駐車場・駐輪場計画の考え方
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マイホームデザイナープラスをご覧のみなさん、こんにちは。
毎月1回「日本庭女子会~にわとわに〜」のメンバーが家の外まわり(外構やお庭)にまつわる情報をお届けするコラム。
今回のテーマは「駐車場・駐輪場」です。
執筆担当は個人邸の外構・庭の設計施工をするマナガーデン株式会社 代表兼プランナーの荒木真奈加です。(プロフィールはこちら)
弊社は普段お施主様から直接お問い合わせをいただき、プラン作成と施工を行っています。
ご相談を受けた住宅図面を拝見すると、あと数cm住宅の位置がずれていたら、クライアントの希望条件に対応できたのではないかというケースが駐車場計画ではよく見られます。
駐車場をつくる時のポイントについては、ものすごくたくさんあり、いろいろな本やネットにも掲載されています。
今回は連載のテーマに基づき、住宅の配置や間取りが決定する前に、駐車場・駐輪場のプランをしっかりと考えていなかったために起こってしまった具体的トラブル事例を踏まえてどうすればいいのか考え方を紹介していきます。ぜひご参考になれば嬉しいです。
駐車場計画で起こりやすいトラブル事例と考え方
例1:車のサイズがあいまいのまま、必要最低限の寸法しか確保していなかった
例えば、一番オーソドックスな前面道路と直列に駐車をする直列駐車を例に見てみましょう。
設計の段階では、住宅面積優先で駐車スペースを最小限に設定しがちですが、車を停めるスペースとしては、普通乗用車を停めることが可能な、幅2.7m以上×奥行き5.5m程度を最低限確保しておけば十分だと考えられているケースも多いようです。
(ちなみに国土交通省の駐車場設計・施工指針だと、普通乗用車1台分の駐車スペースが標準的な目安が幅2.5m×奥行き6.0mになっています。)
しかし、これはあくまで目安。
普通乗用車の中でも、車種によって車幅は約1.7〜2.0mと30cm程度もの違いがあります。またドアの大きさや開閉の仕方、トランク扉の大きさも違います。
更には、駐車場が広い開けた空間なのか、ブロックや外壁などに囲われている空間なのかによっても条件が違います。
というのも、相談会に来るお客様の図面を拝見して、お持ちの車のサイズを図面上に入れてご覧いただくと、今乗っている車だと、「扉を全開するのが厳しいですね」ということや、「ベビーカーを横付けするのは難しいですね」「軽自動車しか止められませんが大丈夫でしょうか」といったことがよくあるのです。
毎日使うことになる住宅の駐車場は、ショッピングモールなどに一時的に停める訳ではないため、必要最小限ではなく、ストレスなく余裕をもって停められるスペースを確保することが大切です。
では、それぞれのご家庭に適した大きさをどのように考えればいいのでしょうか?
車の車種や現場の状況によって必要な寸法は違うため、ここではあえて「この数字だけ抑えておけば大丈夫!」という数字は出しません。
必要な駐車スペースを確保する考え方をご紹介しておきます。
横幅:車幅+両端の扉開閉幅・歩行幅
奥行き:車長+前面道路からの距離+車のトランクドア開閉幅
これらを意識して、どのくらいのスペースが必要か整理していくことが大切です。
また、できればぜひ一度図面上だけでなく、スケールなどを使って車のサイズと歩行する幅がどのくらい必要かというのを体感してみていただくと、数字だけで考えているよりも現実的にイメージができてわかりやすいと思います。
例2:宅地と駐車場の間にできる構造物の位置を考慮していなかった
これは、実際の車のサイズを確保していたつもりだったのに、事前の想定不足が原因で必要な面積が確保できなくなってしまったという例になります。
例えば、住宅と駐車場の間に高低差があり、その境目に擁壁などが必要となる場合、事前の位置検討が重要になります。
擁壁を建てるのは2次外構だからと…擁壁の基礎の大きさや安息角について、また埋設物の条件などを考慮した位置を事前に検討していなかったため、想定していた場所に擁壁を作ることができなかった場合があげられます。
そのため、車を停めると敷地から車がとび出てしまったり、ギリギリ駐車はできても、トランクを開けるには前面道路からはみ出て駐車しなくてはならない…ということが起こりえます。
これは、通常より高低差がある敷地で起こりやすいです。宅地と前面道路の高低差がある場所の外構プランは複雑になることが多く、住宅の設計より先、もしくは同時に検討をすることが大切になります。
例3:カーポートが建てられない
カーポートについては、後からでもつけられるため、コストの関係上、今すぐつけなくてもいいかなという方が増えてきた印象があります。そうした時に起こるのが、後から建てようと思っていたのに、気が付いたら建てられない設計になってしまっていたということです。
