第五章【家具詳細図】一級建築士から学ぶ現場に伝わる図面をはやく描くコツ
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家具詳細図は、造り付け家具やオーダーメイドの家具を制作するための図面です。使い勝手を追求した収納やオーダーキッチンなど、細部にこだわった家具を制作するためには、寸法から材質、仕上げ方など、細かな情報を記載する必要があります。
本記事では、一級建築士の視点から、現場で必要な情報の描き漏れを防ぎながら手際よく描くための基本的な考え方と書き方のコツを解説します。
家具詳細図とは?
家具詳細図とは、造り付け家具やオーダーメイドの家具を制作するための図面をいいます。例えば造り付け家具には、キッチンや洗面脱衣室、玄関などの収納や、オーダーキッチン、洗面台などがあります。居室の収納や勉強机などを部屋のサイズや使い勝手に合わせて制作する場合もあります。
家具詳細図には、家具の形状や寸法、材質、仕上げ方法、取手などの金具や固定方法に至るまで、詳細な情報を記します。特に造り付け家具では、部屋のどの位置に設置するのか、明確に分かるように寸法を記し、家具と接する床・壁・天井面との関係も明記します。
家具詳細図は、家具の平面図、立面図、断面図で表し、一般的に30分の1、20分の1の縮尺で作成します。必要に応じて5分の1の詳細図を加え、細部までデザインを表現しておくことで、現場での認識のズレを防ぎ、正確な家具の制作が可能になります。
家具詳細図の修正を減らすために
①詳細図を描き始める前に十分な打ち合わせを行う
家具詳細図を描き出す前に、どのような家具を作りたいか、また使用したい素材は何かについて、施主と十分に打ち合わせをしておく必要があります。家具はインテリア同様、好みが反映されやすい部分であるため、どのような雰囲気を求めているのか、事例写真やイメージ写真、3Dパースなどを用いて確認するとよいでしょう。
施主が、特にどの部分にこだわりたいのかを把握することが大切です。家具制作を希望するのは、既製品では満足できない理由があると考えられるからです。あるいは、設計士が制作家具が必要だと感じた場合や、よりこだわった提案をしたいと考えた場合に、制作家具を提案するケースもあります。
②導線や使用用途を把握して作図する
家具をどこに設置し、どのように使用するのかを施主と十分に確認してから作図を始めます。使用者が誰なのかを把握することで、使いやすい高さや仕様をあらかじめデザインに盛り込むことができ、後の修正を減らすことにつながります。
また、家具を設置することで導線を妨げないかもチェックしましょう。
収納家具の場合は、何を収納するのか具体的に確認し、可能であれば収納物のサイズも把握しておきます。将来的に収納物のサイズ変動が想定される場合は、余裕を持った寸法で検討すると安心です。図面だけでなく口頭でも説明を加え、施主との認識を十分に共有しましょう。
③平面図・展開図を先に確定させる
修正が増える大きな要因のひとつが、平面図や展開図の確認が不十分なまま詳細図を作成してしまうことです。平面図や展開図に変更が生じるたびに、家具詳細図も再検討が必要となり、作業効率が大きく低下します。そのため、家具詳細図は見積もり依頼前までに準備することを目安にし、まずは平面図や展開図など基本図面を十分に固めるようにしましょう。
平面図の基本については、第一章で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
④使用する素材を事前に決定しておく
理想の家具を制作するには、イメージを叶えるために希望する素材が実際に入手可能かどうかを確認しておく必要があります。イメージに合う素材であっても、必要なサイズが存在しなかったり、廃盤になっていたりする場合があります。図面完成後に素材の再検討が必要になると、大幅な設計変更につながる可能性もあるため、実現の可能性を十分に確認したうえで作図を開始することが望ましいでしょう。
誰に制作を頼むか検討する
家具工事は、家具職人が担当する場合のほか、大工のみで行う場合、あるいは家具職人と大工が分担して行う場合があります。さらに、キッチンや洗面台などでは、電気工事や設備工事、タイル工事、左官工事など、複数の工事が関わることもあります。
家具職人と大工では、それぞれ得意・不得意とする制作方法が異なり、作業手順にも違いがあります。
