第三章【平面詳細図・矩計図】一級建築士から学ぶ現場に伝わる図面をはやく描くコツ

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平面詳細図・矩計図は、現場を進める上で最も重要な詳細図面です。第一章・二章では、基本図面における「現場に伝わる図面をはやく描くための考え方と描き方のコツ」を紹介しました。第三章からはいよいよ詳細図について説明していきます。

第三章では、平面詳細図・矩計図について取り上げ、現場に伝わる図面を描くときに抑えたいポイントをまとめました。

平面詳細図・矩計図とは?

図面の種類内容
平面詳細図平面図の尺度を上げ、壁の厚みや開口部の納まり、仕上げ材料など水平方向における断面詳細を描いた図面です。
矩計図
(かなばかりず)
断面詳細図とも呼ばれるように、断面図の尺度を上げ、垂直方向において、屋根から基礎まで建物のあらゆる断面の高さを詳細に記した図面です。
仕上げ材や断熱材、下地、構造材など建物の仕様が記されており、各部材の取り合いや納まりの基本を示します。

平面詳細図

平面詳細図は、平面図を100分の1で描いた場合には50分の1で描くことが多く、名前の通り、平面図よりも細かな情報を図面に記載します。例えば、室内建具やサッシであれば、開口寸法や、通り芯からの離れ寸法を記したり、造り付け家具や設備であれば、壁との位置関係や下地の様子を伝えたりします。

平面詳細図は、現場に設計士の意志を伝えるために必須の図面で、特に納まりの厳しい箇所については、検討した内容をしっかりと明記することで、施工時の迷いや心配ごとを減らせます。

矩計図

矩計図は、建物のサイズにもよりますが、50分の1、30分の1、20分の1で描くことが多い図面です。断面図が高さ関係の全体像を確認するために使われるのに対し、矩計図は建物の仕様や細かな納まりを確認するのに重要となります。基礎、床組み、壁、天井、屋根の構成、断熱の仕様や雨仕舞い、気密などについて、図と文字を使って説明するので、建物の品質にも関わる図面と言えます。例えば、基礎では、基礎の種類が分かるだけでなく、根入れや立ち上がり、配筋の仕方、捨てコンや砕石の厚みなども描き、基礎に関する基本情報を伝えます。

矩計図で表現しきれない場合には、縮尺を上げた詳細図を部分的に併記するなどして、施工時に困ることのないように作図しましょう。

平面詳細図・矩計図の描き方

①各断面構成を整理する

作図を開始する前に、平面詳細図では外壁や各部屋の壁の仕上げや下地材、柱の大きさや位置を整理します。準備をしてから取りかかることで、作図してからの修正を減らせます。同様に矩計図は、基礎や床組みの構成、天井材、屋根組みの構成を整理していきます。

CADで描き始めてから、仕様を変更したり間違いに気付いた場合には、修正に時間がかかるだけではなく、移動させる線の量も多いために、図面のミスにもつながりかねません。
事前にできる限りチェックすることで、修正を減らす工夫をしましょう。

②平面詳細図は、壁の構成と開口部の納まりを押さえる

平面詳細図の場合、平面図のトレースから始まります。隣地境界線と通り芯、構造材を描き写します。
※CADソフトによって手順は異なりますが、ここからは2DのCADでの描き方で説明しています。使用するCADに合わせて描きやすい手順で進めてみてください。

次に、整理した壁構成を元に外壁周りから壁を描いていきますが、その際にサッシなどの外部に面する開口部を入れ込んでいきます。サッシや建具枠の納まり方に間違いがあると手戻りが多くなってしまうので、描き始める前に整理しておきましょう。サッシのシリーズ名やサイズを十分確認し、平面図で位置を確認しながら順番に入れ込んでいきます。

サッシまで描き終わったら、室内の壁に移ります。室内の建具の納まりも、作図前に基本の納まり方を決定しておき、図面に入れていく方が手戻りが少ないでしょう。平面図と矛盾がないか確認したら、断熱材や間柱も壁内部に加えていきます。

