“自分らしさ”は空間でつくれる|プロが語るインテリアとライフスタイルの関係

  • 取材

「自分らしい空間」とはどんなものなのでしょうか?
家具や色のセンスだけでなく、その人の価値観や生き方を反映した空間は、心地よさと満足感をもたらしてくれます。

今回ご紹介するのは、プロのインテリアコーディネーター・前田氏が実際に行っている、空間づくりのための「考え方」と「プロセス」。ただ家具や色を並べるのではなく、住まう人の価値観や目的を空間に落とし込む技術と哲学を、具体例を交えてお伝えします。

プロフィール

前田やす子氏

大阪北摂で活動。「インテリアが上質な人生への決め手になる!」
新築/リフォームのインテリア計画、アイテム購入アドバイス、オリジナル家具設計
色彩、心理、デザイン理論を軸にお客様だけのストーリーを組み立て、一目で刺さるビジュアル提案。
意味のある仕掛けで腑に落とし、クライアントの本音を引き出します。

ICA関西(インテリアコーディネーター協会関西)所属

https://ica-kansai.gr.jp/

なぜインテリアに「自分らしさ」が必要なのか

前田氏は、インテリアを「自己表現のための装飾」としてではなく、「その人の人生や目的を支える環境」として捉えています。
欧米のように主張で押し出すのではなく、自分が過ごす環境に染まることで、自然に「なりたい自分」に近づく。この視点は、多くの日本人にとって非常に相性の良いアプローチと言えるのではないでしょうか。

前田氏
前田氏

人は誰しも、自分らしく生きたいという本音を持っています。
特に日本人は周囲に馴染むのが得意な分、自分の内面をインテリアに反映することで、その“らしさ”が自然とにじみ出てくる。だから、空間づくりはとても重要なんです。

無理に主張しなくても“空間が語ってくれる”のですね。

編集部
編集部

空間提案の第一歩は「目的と価値観」を知ることから

インテリアコーディネーターが業務に取りかかるとき、まず最初に行うのが、「お客様が何を叶えたいのか」の把握です。それは、単なる好みやテイストの聞き取りではなく、もっと本質的な対話です。

そのために前田氏はまず、

・家族構成、生活スケジュール
・現在の計画や仕様決定の進捗
・内装材や照明の方向性
・ご自身やご家族のライフスタイル

など、外側と内側の両面から情報を丁寧にヒアリングします。

前田氏
前田氏

お客様は、自分の将来をより良いものにするために、わたしたち専門家を信頼してくださっています。その期待に応えること、それ以上の感動を提供することを常に意識しています。

お客様の想いに真摯に応える姿勢が素敵です。

編集部
編集部

空間の“ポテンシャル”を引き出す具体的プロセス

ヒアリング後は、次のような流れで空間づくりを進めていきます。

1.ご要望・嗜好の「分析」

資料や言葉の中に隠れたキーワードやビジュアルを丁寧に読み解き、施主が気づいていない「傾向」や「優先軸」を洗い出します。デザインには理論と心理へも作用する表現の型があり、そのフィルターで言語化してからビジュアル化します。

これにより、表面上の要望ではなく、「本質的な理想像」に近づくことができます。

2.ストーリーをもったビジュアル提案

分析した要素を、比較できるように複数の案として視覚化。
なぜそのアイテムを選んだのか、どう空間とつながるのかをストーリー性をもって説明します。
この過程では、お客様の反応を見ながら方向性を微調整したり、新たな振り幅を提案することもあります。こうすることで、お客様にも判断の基準ができてきます。

3.成果物=「暮らしの未来像」

こうした試行錯誤を経て完成するのが、単なるプレゼン資料ではない「暮らしの未来像としてのインテリア提案」。
色・形・素材・構成といったデザイン要素を駆使しながら、施主の目的や価値観を空間にビジュアル化するのが、インテリアコーディネーターの役割です。

前田氏
前田氏

理論だけでなく、感覚的な理解も加えて納得していただく。
それが“腑に落ちる空間”づくりに欠かせないんです。

一人ひとりのライフスタイルや空間の個性に合わせて、最適な提案をしているんですね。
丁寧さがすごく伝わってきます。

編集部
編集部

実際にこのプロセスを経て提案された色彩・照明の実例をご覧になりたい方は、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

インテリアは「自己表現」でなく「自己形成」のツール

インテリアは、ただ空間を飾るためだけのものではありません。
自分自身の価値観や生き方を自然に映し出す手段でもあります。
最後に、前田氏が語る「インテリアでなりたい自分に近づく考え方」をご紹介します。

「インテリアに染まる」ことで理想に近づく

前田氏
前田氏

私が、インテリアアイテムをライフスタイルと紐づけしたり、お客様のご興味や内面、目的をストーリーに仕立ててビジュアル化するのには理由があって。

まず、こうするとお客様が計画に能動的になり、ご理解が深くなることが多いのです。ひとは「自分らしく生きたい、自分らしさを発揮できるほうが自然だ」という願望と本音がある、と思っています。その可能性に反応されてるんだろうな、と推察しています。

でも、日本人は、周りを乱さず合わせること、本音では生きないことが得意。
まわりに染まってしまえるのです。(それが無理な人、少しはいますけど)

たしかに私も自分の「好き」をなかなか言葉にできないです。

編集部
編集部

「外からの影響に合わせる日本人」だからこその提案

前田氏
前田氏

では、自分の身のまわりのインテリアを、好きなことや目的を反映して作れば、どうでしょう?
日本人はまわりから染まっちゃうのですから、願望どおりに生きやすくなっていくのでは?

おお!好きなインテリアに自分が染まる!

編集部
編集部
前田氏
前田氏

自己主張が大切な方々は、そうやってインテリアを構築し利用しています。

周囲に馴染むことが得意な日本人は、実はインテリアを通じて「なりたい自分」に近づいていける可能性を秘めているんじゃないか。

私はそう考えています。

インテリアには、人を変える力がある

もし、「どんな空間が自分に合っているのか分からない」と感じたときは、まずどんな自分でありたいかから考えてみるとよいかもしれません。

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