「暮らしに寄り添う照明を」インテリアコーディネーターに聞く、照明計画の考え方
- 取材

目次
ライフスタイルの多様化にともない、住まいに求められる役割も一層複雑になってきました。
食事をする、くつろぐ、趣味を楽しむ、作業に集中する——そんなさまざまな過ごし方が1つの空間のなかで共存するようになっています。
今回は、新築住宅の照明計画を担当された武藤氏(インテリアコーディネーター協会関西)に、暮らしにフィットする照明の考え方を伺いました。
実際の提案事例とともに、光がもたらす心地よさの工夫をご紹介します。
プロフィール

武藤紀久子氏
これまで300件以上の住宅コーディネートに携わり、知識と実績を積み、空間デザイン心理学®なども習得しました。
現在はデザインだけでなく「本当に望む暮らし」を実現するような、暮らしと心を整える空間づくりを行っています。
ICA関西(インテリアコーディネーター協会関西)所属
本企画は、メガソフトが実施した「インテリアアドバイス・プレゼントキャンペーン」によるものです。
当選された家づくり中の施主様に対し、プロのインテリアコーディネーターがアドバイスを提供しました。
■インテリアアドバイス・プレゼントキャンペーンとは
施主を対象に、プロからのインテリアアドバイスを抽選でプレゼントした企画。
計画中の間取図と施主の要望をもとに、インテリアコーディネーター協会関西所属のインテリアコーディネーター様に、プランをまとめた「プレゼンボード」を作成いただきました。
シーンに応じて「光の色」を使い分けるコツ
照明の色味は、空間の雰囲気や過ごし方に大きく影響します。
住宅に用いられる照明色は、主に以下の3種類です。
・電球色(2700K):温かみのあるオレンジ系。リラックスしたい空間に最適。
・温白色(3500K):自然な色味で、団らんの場に適しています。
・昼白色(5000K):明るくクリアな光。集中力を高めたい作業空間向き。
これらの色を「適時適照」──つまりシーンに応じて適切に照らすことで、空間の使い方が柔軟になります。
照明選びはデザインだけでなく、用途も大切なんですね。


そうですね。今回はすっきりした照明にしたかったので、まずは空間に合う明るさや灯数を確認し、そこにデザイン性を加えていくような流れで、照明計画を考えていきました。
例えば、リビングは落ち着いた電球色が基本ですが、施主様は読書が趣味と伺っていたので、光の色を切り替えられるダウンライトを採用しました。
くつろぐときは「電球色」のオレンジ色に。
読書のときは「温白色」の白色に調整できるようにしています。


暮らし方から照明を逆算するという発想
LDKでの過ごし方に寄り添った照明計画
施主様は、LDKでの読書・映画鑑賞・ゲーム・料理・お茶・食事など、多様な過ごし方を希望。
その暮らしに寄り添うよう、武藤氏のプランボードには光の工夫が随所に盛り込まれていました。
最初はどのような情報からプランを組み立てていったのでしょうか?


ヒアリングでいただいた情報は、床の色味や「カフェ風でかっこいい雰囲気が好み」といったイメージ写真、そしてLDKでの過ごし方についてでした。
読書や映画鑑賞、ゲームなど、LDKで何をしたいかのイメージを踏まえて、デザイン性のある照明を中心に考えていきました。
なるほど、過ごし方が明確だったんですね。


そうなんです。
そのうえで、間取り図をもとに部屋の広さを確認し、必要な明るさ(ワット数)を検討しました。
明るさを確保しつつ、さりげないデザインを好まれている印象があったので、バランスを見ながら進めていきました。
「読書・映画鑑賞・ゲーム・料理・お茶・食事」など、多目的に使われるLDKの照明には、調光や調色機能が欠かせません。最近では、色温度や明るさを調整できる照明器具を導入することで、1つの空間で複数の過ごし方に対応できるようになっています。
武藤氏も、ヒアリングを通じて施主様の暮らし方を深く理解したうえで、最適な照明プランを提案され、施主様にもご満足いただける結果となりました!
家具や床と“照明の色”の関係
素材と色に応じて照明器具のトーンも調整

