[連載]クライアントから選ばれるための3D活用 伝わるプレゼンテーションの組み立て方【クライアントから選ばれるための3D活用】

  • 3D活用法

一級建築士/インテリアデザイナーの佐藤のりこと申します。(プロフィールはこちら

当コラムの連載では、設計デザイン業務のプロとして、CGで作る3Dパースを活用しながら、どんなスキルをどのように積み重ねることができるか、数回に分けてご紹介していきます。

これまでは、3Dマイホームデザイナーがインテリアデザイナーとしての能力を“インプット”するのに、どう役に立ったかについてお伝えしてきました。
第4回では視点を変え、クライアントへの“アウトプット”、すなわちプレゼンテーションにおいてどのように活用しているのかについてお話します。

① 目的によって3Dパースの使い方が違う

皆さまは3Dマイホームデザイナーをどういった目的で活用されていますか?
大きく分けると、プロジェクト受注のための完成予想図として使う場合と、受注後にプラン内容を説明するツールとして使う場合があると思います。

受注に向けたプレゼンテーションでは、クライアントの気持ちをつかむ為に、より魅力的に表現されたパースを作成します。素敵な空間が手に入ることを伝え、クライアントの期待感を高めることが目的です。詳細な要件をヒアリングする前であることも多く、空間の正確さや使い勝手よりも、見た目の美しさや、夢や希望が膨らむような完成予想図であることが要求されます。

一方、設計契約後に間取りを検討しながら、その内容を説明するためにパースを活用するケースもあります。契約後であっても、クライアントにわくわく感を持ち続けてもらうことは大切ですが、この時の重大な役割は「認識のズレを減らすこと」です。
2D図面の表現だけでは説明しきれない部分を補い、空間の広さやスケール感をより直感的に伝えることで、クライアントのイメージと実際に完成する建物とのズレを軽減する役割を担います。

私の場合は、後者の「設計契約後にプラン内容を説明するための活用」が圧倒的に多くなっています。

では実際に、どのように活用しているのかをご紹介します。

② 3D画面で色んな角度から見せる

クライアントとの初顔合わせでヒアリングを終えた後、その要件を基に計画を練り、設計者として最適だと考える間取りをご提案します。
私の場合、多くは最初から3Dで作り始め、いきなりCAD図面を作成することはありません。自分自身も立体で確認しながら計画を練り、3Dマイホームデザイナー上でプランニングを行います。

初回提案時には、3DマイホームデザイナーをインストールしたPCを持参し、クライアントの目の前でソフトを開き、作成中の3D画面をそのままご覧いただきます。
作成途中のデータであれば、視点をくるくると自在に変えながら、見せたいポイントをその場で提示できるためです。

平面図から3Dパースへ変換した住宅プランの比較イメージ

▲図面だけで説明するよりも3Dは直感的に伝わりやすく、クライアントの理解も早まります。

図面の赤枠内がリビング。
ソファやテーブルなどもレイアウトされているが、この図からイメージを掴むのは難しい…

一方、下図は同じリビングの3Dイメージ。インテリアのイメージをフルカラーで伝えられるうえに、視点を変えて室内を見回すことも可能。

▲マウス操作で室内を自由に見回せます(3Dマイホームデザイナーで出力した360°パノラマ画像)

打合せの記録をクライアントと共有するために、JPEGに変換した鳥観図も数枚用意しますが、打合せ中に使うのは画面上のパースです。この段階ではディスカッションを重ねる中で新たなアイデアや要望が生まれ、当初のプランが大きく変わることも少なくありません。

プランの方向性がまとまるまでのこの時期は、作図作業の手間を抑え、できるだけ手戻りを減らすことが重要になります。そのため、CAD図面ではなく、表現スピードが早く操作が簡単な3Dマイホームデザイナーを活用しています。

なお、寸法が入った図面が必要な場合は、3Dマイホームデザイナー内にある平面図の表示を使用しますが、やがてプランがまとまると、より詳細な図面が求められるようになります。そのタイミングでCAD図面を起こして建築設計図での表現方法へ移行していきます。

③ 内装の色決めでは静止画像を数パターン用意する

間取りのプランが決まると次は内装の色決めの段階に入ります。
この場面でも、3Dマイホームデザイナーは大きく活躍します。

ただしこの段階では、間取り説明の時のようにPC上で作成中の画面を操作しながらシミュレーションを行うことはありません。
というのも、ソフト上で材料を選び、その場で色を変更していくには、どうしても時間がかかってしまうためです。打ち合わせの流れを止めないためにも、事前準備が重要になります。

