第二章【立面図・断面図・展開図】一級建築士から学ぶ現場に伝わる図面をはやく描くコツ
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目次
立面図・断面図・展開図は、平面図・配置図の次に重要となる基本図面です。図面を描き進めるうちに、図面同士の整合性があわなくなり、何度も修正を繰り返してしまいがちです。前章では、平面図・配置図の「現場に伝わる図面をはやく描くための基本的な考え方と書き方のコツ」を紹介しました。第二章では、立面図・断面図・展開図で押さえるべきポイントをまとめています。
立面図・断面図・展開図とは?
| 図面の種類 | 内容 |
| 立面図 | 建築物を外部から見た様子を表した図面のことをいい、四角い建物であれば、一般的に4面で表現します。 |
| 断面図 | 平面図が建築物を水平方向に切り上から見た図面であるのに対し、垂直方向に切って横から眺めた図面のことをいいます。 |
| 展開図 | 全ての部屋で、部屋の中心から壁面全てを見渡した投影図です。間仕切りや凹凸のコーナーがあるなど入り組んだ部屋の場合は、見渡す中心点を移動し、全ての壁面を描くようにします。 |
立面図
立面図は、住宅であれば1/100で作図することが多く、建物全体の高さや屋根勾配など、建物全体のフォルムを確認するのに使用します。また、建物の見栄えにも大きく影響するため、現場での行き違いが生じないように、外壁の仕上げ材や窓のほか、屋根、樋、基礎、外部に露出する設備の見え方なども表現します。壁面に切り替え部分がある場合には、見切りの有無や見切り材の種類などの情報も加えます。排気口やエアコンの室外機、給湯器などの設備についても記載するようにしましょう。
立面図は、平面図が室内全体のインデックスであるのに対し、建物外部のインデックスとしての役割を果たします。立面図で表現しきれない場合には、補足図面や詳細図を別途用意するとよいでしょう。
断面図
断面図は、建物を2箇所以上垂直に切り、階高や天井高さ、最高高さなど、建物の高さに関する基本的な情報をまとめます。現場では、上下階のつながりや高さ関係を確認したり、屋根の勾配や軒の出寸法やGLからの離れを確認するのにも使用します。建物の基本構造を理解するのに活用されるほか、階段勾配の検討など、設計段階でも重要な役割を果たします。
展開図
展開図は、平面図では描ききれない、全ての部屋の内装デザインをまとめた図面です。内装は仕上げ表を見ればおおよそ分かりますが、設備や窓との関係や、天井面と壁面などの取り合い、壁面の仕上げ材の切り替え方や位置の確認などは、やはり展開図での説明が必要です。このような情報は見積もり依頼の段階から丁寧に描いていきましょう。現場が始まってからは、照明や設備機器の位置の検討や確認にも使用します。
立面図・断面図・展開図の描き方
①図面を描き始める前に
平面図と同様、いきなりCADを使って作図するのではなく、まずはスケッチで立体的なデザインを検討していきましょう。全体のコンセプトや周辺の環境を考慮し、イメージする外観や窓の高さなどを検討していきます。
施主への提案の際には、まずはスケッチなどラフな絵で提案し、施主の好みを探りながらデザイン案を絞っていくのもよいのかもしれません。一生懸命作図したものが、全くの検討はずれであった場合、修正するのに労力や時間がかかります。また、建築確認や現場が始まってから慌てることがないように、高さや仕上げ材などが法規をクリアしているかも提案の段階からチェックを開始するとよいでしょう。
②断面図で高さチェックがマスト
平面図や配置図が主に水平方向での位置関係を示すのに対し、立面図・断面図・展開図は、いずれも高さが重要となる図面です。
全体の立体的なフォルムが決まったら、断面図で高さを確認していきます。押さえるべきポイントは、基礎の高さ、屋根・天井・床の構成、屋根の勾配、天井高などです。最高高さや軒・けらばの出もチェックします。配置図や平面図で問題がないように見えても、断面図を検討している段階で、高さ制限がクリアできずに、境界線からの後退が必要になる場合もあります。そのため、早い段階で断面図で確認を進めていくのが、効率よく作図をするためにもおすすめです。