今回の照明計画では、リビング照明をすっきりしたダウンライトで構成しつつ、一つだけペンダント照明でアクセントを加えるようにしました。
ゴテゴテしすぎず、でも空間の雰囲気を壊さない。形にこだわって選びました。

とても可愛らしいです!
私の家はダウンライトだけの構成なのですが、ちょっと味気なくて…。


それもすっきりしていて良いと思いますが、お客様によっては提案をプラスすることもあります。
一点だけデザイン性のある照明を入れるのもおすすめですよ。
それなら挑戦しやすいかも!


一つだけなら浮かないデザインにすれば空間にもなじみますし、照明の楽しさも感じられると思います。

なんだかワクワクしてきました!
アクセントとして選ぶ照明のデザインには、家具や床の色も関係してきますか?


そうですね、例えば明るい床で白っぽい家具が好みの方には、照明器具のカバーやコードも白に近い色を合わせたりします。
逆に、黒アイアンの家具脚などがある場合は、コードは黒でも統一感が出ます。
照明単体でなく、空間全体とのバランスが大切なんですね!

明るさの感覚と設計のギャップを埋めるには
照明の照度だけでなく“体感”を意識した提案
シーリングライトやダウンライトの灯数はどうやって決めているのでしょうか?


シーリングライトやシャンデリアなどの天井照明は、カタログに「8畳用」「10畳用」など目安が書かれているので、それを参考にします。
ダウンライトの場合は、部屋の広さに応じて必要な数を判断しています。
ただし、照度が足りていても、人によっては「暗い」と感じる場合があります。
特に年配の方だと、シーリングに慣れているので、ダウンライトだけでは暗く感じることもあります。
実際の感覚にも配慮して提案しているということですね。


はい。
暗いと感じる方には補助照明やスタンドライトもご案内しています。
照明は「その人にとって快適な明るさ」を目指すことが大切だと思っています。
うーむ、奥が深い!

間接照明と補助光の役割
今回、シアタールーム的な演出として、テレビ上のダウンライトを取り入れたんですね。


そうですね。
映画鑑賞をされるとのことでしたので、テレビ上に調光式のダウンライトを取り入れ、他の照明を消すことで薄暗くできるようにしました。
素敵です!


テレビ上のダウンライト以外の照明を消すことで、ムーディな空間に変化しています。

加えて、キッチンの天井部分にも間接照明を入れて空間に変化をつけました。
ムードがあってとってもお洒落な空間です!


あえて光を絞るのも、お洒落な空間を演出するコツ
演出性と安全性の両立を意識して
間接照明は、明るさの面で主照明としては不向きでしょうか?


間接照明は基本的に雰囲気重視なので、それ単体で部屋全体を照らすのは難しいです。装飾的な役割が強く、照明の補助的なものと考えています。
寝室などでは、間接照明だけだと少し心もとないかもしれませんね。


そうですね。最近は、寝室など間接照明だけにして雰囲気重視を好まれる方もいますが、基本的には間接照明に加えてダウンライトを組み合わせるようにしています。
明るさが足りない場合に、あとからベッドサイドにスタンドランプなど置くこともできます。
最初からその人の好みに合った適切な計画が必要です。
暮らしを照らす、これからの照明計画とは
今回のインタビューを通して見えてきたのは、「明るさ」や「デザイン性」だけではない照明の価値。
住まう人の暮らし方に合わせて、“光の在り方”そのものを考えることが、快適な空間づくりの鍵になるということです。
照明に迷ったときは、「この空間で、どんな時間を過ごしたいのか」を問いかけてみてください。
暮らしに寄り添う光は、そこからきっと見えてきます。