[連載]家づくりは「外まわり」で決まる―外構から考える住まいづくり 幸せは、案外、家の外側にある

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マイホームデザイナープラスをご覧のみなさん、こんにちは。
毎月1回「日本庭女子会〜にわとわに〜」のメンバーが家の外まわり(外構やお庭)にまつわる情報をお届けするコラム。今回で記念すべき第10章となります。
今回は「お家の周りをキレイにしていくとどんなことが起こるのか?!」について、お話させていただきます。
執筆担当は、「お庭からしあわせを見つける暮らしをご一緒に」をモットーにエクステリアやガーデンの設計施工をしている株式会社M’S PLANNINGの溝口望です。
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お庭や外構は、暮らしの空気をつくっている

家を建てる時、間取りやキッチン、収納やインテリアにはたくさん悩むのに、「お庭や外構は後からでいいかな」と考える方は少なくありません。けれど実際に暮らし始めてみると、毎日いちばん目に入るのは、窓の外の景色だったりします。家の周りを整えることそれは、ただ「見た目を良くする」ということではありません。実は、お庭や外構を整えると、 暮らしそのものが少しずつ変わっていきます。
 
たとえば──
朝、カーテンを開けた瞬間に 緑が見える。それだけで、 人は少し深呼吸したくなります。 雑然としていた場所が整うと、 頭の中までスッキリして、「今日はちょっと頑張れそう」そんな気持ちになることもあります。

そして、私たちは意外と毎日見ている景色の影響を受けています。
リビングのソファから見える景色。キッチンの窓から見える植栽。夜、ライトアップされた木々。

その景色が心地よいだけで、 おうち時間の満足度は大きく変わります。
 「旅行に行かなくても癒される」 そんな感覚は、 実は特別なことではなく、 お庭の力だったりします。そういった“家の周り”の景色は、私たちが思っている以上に、毎日の気持ちに影響を与えています。

「家に帰るのが楽しみになりました!」
「前よりお家時間が好きになりました」
「なんだか暮らしに余裕ができた気がします」

お客様からそんな言葉をよくいただきます。中には、「お庭が一番よく見えるように、ソファとダイニングテーブルの位置を変えました」とお知らせくださったお客様もいらっしゃいます。

お庭を整えることは、単に見た目をキレイにすることではなく、“暮らしそのものを整えること”なのだと感じています。特にコロナ禍以降、家で過ごす時間が増えたことで、“窓から見える景色”の重要性を感じる方が増えているように思います。家は建物の中だけで完結するものではなく、窓の外まで含めて「暮らし」なのだと思います。

外構の効果、「キレイ」の伝染

外構や庭は、建物の“外側”として考えられがちですが、私はむしろ住まいの一部だと思っています。

設計の段階では、どうしても建物そのものに意識が向きがちです。でも、実際に暮らし始めると、住まい手が毎日目にするのは「窓の外の景色」です。

朝、カーテンを開けたときに見える緑。
玄関を出たときに迎えてくれる季節の花。
風に揺れる木々や、鳥たちの気配。
そんな何気ない景色が、暮らしの心地よさをつくっています。

玄関まわりの植栽やアプローチ、お庭の整い方によって、室内の感じ方まで変わることがあります。
実際お庭や玄関まわりを整えたお客様から、
「今度は家の中も片付けたくなりました」
「暮らし全体を見直したくなりました」
というお話をいただくことがよくあります。これは実際によくあることで、私は、これを「キレイの伝染」と呼んでいます。お庭が整うと、その心地よさが家の中にも広がっていくのです。

そして、この「キレイの伝染」は一軒だけで終わりません。
お隣さんが、玄関先にお花を植えたり、外壁を塗り直したりすると、そのまたお隣さんも少しずつ家のまわりに手をかけ始める。そんな光景を、これまでたくさん見てきました。外構や庭には、単に建物を引き立てるだけではなく、人の気持ちを動かし、暮らしを豊かにし、時には街並みまで変えていく力があります。

目の前の景色が整うと、不思議と気持ちも整っていきます。
たとえば、お庭が荒れていると、「また草が伸びてるな…抜かなきゃ!」そんな小さなストレスが、毎日の中に積み重なっていきます。忙しくて手が回らず、だんだん外を見たくなくなる。そのうちに、カーテンを閉めっぱなしにしてしまう方も少なくありません。本当は緑とつながり、光と風が入る気持ちの良い窓なのに、景色が気になって閉じてしまう。それはとてももったいないことです。

反対に、家の周りが整っていると、自然と外に目が向くようになります。
小さなお花が咲いた。
新芽が出ている。
風が気持ちいい。
空が広い!