具体的には、打合せの数日前までに、提案する材料や色を何パターンか用意し、それぞれをJPEGに変換しておきます。さらに、それらを一つの資料にまとめ、比較しやすいように準備しています。

ダイニングキッチンのアクセントカラーを複数パターンで比較した3Dパースイメージ

▲打ち合わせ前に用意したダイニングキッチンの比較資料。色や素材の違いを一目で確認できます。

トイレのアクセントカラーを複数パターンで比較した3Dパースイメージ

▲トイレのアクセントカラーも複数パターン用意することで、色の違いを見比べることが可能に。

加えて、実物のサンプルも用意して、画面上のイメージと重ねてもらうようにしています。
これによりクラインアントは、安心して内装を決める事が出来ます。

④ 高画質レンダリングの必要性

ここまでの実例をご覧になって、気付かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、掲載している3D画像の中には、レンダリングを行っていないものも多く含まれています。間取りの説明や内装の色決めの段階であれば、光の計算がされていない3D画像でも伝えたい内容はクライアントに十分伝わるからです。

レンダリングでは、光の量や光のあたり方を計算し、よりリアルな表現が可能となりますが、その分一定の処理時間がかかります。多くのバリエーションを用意したい場合は、レンダリングを行わずJPEGに変換する方がはるかに早く作業が終了します。

つまり、クライアントのイメージと完成後のズレを軽減するという目的であれば、必ずしも高精度なレンダリングパースである必要はありません。

とはいえ、時間をかけて仕上げた高品質なレンダリング画像にも、明確な役割があります。

レンダリングは主にあかりの表現において効果を発揮し、クライアントにより臨場感をより豊かに伝えることができます。作り込んだデザインを美しく見せるだけでなく、その仕上がりイメージをクライアントと共有することで、提案への信頼感や安心感を高めることにもつながります。

操作画面の画質
レンダリング画質

▲レンダリング前の操作画面(左)と、レンダリング後のパース(右)の比較。光の表現や空間の印象が大きく変わります。

もちろん、実際とかけ離れた過度な演出は避ける必要がありますが、その範囲内で、レンダリングを活用することで、出来るだけ夢のあるパースを作り上げます。良い未来が見えるとクライアントは打ち合わせが楽しいものになります。

住宅を作り上げるという行為は、クライアントにとって長期にわたるものであり、時には負担や不安を感じる場面もあります。

しかし、夢が現実に近づいている事を感じていただければ、たとえネガティブな感情が芽生えてしまったとしても、そのような気持ちは緩和され、わくわくと前向きな気持ちでプロジェクトに向き合っていただけるのではないでしょうか。

こうした感情の変化は見過ごされがちですが、プロジェクトを円滑に進めるうえで、実は非常に重要な要素だと感じています。

プロのパースとの違い、AIとの差とは

パース制作を専門とするプロフェッショナルも存在します。
彼らは、写真のようにリアルで惹きつけられる表現力を武器としています。まさに最初にご紹介した、受注をするための完成予想図としては強力な味方になってくれる事でしょう。デザインコンペなど、ここぞという場面では、自力で仕上げるよりも、専門のパース制作会社に外注する方が効果的なケースも多いと感じます。

パースのプロフェッショナルは、3Dソフトで作成した画像をベースに、Photoshopのような画像編集ソフトを用いて丁寧にレタッチを重ね、最終的なビジュアルへと仕上げていきます。
その一枚にかける時間・労力・コストの違いが、完成度の差として大きく表れます。

また昨今は、AIが画像を作ってくれます。今後ますますAIは発展し一般的になり、パースにおいても図面から読み取って一瞬でパースを生成できる時代が訪れるでしょう。

しかし、自力で作ったパースの制作過程も見せながらクライアントに説明する行為には、「クライアントに伝える」という点において、デザイナーとしての大きな意味があると感じています。

これからは、AIの利点を取り入れながら、3Dソフトを使いこなしていくことが求められる時代になっていくでしょう。
私も乗り遅れないよう、研鑽を積みたいと思っています。

筆者紹介

佐藤のりこ氏

一級建築士、インテリアデザイナー
佐藤のりこ

PhD株式会社
英国インテリアデザイン協会正会員
中部インテリアコーディネーター協会 初代会長
Instagramはこちら

ハウスメーカー・建築士事務所などで、建築とインテリアの業務に従事し、2010年に一級建築士資格取得。2013年ロンドンのThe Interior Design SchoolにてInterior Design Professional Diplomaを取得。2015年~2025年NOCO DESIGN一級建築士事務所を運営し、現在はPhD株式会社所属。
建築を知るインテリアデザイナーとして、「良いデザインは人を幸せにする」という信念のもと、空間が持つ力を最大限に引き出している。

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