代表的な理由としては、住宅を建蔽率目いっぱいに建てた場合、カーポートを建てると建蔽率がオーバーしてしまう場合。設計段階で将来的なカーポート設置を前提条件として共有しておくことで、回避可能なケースも多くあります。
次に、将来的にカーポートを設置するために、建蔽率や地上スペースは確保しているのに置きたいと思っていたカーポートが建てられなかったという事例です。
これは、地上部分を見るとカーポートスペースは確保されているけれども、地中の埋設物が柱を建てる位置に干渉してしまっている場合。駐車場の地下は、水道やガス管などの埋設物が通ることが多いのですが、埋設物のことまで想定ができていなかったという理由で起こりえます。
また、住宅が建つ地域によっては、条例で隣地境界からカーポートの柱が1m以上離れていないと建てることができないという場合などもあります。
こういったことは、都心や町中の狭小地で起こりやすいのですが、お住いの地域によって条例なども違うのでこういったことも踏まえて事前に検討・相談をしておくことが大切になります。
例4:住宅の間取りと駐車場の位置関係が悪い
本来とても重要になるのが、駐車場の位置をどこにするかということ。
例えば、リビングの窓から常に見えているのが車の後方部分というプランをよく見かけますが、家族が集まり、長い時間過ごすリビングの窓から見えるのが車のお尻…というのも味気がありません。また圧迫感も感じやすく、結局いつもカーテンを閉めたまま過ごすことになる要因のひとつとなります。
何十年も毎日過ごす場所となるリビングの窓から見える景色というのは、やはり心地よく、癒される景色であったり、美しいものであってほしいもの。これも間取りと駐車場の位置を一緒に検討していればいくらでも変えることができます。
駐輪場計画で見落としやすいポイント
駐輪場の必要性をプラン段階で整理しておく
駐輪場はお施主様がご要望に含めるのを忘れがちなところで、プランからも漏れがちなところ。特に、普段自転車を使わない方や、まだお子さんがいらっしゃらないご家庭だと気が付きにくいです。建築場所が駅から少し遠い場合や、お子さんが行く中学校が自転車通学になるということもあります。そういったことも考慮して駐輪場の有無についても確認をしておくことが大事です。
また駐輪場のご要望がある場合は、サイクルポート等の屋根があるものをご希望される方が多いです。屋根があることで、雨の次の日など、朝通勤・通学をする際にハンドルやサドルが雨で濡れるのを軽減してくれるからです。
屋根を付ける場合は、単独でサイクルポートをつけるという選択肢もありますし、カーポートを一回り大きいサイズにして、自転車も一緒にカーポートの下に停めるということも可能です。
風や転倒リスクを考えた配置にする
ただ、カーポートと兼用する場合は、風などで自転車が転倒した時に、車に当たらないように置き方を検討すること、もしくは第2章で紹介があった車輪止めなどを利用するなどのこともおすすめです。
ちなみに屋根は高くなればなるほど、横からの吹き込みは大きくなりますので、そういった視点で検討することも大切です。
完全に雨風をしのぎたいという場合は、屋根だけでなく、側面4面も囲われたバイクガレージをサイクルガレージとして活用する方法もおすすめです。
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画像提供:株式会社稲葉製作所
軒下スペースを活用した駐輪計画
自転車置き場は欲しいけれど、敷地的にどうしても駐輪スペースとして置く余裕がない…という方は、家の軒幅を少し広めにとるということも可能です。側面がすぐ住宅の壁になるので、意外にも横からの雨風をしのぐことも可能です。
確認申請が必要になるケースも
サイクルポートは、構造や規模によっては建築基準法上の「建築物」に該当し、建築面積に算入されます。
また、防火地域・準防火地域に該当する場合や一定規模を超える場合などには、確認申請が必要となることがあります。
取り扱いは自治体ごとに異なるため、必ず事前に確認するようにしましょう。
駐車場・駐輪場の床素材について
床素材の種類と特徴
最後に床素材について触れておきます。駐車場や駐輪場の床素材は、「コンクリートを打つ」ことが一般的かもしれませんが、実はそれ以外の選択肢もあります。
砂利、インターロッキング、タイル、レンガ、石、芝等です。それぞれメリットデメリットがあります。何が適しているかは、コスト、耐久年数、メンテナンス性、敷地の状況によって変わってきます。
コスト・耐久性・メンテナンス性の考え方
例えば、砂利敷きの場合は、どういった場合に適しているでしょうか?