| 施工担当 | 制作方法 |
|---|---|
| 大工 | 現場で作業を行うことが多いため、大工道具で対応可能な範囲で制作することが一般的です。 例えば、扉のないオープンな棚収納であれば、大工工事でも十分対応可能でしょう。また、設置場所の下地の準備も大工自身が行うため、一貫して任せやすいのも利点と言えます。 |
| 家具職人 | 各自の作業場で制作するため、専用の加工機械などが整っていることが多く、より精密な作業を依頼するのに適しています。 例えば、扉つき収納や引き出し収納など、より精度が必要となる家具は、家具職人に依頼するケースが多いでしょう。ただし、その分制作費用が高くなる場合があるので、予算との調整も必要となります。 また、家具職人による制作では、作業場であらかじめ組み立てた家具を箱の状態で現場に搬入することが多いため、搬入経路やスケジュールについて事前に打ち合わせておきましょう。 |
このように、どの職人に依頼するかを判断するには、どのような家具を制作したいのかを具体的にイメージすることが重要です。そのうえで、施工手順や段取りを十分に検討します。職人によっても得意とする造作は異なるため、判断に迷う場合は、施工業者や職人と相談しながら、最適な方法を見極めるとよいでしょう。
家具詳細図の描き方
①家具の平面図、立面図を紙面上にレイアウトする
家具詳細図では、家具の平面図・立面図・断面図といった複数の異なる図面を組み合わせて表現します。
これらの図面配置は、図面全体の見やすさを大きく左右します。
例えば、家具の平面図を基準として上部に配置し、その真下に正面図、さらにその横に側面図や断面図を並列させることで、読み取りやすい図面になります。断面図は、必要に応じて複数用意します。縮尺を30分の1または20分の1のどちらにするかは、紙面内に無理なく収まり、かつ見やすい方を選ぶことが重要となります。
②材料の発注ができるように明記する
家具詳細図には、担当する職人や現場監督が制作に必要な材料を発注できるように明記しておく必要があります。例えば、引き出し付き家具である場合には、引き出しを構成する板材の厚み、引き出しの奥行きや高さ、内側の仕上げ素材、色などの情報が必要です。スライドレールや取手など、金具の種類やサイズ、素材なども記載します。
こうした情報が不足していると、制作時の確認作業が増え、工程の遅れやミスにつながる可能性があります。
③設備機器について確認する
設備機器を家具に埋め込むなど家具と設備機器が関連する場合には、図面作成前に必ず、設備機器メーカーの取り扱い説明書や施工手順書を確認し、設計者が設備条件や寸法、使用上の注意点を把握することが重要です。施主が希望する設備でも、サイズや設置条件によって設置できない場合があるからです。取り付け可能であることを事前に確認したうえで、図面には設備機器の品番を明記しましょう。
また、施工担当者が納まりを確認しやすいよう、可能な限りメーカー図面を収集し、家具詳細図に反映させるとより親切です。さらに、取り付け位置や下地材の仕様を図面に表記しておきます。コンセントや給排水がある場合には、家具設置前に配線工事が必要になりますので、必要な位置を記しておきましょう。設備機器が曖昧な状態で作図を始めると、修正や再検討が増え非効率になるため、事前確認を徹底しましょう。
描き終わったらチェックしよう
図面完成後は、担当する職人がその図面を見て、制作に着手できるかどうか自分が職人になったつもりで確認しましょう。寸法や仕様に曖昧な情報がある場合には検討し、情報を加筆します。家具の組みたて方法にも問題がないかを確認し、面取り方法や塗装の種類、仕上げ方法も具体的に示しましょう。また、施工担当者と打ち合わせで確認したい箇所がある場合には、雲マークなどを付け、確認漏れを防ぎましょう。
家具詳細図は、単なるデザイン図ではなく、施工者が正確に制作するために必要な実施図面です。細部まで丁寧に情報を整理し、誰が見ても理解しやすい図面を目指すことが重要です
執筆者
一級建築士・住宅収納スペシャリスト
意匠設計事務所で、新築からリノベーションまで住宅を主軸として、図面作成から施主や現場での打ち合わせ、現場監理まで携わる。
10年以上の実務経験をもとに、現場で役立つ設計・図面作成の考え方を監修。
本連載では、図面を効率よく、正確に描くための基本的な視点を整理している。