高さを検討するとき、階段についても確認が必要です。
描く断面図に階段が該当しない場合でも、平面図と照らし合わせながら勾配や段数に問題がないかを必ず確認しましょう。断面図で確認ができたら、決定した高さ情報をもとに、立面図、展開図を描いていきます。
③現場で活きる立面図・断面図・展開図の使われ方
工務店が仕上げ材の積算をする際には、平面図と立面図、展開図を照らし合わせて、材料の拾い出しを行います。断面図は、工務店や職人が全体の構造を大まかに理解するのに役立ちます。断面詳細に関しては、矩計図で説明できるように準備していきましょう。
工事中、立面図や展開図は、大工のほか仕上げに関わる板金屋、瓦屋、左官屋、クロス屋などが主に使用します。電気や設備の担当者は、機器の設置場所や見え方の確認に使用します。収まりの詳細を説明したい場合には、現場が始まるまでにそれぞれ詳細図を準備していきましょう。
特に立面図・展開図は、平面図と同様、誰が見ても情報が的確に伝わるように、分かりやすく、見やすい図面を作成することが大切です。
立面図・断面図・展開図の修正を減らす描き方のコツ
図面枠内に収まるように、各面をレイアウトしながら、基準線から描き始めましょう。
特に展開図は描く面の枚数が多いため、順番に描いているつもりでも描き漏れが生じることも。どの部屋から描き、どの面を描くのかレイアウトしながら一通り整理することで、作図もスムーズになります。
また、現場で必要な展開図をすぐに見つけられるように、部屋名や面の位置を書くと親切です。例えば、北面から時計回りにA→B→C→Dと決めた場合には、リビングの北面は「リビングーA」となります。レイアウトが終わったら、壁の仕上がりラインを描いていきましょう。
立面図も同様に、レイアウトする時に北面、東面など一目で分かるように明記し、壁や屋根の仕上がりラインから作図していきます。全体を描き終わったら、細かな情報を加えていくと作図の後戻りが少なくなります。
立面図と展開図には仕上げ材に関する情報も記入していきますが、仕上げ材の方向性が定まってから加えるようにすると修正する手間や記入ミスを防げます。
現場で伝わる立面図・断面図・展開図にするための表現ルール
現場では、立面図・断面図・展開図が高さを確認するために重要な役割を果たします。
建具や照明、水栓などの取り付け高さが分かるように寸法を入れます。加えて、現場で迷いが生じないように水平方向の位置についても記入していきましょう。仕上げ材が切り替わる箇所についても、どの位置で変わるのか分かるようにします。
第一章でお伝えしましたが、白黒印刷でも理解できる図面であることも大切です。線の種類や太さ、斜線の向きや間隔などを使い分けながら、見やすい図面となるよう工夫してみてください。
壁の断面のうち仕上げ部分を太線で描き、壁の下地については斜線などで塗りつぶして断面であることを分かるようにします。その他の情報は手前に見えるものほど太く、奥にあるものは細い線で描いていきます。線の使い分けによって奥行きのある表現になり、現場でも見やすい図面となります。
文字サイズも情報ごとに統一し、誰でも読みやすいサイズを心がけましょう。
立面図・断面図・展開図を描き終わったらチェックしよう
図面を描き終わったら、平面図との整合性はもちろん、立面図や断面図、展開図との食い違いがないかをチェックしましょう。図面に変更があった場合には、必ず全ての図面において該当箇所をチェックし、修正を加えます。そして、それぞれの職人が図面を見た時に必要な情報が書き漏れていないか、曖昧な表現になっていないかを確認していきます。
また、立面図や展開図には仕上げ材の情報も記入しているため、仕上げ材や設備機器に変更が生じた場合にも直し忘れがないように注意しましょう。
【実践】実際に伝わる立面図を描いてみよう
今回は、3Dアーキデザイナーを使用して立面図を作成しました。
この基本図面をもとに、一級建築士のAさんに「伝わる図面」になるためのフィードバックをお願いしたいと思います。
よろしくお願いします!早速、立面図を見ていきましょう。
基本図面をチェック
それではフィードバックをお願いします!
