[連載]クライアントから選ばれるための3D活用 インテリアデザイナーのスキル【クライアントから選ばれるための3D活用】
- 3D活用法
目次
一級建築士/インテリアデザイナーの佐藤のりこと申します。(プロフィールはこちら)
当コラムの連載では、設計デザイン業務のプロとして、CGで作る3Dパースを活用しながら、どんなスキルをどのように積み重ねることができるか、数回に分けてご紹介していきます。
第2回となる今回は、「インテリアデザイナーのスキル」について、3D活用の観点から掘り下げていきます。
➀インテリアコーディネーターとインテリアデザイナーの違い
クライアントにとって、インテリアコーディネーターとインテリアデザイナーの違いは、必ずしも明確ではありません。実際に、インテリアコーディネーターでも設計業務を幅広く担当する方もいれば、インテリアデザイナーでもスタイリングを中心に活動する方もいらっしゃいます。
どちらかというと建築インテリアに携わる側の都合上、インテリアコーディネーターとデザイナーを区別しているように感じています。
スキルの違いを整理すると、次のようになります。
■インテリアデザイナー
空間そのものを“つくる・設計する”プロです。 活躍の場は、店舗・ホテル・オフィスなどの空間設計。壁・天井・床の構成、照明計画、 動線、素材選定など、建築寄りの専門性が必要で、図面を描いたり、 施工会社と調整したり、プロジェクト全体をデザインします。
■インテリアコーディネーター
既存もしくは設計された空間を“整える・選ぶ”プロと言えます。 すでに設計されている空間に対して、家具・照明・カーテン・色・素材などを選び、調和のとれた空間に仕上げるのが主な業務。建築の構造そのものにはあまり踏み込まない事が多いです。
端的に言えば、デザイナーは「設計(図面化・納まり・施工調整)」まで含めた建築寄りのスキルが求められます。
一方でコーディネーターは、担当領域によっては設計に深く踏み込まずに成果を出せる場合もあります。
②インテリアコーディネーターにも建築知識はあった方がいい
私が最初に取得したのはインテリアコーディネーター資格でした。
インテリアコーディネーターの試験科目には、インテリアの歴史やデザインスタイル、素材、計画や実務の進め方の他に、建築の基礎や関連法令についての科目もあります。
プロとして、インテリア計画に必要な最低限の建築の理解や、法令知識などに絞って“広く浅く”出題されます。浅いとはいえ、実務で困らないレベルの理解は求められ、未経験でも受験できる試験であることから、未経験者が建築・インテリアの仕事を始めるための登竜門と言えるでしょう。
この資格試験を受験することで、建築・設備・法規・素材・家具・照明など、実務に必要な基礎を一通りカバーでき、採用する企業側も「最低限の知識がある」と判断する根拠となります。
ただし、資格を取得しただけですぐにプロになれるわけではありません。ましてやデザインセンスがあるだけでもプロにはなれません。
というのも、インテリアの仕事は一人で完結せず、設計者・施工者と意図を共有して形にする必要があるからです。活躍の場によって差はありますが、設計担当者にコーディネートの内容を伝えて建築設計図に反映してもらう、施工担当者にコーディネートの意図を伝えて考えた通りに作ってもらう、といった連携が欠かせません。
建築の世界は、専門用語に満ち溢れています。一方で、インテリアコーディネーター資格で身に付けた建築知識はあくまでも最低限でしかありません。
置き家具とスタイリング(デコレーション)で完結する業務を専門にするのであれば、それほど気にしなくてもいいかもしれませんが、暮らし方や動線、造作設計まで踏み込んで提案できるコーディネーターを目指すなら、施工者や設計者にも通じる言葉で、意図(なぜそうしたいか) と 条件(寸法・納まり・素材) をセットで伝える力が必要になります。
前回のコラムでは、3Dパースの立ち上げが空間の理解につながる事を書きました。
パースを作成しながら建築現場の疑似体験することによって、建築やインテリアに携わる者にとって必要なスキル「建築構造や頭の中で立体空間を組み立てる力」を身に付ける手助けになる。更に建築設計図面の矛盾に気づくきっかけにもなる。という事でした。
が、その身に付き方は、ベースとなる建築知識があるかないかで、個人差が大きいのではないかと思います。資格試験で詰め込んだ基礎知識があってこそ、実践の場でぐっと理解が深まる事がありますが、バーチャルな場であっても同じ現象が起こると言えます。
③現場のトラブルを少なくするために
施工者は、工期遅延・施工不良・クレーム・コストなどについて、最終的に全責任を負います。そのため、提案内容が「納まらない/施工が難しい/コストが合わない/工期に影響する」と判断されると、現場側は慎重になりやすいのが実情です。結果として、提案が「工事を複雑にするもの」と受け取られてしまうことがあります。
