋の定着不足や著しい腐食など、内部構造上の不良が倒壊の主な原因と推定されました。また、塀の高さや控壁など法令への適合性、安全点検や施設管理のあり方についても問題が指摘され、その後の全国的な安全対策強化につながりました。

この事故発生後、国土交通省は学校施設や通学路などのブロック塀について安全点検を促し、「ブロック塀等の点検のチェックポイント」を公表しました。

現行の建築基準法を基にした、ブロック塀等の点検のチェックポイント(国土交通省)

その後、一定の条件を満たすブロック塀を対象とした耐震診断や改修の仕組みも整備され、自治体による撤去・改修の補助制度も各地に広がっています。 
ブロック塀等の安全対策について

このような国から発せられた行動指針により、この8年間でかなりの数の危険なブロック塀等が安全になってきたと考えられます。

私も多くのお客様宅のブロック塀の診断や改善を手がけてきました。
・高すぎるものは低くする
・強風の影響をうけないフェンスにする
・基礎から脆弱なものはやりかえる
など、全く倒れないようにするだけでなく、有事の際に「逃げる猶予を持たせるくらいには耐えられるようにする」を目標に改善を行います。補助金の対象にならないものは補強も含めての検討・施工を行いました。

「街を安全にしたい」「自分の家の施設で人様を傷つけたくない」という皆さんの善意によってブロック塀等の改善がなされていると感じています。

横浜市ブロック塀改善事業(補助金)を利用した改善事例(芦川担当)※耐用年数を大きく越し鉄筋量不足

一方、危険性を感じても改善に踏み切れない方も少なくありません。高齢化、空き家、費用、住まいへの思いなど事情はさまざまです。そんな中「近所の子どもたちの安全のために」と相談してくださる方や、離れて暮らすご家族から実家の塀について相談をいただくこともあります。

家の外まわり・家本体に関わる建築・住宅業界全体で、街の安全に対するアンテナ感度を高め、信念と対策をもって周囲に訴えていく必要性を強く感じています。

「道路啓開」という考え方と、能登の今

ブロック塀の安全対策には、倒壊による直接的な被害を防ぐだけでなく、もうひとつ重要な意味があります。それが「道路啓開」です。

道路啓開とは、大規模災害の発生時に、道路上の土砂やがれきなどを取り除き、緊急車両や救援物資の通行ルートを確保することです。緊急輸送道路の決定だけでなく、緊急復旧に必要な人員・資機材の確保、情報共有、関係機関の役割分担などをあらかじめ定めることが大変重要となります。

東日本大震災や令和6年(2024年)の能登半島地震などを通じて、その重要性が改めて認識され、2025年の道路法等の改正では「道路啓開計画」が法定化されました。道路啓開計画 – 国土交通省

実は今年の7月に、私たち日本庭女子会〜にわとわに〜の定期総会が、能登町やなぎだ植物公園にて行われました。北陸支部の皆さんがイングリッシュガーデン作庭に関わっていたり、能登地震の際は義援金を募って施設の復旧に当てていただいたり、ご縁があっての現地開催となりました。

観光施設も徐々に戻りつつあるその中で、復興状況の視察として要所をマイクロバスで周っていただきました。主要幹線道路はかなり復旧していましたが、一部では片側交互通行や斜面の復旧工事が続き、生活道路には迂回が必要な場所も残っていました。

現地の方からは「これでもかなりよくなった、直後から比べたら普通に走れるだけで有難い」というお話もうかがいました。多くの重機や人員が投入されても復旧に時間を要する状況から、地震被害の大きさや山間部での工事の難しさを実感しました。同時に「道路が通じない」ことによる被災生活の困難をうかがい、「道路啓開」の重要さをリアルに感じ取ることができました。

修復の完了した道、未着手の崩落した道、片側交互通行信号。やはり斜面に面した道路の被害が目立つ

一方街中では、公費解体が進み、更地が目立ちました。崩れたブロック塀の多くは撤去されていましたが、一部には 基礎から隆起したもの、上部が全て落ちたもの、全く影響を感じられないものと、地域や方角によって被害状況はさまざまでした。

輪島朝市に残った傾いたブロック塀、笠木のほぼ落ちたブロック塀、影響の感じられないブロック塀

危険なブロック塀への対策は、防災・備災への重要な1歩

能登地震のような、地面が隆起するような地震でブロック塀の安全を問うても意味がない、と圧倒された視察でしたが、一方それでもやはりその安全を訴えずにはいられないと感じています。

想像してみてください。大地震でブロック塀が道路をふさげば、撤去に時間がかかり、救助や復旧、物資輸送が遅れる可能性があります。危険な塀は、人に直接被害を与えるだけでなく、「間接的に人命に危害を及ぼす」という恐れもあるのです。

そういった理由からも、まず新たに建築するブロック塀は現行法規を守り、現場状況に適した安全なものとすること。そして、自宅や管理する建物に「倒壊の可能性のある危険なブロック塀等」があれば、きちんと対策をしておくことも非常に大切な災害への備えとなるのです。
ぜひ、貴方の身近に心配な塀があったなら、専門家に診断や改善の相談をしてみてください。

筆者紹介

連載『家づくりは“外まわり”で決まる ― 外構から考える住まいづくり』

外構の大切さを理解し、心から安心できる住まいを築いてほしい——そんな思いから始まった「日本庭女子会〜にわとわに〜」のコラム。新築計画に役立つ外構の知識やアイデアを、月1回更新でお届けします。

プロフィール

日本庭女子会〜にわとわに〜

エクステリア・ガーデン業界やそれをとりまく業種に従事する・携わる女性たちが、交流や情報交換を目的とし2017年に活動開始。

「庭や外部空間を美しく快適にすることが、住まいや暮らしを豊かに送るのに不可欠なことであり、ひいては日本の街並や景観・環境を美しく創り保ってゆくのに重要な役割を担っている」
また「住まい手だけでなく造り手・働き手の身になって考え、幅広い知識で美しく機能的な空間を造っているプロフェッショナルな女性たちがいることを知ってほしい」

そんな熱き想いを持った庭女子たちが、所属や経験・年齢を超え様々な切り口の委員会を組織し、日本各地で活動・躍動中。現在メンバー150人超。

https://niwatowani.jp/

執筆者

芦川 美香 (あしかわ みか)

横浜市を拠点とするこの道25年超のエクステリア・ガーデンデザイナー。
株式会社アフロとモヒカン代表取締役。

「はじめのいっぽからさいごのちゃくちまで」を社のモットーに、日々お客様宅の外まわりをお客様らしく、美しく暮らしやすく整えるべく、設計・営業・現場に奔走中。

にわとわにプロフェッショナル会員、「美未備びびびっと安心安全委員会」所属、1級エクステリアプランナー、ブロック塀診断士、E&Gアカデミー講師

https://niwatowani.jp/?itemid=120&catid=12

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