立面図は、建物の見える情報を全て描くことが大切です。作図していただいた基本図面を見ると、一見全て描かれているように見えますが、施工する立場から見るとどうでしょう。
主に、設備関係の情報がないことが分かりますよね。設備の見え方は、意匠的にも大きく影響する部分なんですよ。雨樋についても同様です。
確かにそうですね!
正面から目立たないところに配置したいですし、ベントキャップなどの高さがバラバラになってしまっては残念です。あらかじめ図面で伝えることは大切ですね。
職人さんが考える配管は、意匠的によいと思う場所よりも、設備にとっての効率の良さや、配管をいかに短くするかなどを優先する傾向があります。そのため、設計士から明確に指示がない場合、目立つ場所にあまり見せたくないものがきてしまうこともあるのです。
壁に穴を空けてしまってからでは、修正が難しくなることもあります。
耐力壁や仕上げなどとの兼ね合いもありますから、図面で伝えることはとても大切なんです。
立面図で、窓や外壁との位置関係や、配管の回し方などを描いておけば、現場での段取りもスムーズになります。
それぞれ重要視するところが違うことを念頭において、全体像を把握している設計士が図面に示すことが大切なんですね。
そうですね。続いて外壁面を見ていきます。1階と2階の間に水平ラインが入っていますね。
今回のように仕上げ材が同じである場合には、消しておきましょう。
仕上げが変わる場合や、一度見切りを入れる場合には表現し、見切り材が何であるかも記入します。そうすれば、見積もり時に正確に算出することができますし、外壁材と見切り材の職人さんが違う場合など、あらかじめ現場監督が施工工程を検討しやすくなります。
線1つで現場を迷わせてしまうこともあるということですね。
現場が遅れないようにするためにも、図面はとても重要ですね!
そうなんです。高さ方向の寸法についても見てみましょう。
高さは全て拾えていますが、最高高さ、基礎高以外は、足し算をしないと分からない状態ですね。すぐに必要な寸法が読み取れるように、寸法線を工夫するとよいですね。
確かにその通りですね。
計算ミスがあれば現場でのトラブルにもなりますので、あらかじめ必要な寸法を入れるようにします。
最後に、平面図でもお伝えしたように、見やすいフォントサイズかどうかチェックしましょう。
文字が重ならないように配置を調整しながら、現場で見やすい図面をめざします。
引き出し線も交差しないようにすると、さらに見やすくなりますよ。
フィードバックをもとに整えた図面がこちら!
今回のポイントは、立面に見えるものは全て描くということ、また、不要な線は消し、仕上げの切り替え位置を明確に示すことですね。高さ方向の寸法や屋根の情報は、立面図が基本図面として重要な役割を果たしますから、正確に伝えましょう。
断面図や展開図との整合性が取れているかも忘れずに!
修正後の図面は、必要な情報が一目で分かるようになりました。
最後に図面を仕上げる際に必ずチェックしておきたいポイントを確認しておきましょう。
伝わる図面チェックリスト(立面図編)
- 不要な線は消されているか
- 仕上げの切り替えが明確に分かるか
- 雨樋、破風、手すりなど見えるものは全て描けているか
- エアコンの室外機、ベントキャップの位置が分かるように描かれているか
- 文字のサイズは見やすいか
- 高さ寸法が明記され、断面図や展開図と一致しているか
執筆者
一級建築士・住宅収納スペシャリスト
意匠設計事務所で、新築からリノベーションまで住宅を主軸として、図面作成から施主や現場での打ち合わせ、現場監理まで携わる。
10年以上の実務経験をもとに、現場で役立つ設計・図面作成の考え方を監修。
本連載では、図面を効率よく、正確に描くための基本的な視点を整理している。







