第三章【ペットと暮らす間取り】人と猫の動線・居場所を考えた間取りのポイント 一級建築士と学ぶ!「提案力が上がる」住宅設計術
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連載『「提案力が上がる」住宅設計術』の第三章のテーマは「ペット」です。ペットは、一緒に暮らす人にとって大切な家族の一員です。一方で、人間とは異なる環境を好むこともあり、習性も異なるため、それぞれのペットの特性を把握したうえで住環境を整える必要があります。
今回は、人気が高いペットのひとつ「猫」を取り上げます。猫と、一緒に暮らす人の双方が、快適に過ごせる住まいづくりを提案するために、知っておきたい情報や配慮したいポイントをまとめました。実際に間取り案を交えて解説していますので、ぜひご一読ください。
1.押さえておきたい猫の特性5選
①高いところに登る
猫の習性のひとつに、高いところにのぼることが挙げられます。周囲を見渡せる高い場所は、猫にとって安心できる居場所でもあります。冷蔵庫や高い棚、キャットタワーなどにのぼり、そのまま休息することも。また、上下運動は、猫にとって大切な遊びのひとつであり、心身の健康維持にもつながります。
猫によってのぼれる高さは異なりますが、一般的に1m前後の高さであれば、ひと跳びでのぼることが可能です。高い場所を設ける際には、猫が安全にのぼれるかどうかだけでなく、無理なく降りられるかどうかも確認するとよいでしょう。
②狭いところに入るのが好き
猫は、身を隠せるような狭い場所を好みます。警戒心が強く、たとえ生まれてからずっと家の中で暮らしていたとしても、本能的に外敵から身を守れる場所に安心感を覚えます。穴のようにすっぽりと入れる場所や、椅子やベッドなど家具の下、家具と家具の間など、体が入りそうな場所を見つけると、入り込もうとします。例えば、段ボール箱や紙袋を置いておくと、吸い込まれるように入るのもこうした習性によるものです。
収納の扉が開いたままになっていると、隙を見て入り込むこともあります。猫に入ってほしくない場所には、自由に出入りできないような工夫が必要です。
③家の中(縄張り)をパトロールする
猫は縄張り意識が強く、気に入ったものや場所に体をこすりつけ、自分のにおいを残すことがあります。また、環境の変化に敏感で、定期的に家の中を見て回り、周囲の様子を確認します。
そのため、まずは住まい手に猫が活動してもよいエリアを確認し、その範囲内で猫が安心して家の中を歩き回り、パトロールできるような環境を整えるようにしましょう。通路の確保や猫が無理なく移動できる住まいを提案するとよいでしょう。
④体温調整が苦手
猫は汗をほとんどかかず、犬のようにパンティング(口を開けて浅く速い呼吸をすること)によって体温調節することも得意ではありません。一般的に、猫が過ごしやすい適温は21〜28度と言われています。
夏の環境づくり
・猫が涼める場所を確保する
・エアコンなどの空調設備を活用する
冬の環境づくり
・暖かい毛布やベッドを用意する
・エアコンなどで室温を調整する
・日向ぼっこのできる場所を作る
また、湿度の管理も重要です。猫にとって適切な湿度は40〜60%程度といわれています。室内が乾燥しすぎると鼻の粘膜などへの影響が懸念されるほか、湿度が高すぎるとカビやダニが繁殖しやすくなります。加湿器や換気設備などを活用し、適切な湿度を保てるようにしましょう。
⑤猫に「ダメ」というしつけは難しい
猫と犬ではしつけの考え方や方法が異なります。猫に対して「ダメ」と伝えるだけでは意図が伝わりにくく、猫のストレスにつながったり、飼い主との信頼関係に影響したりすることがあります。
猫に触れてほしくないものがある場合は、猫の手が届かない場所に置く、入ってほしくない場所には入れないように工夫するなど、人間側で対策を講じることが大切です。猫の習性を理解したうえで、行動を制限するのではなく、自然と安全に過ごせる環境を整えることを意識しましょう。