家具・設備を配置し、床や高さ情報を記入しましょう

続いて、家具や設備を入れ込んだ後、床面を表現していきます。

段差がある箇所は段差があることが分かるように表記し、段差の前後に高さを記入します。天井高についても同様に入れ込んでいきます。また、点検口の位置も図面に描き入れ、構造材や設備などと位置が重なっていないか不都合がないことがチェックできるようにサイズも分かるように記載します。

造り付け家具と下地材の情報を整理しましょう

造り付け家具がある場合には、幅や奥行き、家具を取り付けるための下地材の有無が分かるように表現しておきましょう。家具の制作は、大工の場合と家具職人の場合がありますが、いずれも下地材の取り付けは大工が担当します。家具職人が制作する場合には、ある程度工事が進んだ段階で、現場での採寸や打ち合わせに来る場合が多いため、取り付けに必要な下地材の情報は、あらかじめ設計者が大工に伝える必要があります。

また、壁の仕上げ材が切り替わる箇所がある場合には、納め方まで分かるように表現しましょう。
突きつけなのか重ねて貼るのか、あるいは見切り材がいるのか分かるようにすることで、意匠的な見え方について設計側の意図を伝えていくことができます。平面詳細図だけで表現しきれない場合には、別途詳細図を準備しましょう。

③矩計図は、施工手順や仕様を意識して作図する

矩計図も同様に、断面図や立面図から、通り芯や高さなどの基準線を描き写します。
隣地境界線や道路境界線も確認し、納まりが厳しい場合には図面に記載して、詳細図においても問題がないかチェックしましょう。

その後、床の仕上げ面から逆算して土台天端や基礎天端を確認し、天端の基準線を高さ方向の基準線に追加していきます。高さの位置関係を確認できたら、実際の施工と同じように、基礎や土台といった地面から近い場所から作図していくと描きやすいでしょう。

施工者の視点で、施工情報が読み取れる図面にするために

特に矩計図を作図するときには、施工する職人の立場になって、どこを基準にどのような間隔で材料を配置していけばよいのか、どれくらいの量がいるのかなど、施工で必要な情報を読み取ることができるか意識しながら描いていくとよいでしょう。

このように常日頃意識して作図することで、現場ではどのような情報があれば施工しやすいのか、図面のどの部分で質問が出そうなのかも予想できるようになります。質問が出そうな箇所については、寸法や文字で明記することで、現場で迷いにくい図面へと近づけることができるでしょう。

雨仕舞い・通気・気密など施工順序が分かるように表現しましょう

また、雨仕舞いや通気、気密に関わる施工情報は、矩計図に表現します。
どのような材料を使い、どの順番でどのように施工していくかが分かるように作図と文字で伝えていきます。必要に応じて拡大図をつけることで、設計士の意図が伝わりやすい図面となります。

丁寧な納まり検討図があることで、下地材の寸法を確認、検討することができるため、現場での迷いを減らせます。特に、屋根は雨が降る前に防水シートまで納めたいため、できることであれば建て方の際に下地材も一気に張り上げたいところです。建て方当日は忙しなく現場が動いているため、屋根関連の打ち合わせはあらかじめ行っておくか、建て方中でもスムーズに進めることができるように、分かりやすい図面を準備しましょう。

境界条件と屋根納まりを確認しましょう

さらに、隣地境界線からの距離に余裕がない場合、屋根の仕上げ面が指定の寸法に納まるようにする必要があります。図面で納まりを十分に検討したことを示し、下地材の寸法を明記しておくとよいでしょう。

④文字表記を上手く使いこなす

図面には文字を書き込むことがありますが、床や天井レベル、下地材や仕上げ材の厚み、間隔のほかに、仕上げ材の施工方法についても必要に応じて記入します。

例えば、仕上げ材の貼り方、左官工事や塗装工事におけるコテ仕上げ、ローラー仕上げ、吹付などを記載することで、設計側の意匠的な思いを伝えられるだけでなく、現場での段取りもスムーズに進みます。見積もり時でも、必要な人工を検討しやすいため、重要な情報と言えるでしょう。