こうしたすれ違いは、設計意図の共有不足や情報の出し方に加えて、建築の前提(構造・法規・納まり)を押さえ切れていないことが一因になるケースがあります。
2級建築士と同等の知識のある方は、図面の読み書きができて、構造・法規・設備・納まりの基本を理解していますから、ありえない寸法、施工不可能な配置、法規違反の提案、下地が入らない造作、といった“致命的なミス”はしにくくなります。
現場によく通って現場を学んだ方は、施工者の作業動線、工期の流れや職人の段取り、コスト感覚、どこで施工者が困るか、どこが曖昧だと現場が止まるか、どの情報を先に出すべきか、というような“現場の呼吸”が掴めるようになります。
施工者が求めているのは「現場をわかっている設計者(コーディネーター・デザイナー)」です。
図面や指示書が正確なのはもちろんのこと、判断や情報共有が早く、施工者を尊重する。当たり前な事ばかりですが、経験が浅いと本人も気づかずにできていない事があります。
もちろん私自身も、当初は同じ課題を抱えていました。
いつも同じチームで仕事していると、自分の足りない部分を知らないうちに周りがフォローしてくれますが、別のフィールドで仕事を受けた途端、自分の実力の無さに気付く。そのようなケースはよく見受けられます。
④3Dパースが施工者とのコミュニケーションに役立つ
設計意図は言葉だけだと受け手によって解釈がズレやすいものです。なので、誤解が起きないよう、図面・仕様書に加えて完成形を共有する工夫が必要です。
図面や仕様書に加えてパースを添付すると、完成形のイメージが共有しやすくなります。その結果、「思っていたのと違う」といった認識ズレを減らし、手戻りや現場の混乱を抑える効果が期待できます。
例1
私は初回の見積依頼の時にパースを添付します。
このように鳥観図を図面と並べると床や壁の仕上げの切り替え位置が把握しやすくなります。さらに横からのアングルパースも加えると、建具が木製なのか障子なのか襖なのか一目瞭然です。
ただし、施工者に提出する場合は、多すぎるとかえって確認に手間がかかる可能性もあるので、1〜2枚に絞るのが無難です。
また、パースと仕様書の食い違いといったミスも考えられますので、「違っている場合は仕様書に従う」と一言添えています。
例2
詳細図は2DのCADで描くことが多いですが、場合によっては3Dでも表現します。この時は施工者に説明するために、CGではありませんが、手描きのスケッチで意図を伝えました。結果的にはこのとおりには作れませんでしたが、その答えを出すために、パースを使って明確なディスカッションが出来ました。
例3
床カーペットの張り分け方を伝える為に3Dパースを提出しました。
アール形状の床の張り分けをCAD図面に落とし込むのは、図面精度が求められます。手間をかけて正確に図面を描く前に、比較的簡単な3Dパースで意図を表現し、施工者に確認することで施工者の見解を聞くことが出来ました。
結果的にはアールでの張り分けはキャンセルとなり、図面化する負担と手間を削減できました。
クロスの張り分けも、パースを添付するとミスを防ぎやすくなります。選定したクロスの画像を取り込んで反映できるため、現場での確認作業に有効です。
このように、3Dパースを施工者との打ち合わせでも活用しています。
施工会社の現場監督さんにはもちろん、職人さんにも完成形を視覚的に共有できる点で喜んでいただけているように感じます。分かり易くなったというだけでなく、デザインの終着点はこのようになる、と視覚的に理解できるので、作る方も張り合いが出るようです。
最後に
ここまでの考え方を、より体系的に実現するのがBIMです。
コーディネーター・デザイナー含む設計者から施工者に伝える方法として、はじめから3Dモデル情報の方がはるかに分かり易いです。BIMの導入はまだまだハードルが高いですが、3Dアーキデザイナーならば感覚的な操作で作成できるので、利用する価値はあると思います。
筆者紹介
一級建築士、インテリアデザイナー
佐藤のりこ
PhD株式会社
英国インテリアデザイン協会正会員
中部インテリアコーディネーター協会 初代会長
ハウスメーカー・建築士事務所などで、建築とインテリアの業務に従事し、2010年に一級建築士資格取得。2013年ロンドンのThe Interior Design SchoolにてInterior Design Professional Diplomaを取得。2015年~2025年NOCO DESIGN一級建築士事務所を運営し、現在はPhD株式会社所属。
建築を知るインテリアデザイナーとして、「良いデザインは人を幸せにする」という信念のもと、空間が持つ力を最大限に引き出している。







