[連載]カフェの照明計画 ―インテリアデザインにおける照明の効果と役割― カフェの照明計画 第5章 素通り客を捕まえるサイン照明計画(後編)

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カフェの照明計画 ―インテリアデザインにおける照明の効果と役割―

第5章 素通り客を捕まえるサイン照明計画(後編)

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ファサード照明──建物の表情をつくる

建物の外観(ファサード)に照明を当てることで、カフェの存在感を高めることができます。

木造の温かみのある外壁であれば、下から上に向けて照らすアッパーライトを配灯します。
アッパーライトの前に植栽を植え込むことで、照明器具の存在を隠すことができ外観を一層強調することができます。レンガやタイルの壁面であれば、ウォールウォッシャー照明で、質感と陰影を際立たせ素材を演出することが出来ます。

ファサード照明の色温度は、内装のコンセプトに合わせます。
ナチュラル系のカフェであれば2700~3000ケルビン、モダン系であれば3500~4000ケルビン。

サイン照明、店内の光、ファサード照明──この3つの色温度を統一することで、店全体に一貫した印象が生まれます。

時間帯による見え方の違い

サイン照明と店構えの効果は、時間帯によって大きく変わります。

昼間:自然光との関係

昼間は自然光が強いため、サイン照明の効果は限定的です。この時間帯は、サインの「形状」と「色」が重要になります。(ただし、輝度の高い内照サインならば併用は効果的)

木製の立体文字、金属のサイン、色彩豊かなロゴ──自然光の下で映える素材とデザインを選びましょう。
照明に頼らず、素材そのものの質感と色で「カフェらしさ」を伝えます。

また、昼間は店内の照明を控えめにしても問題ありません。窓から入る自然光が、店内を十分に明るくします。むしろ、外から見たときに「自然光を活かした明るい店内」という印象を与えることで、開放感とナチュラルな雰囲気を演出できます。

夕暮れ:店内の光が外に漏れる効果

夕暮れ時は、サイン照明と店構えが最も効果を発揮する時間帯です。

外はまだ明るいものの、店内の照明が徐々に目立ち始めます。
温かみのある光が窓から漏れ、通行人の視線を捉えます。この時間帯の光景が、「仕事帰りに立ち寄りたい」という感情を引き起こすのです。

サイン照明も、この時間帯から点灯し始めます。外の明るさとのバランスを取りながら、徐々に存在感を高めていきます。照度センサー(EEスイッチ)を使えば、周囲の明るさに応じて自動で点灯するため、スタッフの手間がかかりません。

店名の近くに「coffee」と添えるだけで前を通る人たちにここがカフェであることが伝わる

夜間:サイン照明と店構えの協調

夜間は、サイン照明、店内の光、ファサード照明の3つが協調して、カフェの存在を際立たせます。

サイン照明で「カフェ」と認識させ、
店内の温かい光で「居心地の良さ」を伝え、
ファサード照明で「建物全体の雰囲気」を演出する。

この3つが揃って初めて、夜の通りでカフェが魅力的に浮かび上がります。
ただし、過度に明るくしすぎないことが重要です。
周囲の店舗よりも突出して明るいと、かえって入りにくい印象を与えます。周囲との調和を保ちつつ、適度な明るさで「温かく迎え入れる」雰囲気をつくりましょう。ここでの必須条件は「調光」です。

3Dシミュレーションでの検証ポイント

3D空間上で、歩行者の目線の高さ(床上約1.5m)にカメラを設定し、通りからカフェを見た視点でレンダリングします。

サインは5m、10m、15m離れた位置から、それぞれ視認できるか。文字が読みやすいか。店内の光が魅力的に見えるか──。複数の距離からの見え方を確認することで、サイン照明の配置と明るさを最適化できます。

5m離れて

10m離れて

15m離れて

通りからの見え方──時間帯別の検証

昼間、夕暮れ、夜間──それぞれの時間帯での見え方をシミュレーションします。

昼間は自然光での形状と色がどう映えるかを確認。
夕暮れは外の明るさと店内の照明のバランスを確認。
夜間はサイン照明、店内の光、ファサード照明の協調を確認。

時間帯ごとのレンダリング画像を施主に見せることで、「この時間帯にはこう見える」という具体的なイメージを共有できます。

まとめと次章予告>
個人カフェにとって、素通り客を捕まえることは生命線です。そのために必要なのは、「ここがカフェである」ことを瞬時に伝え、「入ってみたい」と思わせるサインと店構えの連動が鍵。特にサイン照明は重要な役割を担います。
ロゴの認知度に頼れない個人カフェだからこそ、照明という武器を最大限に活用しましょう。サイン照明で業態を明確に伝え、店内の温かい光で居心地の良さを伝え、ファサード照明で建物全体の雰囲気を演出する。
3Dシミュレーションで事前に検証し、施主と共有する。この姿勢が、開店前から集客を意識した、戦略的なカフェ設計を実現します。

第6章では、素通り客を捕まえた後の「店内に入った時ワクワクする内装デザインと照明」について解説します。入口をくぐった瞬間に、どのような光の演出が待っているべきか──その具体的な手法をお伝えします。

執筆者紹介

三原 慎一

株式会社 灯り計画(https://design-akari.com/) 代表取締役
北海道出身
土屋ホーム、遠藤照明、パルコスペースシステムズを経て、2014年10月に独立
一般社団法人 照明学会 認定照明士
一般社団法人 日本商業施設士会 認定商業施設士
一般社団法人 日本商環境デザイン協会 正会員
一般社団法人 日本インテリアプランナー協会 一般会員

照明計画、照明設計、プロダクト、協会活動、住宅、商業、エクステリア、スキー場、竹灯り…そして、マーケティング。いろいろなモノといろいろなコトを掛け合わせながら、商環境の照明ノウハウを住環境に移植する照明プランナーとして活動。最近は子どもたちに「デザインの楽しさ」を伝える「JCD soda(子どもたちと創るデザイン)活動(https://www.jcd.or.jp/jp/soda/)」にも参加しています。
本連載を通して、読者の皆様に灯りの大切さ、灯りの持つ力を知っていただき、「灯りを計画する」という武器を手にしていただければと考えています。

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