人工(にんく):
職人1人が1日作業が必要となる工事を1人工、2人が1日作業が必要となる工事を2人工と数えます。
人工=(職人の人数)×(作業日数)で計算し、1人が2日作業する場合は2人工となります。
施工費用は、材料のほかに人工費用も重要なポイントです。

平面詳細図・矩計図の修正を減らす描き方のコツ

基本図面でもお伝えしてきましたが、納まりの検討はいきなりCADを使って行うのではなく、手書きスケッチで行うことが重要となります。図面内での検討は、スケッチでは難しい場合に併用して使うくらいのつもりで行いましょう。人によっては、手書きスケッチを面倒に思う人もいるかもしれませんが、現場で打ち合わせをする際には、その場で手書きで描き説明する場面もあります。簡単なスケッチを常日頃描いていれば、そのような場面でも臆することなく説明できるはずです。
また、曖昧な状態のままCADで描き出し誤った寸法で作図してしまうと、修正に時間を取られるだけでなく、誤った状態で図面を提出してしまうことにもなりかねません。

柱や梁などの構造材は、建て方の前にプレカットで準備することが多く、仕上げが納まらないからといって、現場が始まってから構造材を変更することはかなり難しいと言えるでしょう。そのため、構造材のサイズをおおよそ検討しておき、仕上げまで納まるかどうかを平面詳細図や矩計図で確認することが大切です。

平面詳細図では、柱が必要とする位置に全て配置されており、間取りで邪魔になる位置にはないか確認しておきましょう。矩計図では、梁材を見せるのか隠すのか、天井裏に隠すのであれば、最大寸法の梁が隠れるだけの懐があるか確認します。その上で構造図を確定し、構造材の発注に進むようにしましょう。

基本図面と同様、通り芯など同じ種類のものはグループ化しておき、作図中に意図しない移動を防ぎます。また、製図ソフトの機能を活用して、壁、床、家具などによってレイヤーを使い分け、表示したままで移動を防ぐなど工夫をするとよいでしょう。

現場で伝わる詳細図にするための表現ルール

時には、図面だけでは十分に検討しきれない箇所も出てきます。現場で検討したい箇所、施工担当者に相談したい箇所は、雲マークや文字で記載するなどして、現場監督や職人にも相談事項が分かるようにします。
検討すべき箇所を施工と設計で共有しておくことで、最適な解決策が見つかることもあります。時には、設計士一人で全て決めるのではなく、分からないことは分からないと伝え、一緒に作り上げていくという気持ちも大切です。

仕上げ面や下地面、構造材などが一目で分かるように、線の太さを使い分け見やすくするとよいでしょう。一般的には、構造材を一番太い線で描き、次に仕上げ面、下地面の順に太さを細くしていきます。断面や床面などに入れる斜線表現は、一番細い線か灰色を使用するようにしましょう。

平面詳細図も矩計図も、詳細図面ではありますが、50分の1や20分の1では表現しきれていない場合も出てきます。そのような場合には、さらに詳細を伝えたい箇所を10分の1などに拡大した詳細図を用意しましょう。

描き終わったらチェックしよう

図面が描き終わったら、平面図や立面図、断面図などの基本図面はもちろん、構造図、仕上げ表などと食い違った表現や寸法がないか確認します。平面詳細図、矩計図で検討した結果、他の図面で修正する必要がある場合には、他の図面を修正していきます。最後に、修正漏れがないかも必ずチェックするようにしましょう。

他の図面と同様、最後は印刷して見やすい図面になっているかどうか確認します。いくら詳しく描いても、印刷時に線や文字が潰れて見えないようであれば、現場に伝わらない図面となってしまいます。前述した通り、施工時に見てもらいたい箇所は、縮尺を上げた拡大図を準備するようにしましょう。

執筆者

一級建築士・住宅収納スペシャリスト

意匠設計事務所で、新築からリノベーションまで住宅を主軸として、図面作成から施主や現場での打ち合わせ、現場監理まで携わる。
10年以上の実務経験をもとに、現場で役立つ設計・図面作成の考え方を監修。
本連載では、図面を効率よく、正確に描くための基本的な視点を整理している。

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