まず挙げられるのが、コストを抑えたい場合です。一般的なコンクリート仕上げに比べて大幅に単価を抑えられるため、この理由で選ばれるケースも少なくありません。
実はそれ以外にも、メリットがあります。
砂利敷きの大きな特徴としては、透水性があることです。
以下のような効果が期待できます
・雨水を地中に染み込ませることができる
・近年都心部などで問題になっている道路冠水リスクの軽減につながる
・夏場の地温上昇の抑制による環境負荷低減効果が期待できる
・水勾配が取りづらい敷地条件でも、排水計画が成立しやすい
ただ、デメリットとしては、時間が経過することによって、一部がへこみ、水たまりができやすくなったり、目詰まりをすることもあるので、メンテナンスが必要になることも。
また、車や自転車が通る時に、砂利が動いたり跳ねたりするということもあります。
(ちなみにそれを防ぎたい場合には、車や自転車が載ることができるハニカム材を仕込むなどと言ったことも可能です。)
駐車場の素材ひとつ選ぶにも、コスト・安全性・利便性・耐久性・敷地環境などを踏まえて外構工事でどのようにすればご要望に近づけることができるのか早い段階で多面的に検討していくことが大切になります。
まとめ
今回のように、駐車場・駐輪場一つを考えるだけでも、住宅と外構&庭のことを同時に考えることはとても重要だとわかると思います。
外構プランを後回しにすることによって、ご要望を叶えるためには余計なコストが発生することや、どうやっても叶えられないということが起こります。住宅の設計段階でご相談をいただければアドバイスができたのにと思うことも多々あります。
住宅も、外構・お庭も、それぞれ必要な専門知識は膨大で且つ情報も日々更新されているため、どちらの専門知識も網羅するということはなかなか難しいと思います。住宅を建てる際には、できれば外構・お庭の専門家にも、ぜひ一度ご相談してみてください。
筆者紹介
連載『家づくりは“外まわり”で決まる ― 外構から考える住まいづくり』
外構の大切さを理解し、心から安心できる住まいを築いてほしい——そんな思いから始まった「日本庭女子会〜にわとわに〜」のコラム。新築計画に役立つ外構の知識やアイデアを、月1回更新でお届けします。
プロフィール
日本庭女子会〜にわとわに〜
エクステリア・ガーデン業界やそれをとりまく業種に従事する・携わる女性たちが、交流や情報交換を目的とし2017年に活動開始。
「庭や外部空間を美しく快適にすることが、住まいや暮らしを豊かに送るのに不可欠なことであり、ひいては日本の街並や景観・環境を美しく創り保ってゆくのに重要な役割を担っている」
また「住まい手だけでなく造り手・働き手の身になって考え、幅広い知識で美しく機能的な空間を造っているプロフェッショナルな女性たちがいることを知ってほしい」
そんな熱き想いを持った庭女子たちが、所属や経験・年齢を超え様々な切り口の委員会を組織し、日本各地で活動・躍動中。現在メンバー150人超。
https://niwatowani.jp/執筆者
荒木真奈加(あらきまなか)
ガーデン・エクステリアプランナー
マナガーデン株式会社 代表取締役
マナガーデンでは、埼玉県熊谷市・深谷市周辺で「暮らしを楽しむお庭&長く活用できる外構」をコンセプトに、相談・設計・施工を行っています。建築デザインを専攻し、エンドユーザーの方をメインに15年間ガーデン・エクステリアプランナーをしてきた代表の荒木が、住宅と庭のつながりを「敷地環境」と「建物の計画」から真剣に考え、ご家族の暮らしがより快適に、より豊かになるプランを作成しています。
・日本庭女子会【にわとわに】 プロフェッショナル会員 関東支部長
・日本エクステリア学会 設計向上委員会会員
・業界専門雑誌「グリーン情報」 ライター/カレッジ専門講師エクステリア担当
HPではお庭のお役立ち情報ブログを掲載しています↓
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