| 猫の特性 | 住まいづくりで配慮すること |
|---|---|
| 高いところに登る | 上下運動でき、安全に上り下りできる場所を設ける |
| 狭いところを好む | 隠れ場所を用意し、入ってほしくない収納には対策する |
| 縄張りをパトロールする | 活動できる範囲を確認し、移動しやすい通路を確保する |
| 体温調整が苦手 | 空調や湿度を管理し、暖かい場所・涼しい場所を用意する |
| 「ダメ」と伝えるだけでは難しい | 危険なものに触れたり、危険な場所へ入ったりしにくい環境をつくる |
2.猫と暮らす間取りで大切にしたい7つのポイント
①外を眺められる場所をつくる
一日中家の中で過ごす猫が退屈しないように、窓から外の景色を眺められる場所をつくりましょう。猫は、窓の外を通る車や人を眺めたり、鳥の動きを目で追ったりすることを好みます。また、外の様子を把握できることは、猫の安心感にもつながります。
- 窓のそばに棚・ステップ・キャットタワーなどを設ける
- 空と地上の両方を眺められる高さを検討する
- 年齢・健康状態・運動能力に合わせて高さを調整する
- ステップの段差と幅は、それぞれ20〜30cm程度を目安に、無理なく移動できるか確認する
- 窓辺のカウンターも、同じ観点で高さや使いやすさを検討する
②性質の異なる居場所をつくる
猫は、自分にとって心地よい環境を選んで休むため、室内の環境を一様にせず、さまざまな居場所を設けることを心がけましょう。
| 居場所の性質 | 計画する場所の例 |
|---|---|
| 暖かく過ごせる | 日向ぼっこができる場所 |
| 涼しく過ごせる | 猫が涼める場所 |
| 床の感触が異なる | 絨毯敷きの場所、フローリングの場所 |
③運動できるスペースを確保する
猫と犬の違いの一つとして、一般的に猫は散歩を必要としないことが挙げられます。代わりに、家の中を駆け回ったり、高いところに登ったりして、体を動かすことを好みます。猫には狩りの習性があるため、飼い主と猫じゃらしで遊ぶ際にも、一度遠くに身を潜めてから勢いよく走り出したり、飛びついたりすることもあります。
- 走る・登る・飛びつく動きを想定し、家具の配置を考える
- 活動する場所に倒れやすい花瓶や壊れやすいものを置かない
- 滑りにくく、クッション性のあるペット専用の床材などを検討する
猫が安全に遊べるだけでなく、飼い主もストレスなく過ごせるように、家具やインテリアの配置を工夫することが大切です。
④隠れることのできる場所を作る
猫は狩りの習性を持つ一方、大きな動物などから身を守るため、身を潜められる場所も好みます。段ボール箱や紙袋があると、吸い込まれるように中へ入ることもあります。
そのため、段ボールのように体がすっぽり収まる箱型のスペースや、壁に囲まれた落ち着ける場所などを用意するとよいでしょう。
⑤ごはん・水飲み場所、トイレの場所を考える
猫はきれい好きな動物と言われているため、ごはんを食べたり水を飲んだりする場所は、トイレからある程度離して配置するようにしましょう。またそれぞれの場所を1カ所だけでなく、複数配置するとよいと言われています。
| 場所 | 配置・計画のポイント |
|---|---|
| ごはん・水飲み場 | トイレから離して配置。水飲み場は複数設けることも検討する |
| トイレ | 人の出入りが多い場所を避け、落ち着ける場所へ。 「猫の頭数+1」を基本とする考え方がある。 |
| 将来の配置変更 | 必要な数・サイズ・設置場所を施主に確認し、暮らし始めてから変更する可能性も考慮する |
トイレを置く際は、本体のサイズに加えて、お手入れに必要なスペースも確保しましょう。
- シートや砂を交換する作業スペース
- 掃除の際にトイレ本体を動かせる余白
- ゴミ箱や掃除道具を置くスペース
におい対策として、近くに換気扇を設けることも検討します。
⑥猫用品を収納するスペースを作る
