作業療法士ICが伝える部屋別チェックポイント 55歳からのインテリアの作り方【トイレ】

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転倒が多い「トイレ」 ~大切な4つのポイント

今回のテーマはトイレ。一日に何度も利用する大切なスペースです。
トイレは、手すり、便器の向き、ドア、そして広さも大切なポイントです。

トイレの手すり

まずはとても重要な手すりの話からはじめましょう。

トイレでの転倒は本当に多いです。なぜかというと、立ち上がってズボンを上げ下ろしするという重心の崩れがちな作業をする場所だからです。
そのため、ヨロっときたらサッとつかめる手すりは必須です。

トイレの手すりはL型が便利というのは聞いたことある方も多いかもしれません。
トイレの手すりはヨロっと来た時のバランス保持のためと、立ち上がりのときの「ヨッコイショ」のために必要です。
立ち上がりの時につかむ手すりの位置が実はとても重要で、間違った場所につけてしまうと逆に立ち上がりにくいという最悪の事態に陥ります。

では、こちらのイラストで①と②では手すりの位置が異なります。さてどちらが立ち上がりやすいでしょうか。

立ち上がりやすい手すりの位置は②のイラストが正解です。

人は、イスに座っている状態から立ち上がるには、まず、前方に体重移動が必要です。
そこで改めてイラストを見てみると、①の手すりは前方への体重移動を妨げてしまう位置にあると言えます。
ですが、紙巻き器やウォシュレットのスイッチなどの影響で、①のような位置に手すりがつけられているトイレが本当にたくさん見受けられます。

では、どの位置に手すりをつけるのが良いのでしょうか。
トイレのL字手すりの正しい位置は、便座に深く腰かけた状態でそのまま「前へ倣え」をして指先に触れるくらいの位置。ぜひ覚えておいてください。

こちらは、60歳代のご夫婦のお宅のリフォーム施工写真です。
いかにもなL字手すりではなく、
ヨロっと来た時のバランス保持の役目をする飾り棚と
立ち上がりのための縦手すりのプランにしました。
応用例としてご紹介させていただきました。

トイレの向き

次に便器の向きの話です。

トイレはドアを開けて入ったときに正面に便器がこちらを向いて設置してあるパターンと便器が横向きに設置してあるパターンと2通りが考えられます。
正面からアプローチするタイプは座る前に180度身体を方向転換しないといけないので体が不自由になってくるとなかなかの苦労が伴います。

(イメージパース)

トイレの横側から出入りする場合、体は90度の回転で済みます。元気な時にはなんてことない行動ですが、身体が不自由になったときには毎日のその動作をするストレスが大きく変わってきます。
もし、大きくリフォームされる場合はトイレの間取り、便座の向きも考慮に入れるのを忘れずに。

トイレのドア

次にトイレのドアについて。
  
トイレのドアは引き戸がいいというのは聞いたことがあるかもしれませんが、なぜだか考えたことがありますか?
車いす利用だと引き戸じゃないと、と思われるかもしれませんが歩行でアプローチするときにも前後に開きが大きい扉はバランスを崩しやすいので転倒の危険が高まります。
今から新築される場合には一日に何度も必ずドアを開けしめするトイレは引き戸にしておくのがベストです。
ただ、リフォームする場合にもどうしても引き戸にできない場合があると思います。その場合は、折り戸にするのもおすすめです。
元気なうちは気づかないのですが、いかにドアの軌跡を少なくするかは筋力が落ちたり、半身麻痺など運動機能が制限された場合にはとても重要です。

そして、半身麻痺の場合は右麻痺か左麻痺かによってドアの吊元を変更することも検討しないといけません。
その時に忘れがちなのは照明のスイッチの位置。一緒に変更するかセンサー式にするなどの工夫が必要です。

前後に開きが大きいドアはバランスを崩しやすい(イメージパース)

引き戸にできないときは折れ戸という方法も。(イメージパース)

トイレの広さ

最後にトイレの広さについて。

トイレをバリアフリーにリフォームするなら車いすでも入れる広さに、というアドバイスをみかけますが、正直な話、家の中で車いす生活になることはあまり一般的ではないかもしれません。

ですが、最初に書いたように、トイレでは両手で自分のズボンをずらして座る、または立ち上がってからもう一度かがんで両手でズボンを上げるという、手すりを持ったままでは絶対にできない作業を伴う場所です。つまり、他者の介助を必要とする場所になりうるということです。

もしも今から新築の間取りを考えたり、リフォームをしたりする場合は、車いすが入るまでの広さは難しくても介助のために少しでも広い空間を確保することは必須です。

もくじ

1.序章 ~家の中には危険がいっぱい
2.キケンエリア「階段」 ~絶対にころびたくない場所!階段のはなし
3.家の顔「玄関」 ~上がり框・アプローチ・手すりのはなし
4.転倒が多い「トイレ」 ~大切な4つのポイント
5.風呂 ~”おぼれる”を回避するには?
6.リビング ~ラグを敷く?敷かない?つまづきのはなし
7.ダイニング ~”つまる”と座位姿勢のはなし
8.寝室 ~カーペットのはなし

執筆者紹介

松本 理絵

作業療法士(国家資格)
インテリアコーディネーター/二級建築士
有限会社宮本家具工業所 副社長
Web
 公式:トータルインテリア専門店 ミヤカグ
    インスタグラム も更新中
広島県インテリアコーディネーター協会 副会長

広島大学医学部保健学科を卒業し、広島市内にて作業療法士として病院で高齢者のリハビリの仕事に従事。
その後、結婚を機に夫の家業である家具製造販売会社に入社。
入社後インテリアコーディネーター資格、二級建築士資格を取得し、現在では「広島一敷居の低いインテリアコーディネーター」をキャッチコピーに、お客様の生活空間を豊かにするためのインテリアを提供している。
「元医療職をいかして、目の前の困っている人のニーズをしっかり拾って寄り添ったリフォームやアイテム選定など心がけています。」

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