お庭には、小さなしあわせの種がたくさん転がっています。
そして、その小さな変化に気づけること自体が、暮らしを豊かにしてくれるのかもしれません。

家の周りがキレイだと、防犯にもつながる

実は、防犯の観点から見ても、お庭や外構を整えることは、とても大切です。
防犯というと、高い塀や監視カメラをイメージする方も多いですが、本当に大切なのは「人の気配」を感じることだと思っています。

たとえば、
・雑草が伸び放題
・なんとなく暗くて見通しが悪い
・物やごみが放置されている
・植木が伸びすぎて死角が多い
そんな状態だと、「あまり管理されていない家」という印象を与えてしまうことがあります。

逆に、
・適度に手入れされている
・夜にやさしい照明がつく
・ガーデンファニチャーなどがあり、お庭時間を楽しんでいる感じがする
・植栽が整っていて適度に視線が抜ける
そんなお家は、「ちゃんと暮らしている家」に見えます。それだけで、防犯レベルは大きく上がります。

私は、外構デザインは“閉じる”だけではなく、“心地よく開く”ことも大切だと思っています。
完全に隠してしまうのではなく、ほどよく気配が感じられること。
緑があり、テーブルとイスがあり、灯りがあり、そこで過ごす人の存在を感じるさせること。
それが、目には見えない結界のような、住まい手が放つバリアになっていくと考えます。

がんばらなくていい、ローメンテナンスのお庭

最近は「ローメンテナンスのお庭にしたい」というご相談がとても増えています。
共働きのご家庭も多く、忙しい毎日の中で、お庭の管理に時間をかけられない方はたくさんいます。
ここで施工事例をひとつご紹介しましょう。

ローメンテナンスでも庭時間を楽しめるアウトドアテラス

こちらのお客様は建物をリフォームするのではなく、お庭をリニューアルすることで、日々の暮らしをもっと楽しみたいと考えられていました。

ガーデニングブームの頃にDIYで頑張って施工した枕木やレンガ。植栽を楽しんでいらしたのですが、草取りやお庭の使い方の不便さに限界を感じてご相談にいらしてくださいました。そこで、お客様のアウトドア志向のライフスタイルに合わせ、既存のウッドデッキを囲っていた手すりの一部を撤去。アプローチに使われていた赤レンガをヘリングボーンに敷き直し、ウッドデッキとつながるテラス空間をつくりました。

さらに、外からの視線を気にせずリビングとお庭がつながるデザインにすることで、植栽もローメンテナンスな計画へ植え替えました。

お引き渡しの後、お客様から届いたのは、レンガテラスで本格的にダッチオーブンでアウトドアを楽しんでいる動画でした。「メンテナンスも楽になったし、お友達を呼んでのお庭時間も増えたし、何よりもQOL(暮らしの質)が上がりました!」そんな嬉しいメッセージも添えられていました。

つまり、ローメンテナンスとは、“植物をゼロにすること”ではありません。

全部をコンクリートや人工芝にすれば、一見ラクに見えるかもしれません。
でも、実際には、照り返しが強く熱くなったり、無機質に感じたり、時間が経つと汚れが気になったりすることもあります。そして何より、自然の変化を感じる楽しさが減ってしまいます。

大切なのは、“管理しやすく、気持ちよく暮らせるバランス”を見つけること。
たとえば、

・雑草が生えにくい(目立ちにくい)植栽計画
お庭全体の土の占める割合を減らしつつ、その場所に合った植物をギュッと密に植え込むことで、雑草が生えにくくなり、日々のお手入れの負担を減らすことができます。雑草が生えたとしても、緑の一部になります。

・手のかかりにくい樹木選び
植物の出身地や本来の生育環境を考え、その植物が心地よく育つ場所へ植栽することで、無理なく育ち、手間をかけなくても美しい景観を保つお庭をつくることができます。地元で自生している植物や鳥さんが運んできてくれる植物は、その土地に合っているので、病気や虫の害にあいにくくすくすくと育ちます。