猫と暮らす住まいでは、さまざまな猫用品が必要になります。こうした用品やストックを収納できるよう、専用の収納スペースを設けると便利です。住まい手に、どのくらいの量があるのかを確認し、十分な収納量を確保しましょう。整理整頓の負担を軽減し、飼い主のストレスを減らす提案を行います。
| 用途 | 収納する用品の例 |
|---|---|
| 食事 | エサ、おやつ、ストック |
| トイレ・掃除 | トイレ用品、掃除用品、タオル |
| 遊び・休息 | 遊び道具、季節に応じたベッド |
| 移動 | キャリーケース |
⑦調理中はキッチンに入れないように対策を
猫は好奇心旺盛で、ジャンプ力もあるため、キッチンの作業台などにも簡単に飛び乗ることがあります。調理中の危険を想定し、必要に応じて立ち入りを防げる計画にしましょう。
注意したい危険
- 火や熱い調理器具によるやけど
- 炊飯器・ポットの蒸気
- 刃物によるけが
- 食品への接触など衛生面の問題
検討する対策
- キッチンに扉や柵を設ける
- 調理中は別の部屋で過ごせるようにする
3.猫の住まいの提案で注意すること
①爪研ぎ対策を行う
爪研ぎは、爪のお手入れだけでなく、気持ちを落ち着かせたり、ストレスを発散したりするために行う、猫にとって自然な行動です。爪研ぎ専用の場所を用意しても、好みの素材でなかったり、落ち着いて爪を研げる場所でなかったりすると、思うように使ってくれない可能性があります。壁や家具で爪研ぎをしてしまい、壁紙が破れたり、家具に傷がついたりすることも少なくありません。
- 爪研ぎをしそうな壁や家具に保護シートを貼る
- 傷がつきにくい素材や、補修しやすい素材を採用する
- 持ち運べる爪研ぎを活用し、好みの場所と素材を探る
②脱走を防止する対策を行う
室内で暮らす猫が屋外に出てしまうと、交通事故にあったり、ほかの動物に襲われたりする危険があります。玄関からの脱走を防ぐためには、玄関と居室の間に脱走防止用の扉を設けると安心です。
- 扉・柵の高さが猫の運動能力に合っているか
- 格子の隙間から通り抜けられないか
- 格子がよじ登るための足場にならないか
- 周囲の棚やカーテンが、乗り越える足場にならないか
猫のジャンプ力は、一般的に1.3m〜1.5mあると言われていますので、それ以上の高さにするとよいでしょう。猫の運動能力には個体差がありますが、柵や扉を設置する場合には、高さだけでなくよじ登りにくい構造になっているかも確認しましょう。
扉の両脇に棚やカーテンなど、よじ登れるようなものがあると、乗り越えられてしまう可能性があります。また、猫は狭い隙間を通り抜けることもあるため、柵の間隔にも十分配慮が必要です。
③猫にとって危険な食べ物や植物に注意する
人間が日常的に口にする食べものや、花・植物の中には、猫が口にすると健康を害するものがあります。猫が誤って食べたり、かじったりしないよう、収納方法も含めて安全な環境を整えることが大切です。
- 猫に有害な植物を室内に置かない
- 食べ物を出しっぱなしにしない
- 食品は扉付きの収納などに保管する
- 「高い場所に置く」だけに頼らず、触れられない保管方法を考える
④コンセントや配線の位置に注意する
猫は、コードやひも状のものに興味を示すことがあります。かじったり引っ張ったりすると感電の恐れがあります。また、コンセント部分に猫の毛や尿がかかることによって、トラッキング火災となる心配もあります。
- できるだけコードが表に出ない配線計画にする
- 猫が過ごす部屋では、コンセントカバーの設置を検討する
⑤地震に備える
地震が発生した際、家具の転倒や収納物の落下によって、猫がけがをするおそれがあります。家具だけでなく、猫用の設備も確認しましょう。
| 対象 | 検討する対策 |
|---|---|
| 家具・収納 | 転倒防止対策を施す。造り付け収納の採用も検討する |
| 収納扉 | 揺れを感知して扉が開くのを防ぐ機能を備えたものを検討する |
| キャットタワーなど | 転倒や揺れを防ぐ固定方法を検討する |