・無理なく管理できる土の分量

自分にとって最適な「植えっぱなしで楽しむエリア」と「植え替えで楽しむエリア」のバランスを知ることが大切です。その後の管理のしやすさが大きく変わります。お花を植え替えることが大好きなのに、お庭に残された土の分量が少ないと、植木鉢ばかりがどんどん増殖してしまいます・・・。

・日陰をつくる木の配置(とっても大切)
今、日本の東京の8月は、赤道直下のシンガポールより暑いです。そんな過酷な夏を涼しく過ごすのにとっても大切な存在が樹木たちです。イギリスでは、大きな木を「ジャイアントパラソル」と呼び、テラスに木陰ができる配置になるよう植樹しています。

・掃除しやすい動線と素材
お庭植えた植物の足元に、土のスペースをあえて残すようにしています。そこに、お庭を掃除した時の枯葉やちょっとした枝を集め、その場所でダンゴムシや微生物の力を借りて、地球に帰すシステムを作っています。

そういった工夫をすることで、お庭のメンテナンスはグッとラクになります。
「頑張らないと維持できないお庭」ではなく、「自然と外に出たくなるお庭」。
それが、本当の意味でのローメンテナンスなのだと思います。

幸せは、案外、家の外側にある

どんなに素敵な建物でも、窓の外が整っていなければ、景色は完成しません。
逆に、小さな植栽ひとつで、家の印象は驚くほど変わります。

一本の木がつくる木陰。
夜に灯るやさしい照明。
季節ごとに変化する葉色。
そういったものが、家の“空気感”をつくっていきます。

お庭や外構は、後回しにされがちな存在かもしれません。
けれど本当は、毎日の幸せにとても近い場所です。

家に帰った瞬間、ホッとする。
窓の外を見て癒される。
「この家、好きだな」と思える。
そんな感覚をつくる力が、お庭にはあります。
 
風が抜ける。
緑が揺れる。
鳥の声が聞こえる。

そんな何気ない瞬間に、私は、「生きていてよかった!」と思えることがあります。
お庭は、ただ植物を植える場所ではなく、暮らしの中に“幸せの景色”をつくる場所。
私はそう思っています。

皆さんも、お庭や外構を後回しにせず、お家の外側にシアワセの種を蒔いてみませんか?

筆者紹介

連載『家づくりは“外まわり”で決まる ― 外構から考える住まいづくり』

外構の大切さを理解し、心から安心できる住まいを築いてほしい——そんな思いから始まった「日本庭女子会〜にわとわに〜」のコラム。新築計画に役立つ外構の知識やアイデアを、月1回更新でお届けします。

プロフィール

日本庭女子会〜にわとわに〜

エクステリア・ガーデン業界やそれをとりまく業種に従事する・携わる女性たちが、交流や情報交換を目的とし2017年に活動開始。

「庭や外部空間を美しく快適にすることが、住まいや暮らしを豊かに送るのに不可欠なことであり、ひいては日本の街並や景観・環境を美しく創り保ってゆくのに重要な役割を担っている」
また「住まい手だけでなく造り手・働き手の身になって考え、幅広い知識で美しく機能的な空間を造っているプロフェッショナルな女性たちがいることを知ってほしい」

そんな熱き想いを持った庭女子たちが、所属や経験・年齢を超え様々な切り口の委員会を組織し、日本各地で活動・躍動中。現在メンバー150人超。

https://niwatowani.jp/

執筆者

溝口望

株式会社M’SPLANNING代表(2001年設立)
ガーデンデザイナー
茨城県鹿嶋市生まれ、鹿嶋市育ち。
フェリス女学院大学文学部英文学科卒。

The English Gardening School (英国ロンドン)へ留学、ガーデンデザインのデイプロマを取得。帰国後、個人邸や公園、病院などのお庭やエクステリアをデザイン・施工している。
イングリッシュガーデンをベースに日本の環境に合わせた、ローメンテナンスのお庭づくりが特徴。
国際バラとガーデニングショウ」第14回奨励賞・第15回準優秀賞・第16回準優秀賞。2年連続人気投票1位受賞。趣味の園芸2026年講師としてデビュー

・JAG (ジャパンガーデンデザイナーズ協会正会員)
・日本庭女子会にわとわに初代働く女性応援委員長
・GARDENSGARDENデザイナー
・株式会社オンリーワンクラブブレイン(2014~2023)

・1級エクステリアプランナー
・1級造園施工管理技士
・2級土木施工管理技士

https://www.garden-msp.com/

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