4.間取りの例を3Dで解説
ここまで、猫と暮らす間取りのポイントについて解説してきました。
ここからは、実際に一級建築士が計画した家族3人と猫が暮らす平屋建て住宅を3Dで見ながら、「なぜこの配置にしたのか」「どのような暮らしを想定したのか」を詳しく見ていきましょう。
一級建築士が計画した家族3人と猫が暮らす平屋プラン
ペットを室内で飼う方が増えています。
今回は、夫婦と子ども1人、猫が2匹一緒に暮らす、平屋建て住宅として計画しました。
猫もペットとして人気なので、とても興味深いです。設計のポイントはどこですか。
基本的には家の中を自由に動き回る想定で作成しました。一方で猫専用の部屋を設けて、猫だけで留守番をする際などは、猫部屋で過ごします。家族がいない時間も、猫が安全で快適に過ごすことができるように計画しました。
猫部屋の広さは、頭数や猫部屋で過ごす時間の長さにもよりますが、4畳以上とし、7〜8畳程度が理想的です。
猫部屋を玄関の近くにしたのはどうしてですか。
玄関のある東側が道路に面しており、猫が行き交う人や車の様子など、外の様子を眺めることができるからです。南側にも窓を設け、日向ぼっこができるようにしました。
猫部屋の南側や東側に、鳥が好むような樹を植えるなど植栽計画で工夫するとさらによいでしょう。猫部屋から直接玄関側に出られないようにし、さらに脱走防止用のゲートを廊下に設置します。
うっかり脱走してしまうなどの心配も軽減できそうですね。
キッチンとダイニングの間には引き戸を設置しました。キッチンに猫が入ってきてほしくない時には、扉を閉めておけば誤飲などの事故を防ぐことができるため安心です。
クローゼットや物入れについても、全て扉付きにしているのですね。猫が誤って入り込んでしまう心配もなさそうです。
そうですね。扉付きにすることで、収納しているものが中で崩れてしまうなどの懸念も解消できます。
猫部屋にも物入れがありますね。猫用品専用の収納でしょうか。
そうですね。1畳と少し広めにとっていますが、収納を少し浮かせることで、収納下にトイレを設置したり、療養時の隔離用にケージを設置したりする場所として活用できます。
また、猫部屋の北側(廊下の上)にはロフトを計画しました。
気分を変えて高い場所でゆっくり休むこともできます。
猫の特性を考慮した上で計画された間取りなのですね。
配置の工夫と目的のまとめ
| 計画の工夫 | 目的 | |
|---|---|---|
| 猫専用の部屋 | 留守番時に過ごせる部屋を設ける | 家族の不在時も安全で快適に過ごす |
| 猫部屋の窓 | 道路に面する東側と南側に設ける | 外を眺める、日向ぼっこをする |
| 玄関まわり | 猫部屋から玄関へ直接出られない配置にし、廊下にゲートを設ける | 脱走を防ぐ |
| キッチン | ダイニングとの間に引き戸を設ける | 必要に応じて猫の立ち入りを防ぐ |
| クローゼット・物入れ | 扉付きにする | 猫の入り込みを防ぐ |
| 猫部屋の収納下 | 収納を浮かせて空間を確保する | トイレや療養時のケージの設置に活用する |
| 猫部屋の北側 | ロフトを設ける | 高い場所で休めるようにする |
ペットはそれぞれ動物によって特性が異なるだけでなく、人間に一人ひとり個性があるように、猫にも個体差があります。猫だからこのようにしたらよいだろうと決めつけるのではなく、住まい手に十分聞き取りをすることが重要です。
なるほど、どんな場合においてもヒアリングはとても大切ですね!今回もありがとうございました。
執筆者
一級建築士・住宅収納スペシャリスト
意匠設計事務所で、新築からリノベーションまで住宅を主軸として、図面作成から施主や現場での打ち合わせ、現場監理まで携わる。
10年以上の実務経験をもとに、現場で役立つ設計・図面作成の考え方を監修。
本連載では、住宅のプランニングで押さえておきたいポイントや設計のコツを解説している。







