[連載]クライアントから選ばれるための3D活用 空間の伝え方と、今後への期待【クライアントから選ばれるための3D活用】
- 3D活用法
一級建築士/インテリアデザイナーの佐藤のりこと申します。(プロフィールはこちら)
当コラムの連載では、設計デザイン業務のプロとして、CGで作る3Dパースを活用しながら、どんなスキルをどのように積み重ねることができるか、数回に分けてご紹介していきました。
最終回となる今回は少し視点を変えて、私自身が「これからもっと活用してみたい」と感じている機能や、今後の3Dソフト活用について期待していることをお伝えしたいと思います。
① 3Dで変わる「空間の伝え方」
私は長い間、「3DマイホームデザイナーPRO9」を使っていましたが、より高性能なレンダリング表現を期待して、昨年から「3Dアーキデザイナー11Professional」を使いはじめました。実際に使ってみて感じたのは、3Dの活用やクライアントとのコミュニケーションの方法に新しい提案が含まれているということです。
リアルに伝える
以前は、リアルなパースを作る場合、レンダリングに時間がかかり「静止画として見せる」ことが中心でした。しかし「3Dアーキデザイナー11Professional」は、視点を変えるたびにレンダリングし直す必要がないため、その場で空間を動かしながら説明することができます。私のように打合せにPCを持ち込んで、空間をくるくる回しながら説明するスタイルには特に相性が良いと感じました。
その背景にあるのが、高画質3Dライブスクリーン「Pixage(ピクサージュ)」です。
時間をかけてレンダリングする必要なく、写真のようなリアルさを維持したまま、その場で視点変更やウォークスルーを行うことができます。
空間として共有する
最近特に面白いと感じたのは、360度パノラマ画像です。
スマートフォン上でプランした室内空間を見ることが出来、実際にクライアントへ360度パノラマ画像を送ってみたところ、ご自身のスマートフォンで空間を360度自由に見回しながら確認するため、大変喜んでいただけました。
3Dデザイナーシリーズは、作成したパースを360度パノラマ画像として出力し、FacebookやGoogleフォトなどを通して共有することができます。この機能を使ったパースは第4回のコラムに掲載していますので、是非360度パノラマを体験してみてください。
暮らしを想像してもらう
もうひとつ印象的だったのが、「インテリアデコレーション機能」です。
部屋にドラッグするだけでインテリアの仮置きができてしまい、一瞬でそのお部屋の家財道具がセットできて便利です。
3D空間にインテリアを配置することで、間取り図だけではイメージしにくい部屋の広さが伝わりやすくなります。一方で、クライアントからインテリアのご要望を十分聞き取りできていないタイミングで、インテリア配置を見せる必要がある場合は、デザインに迷いが生じるため、作業に意外と時間がかかります。そういった時に、空間の使い方や生活感を短時間で整えられるのは大きな助けになると感じました。
この機能を使ったパースは第3回コラムで掲載されています。
新築住宅の設計をしていた時の実例でしたが、事情により少々アレンジをする必要がありました。
その際にたたき台として、「インテリアデコレーション機能」で家財道具を一括で取り込み、仕上げとしてコーディネートを少しだけ整えています。
② 建築設計業務のフォロー
私にとっては、3Dパースは、プレゼンや完成イメージ共有のためのツールであり、パース完成後には設計(作図)業務へと移ります。そして実際の設計業務では、「3Dで考えた内容を、どう図面へ落とし込むか」という部分が重要なステップであり、集中力と時間が必要となります。
「3Dアーキデザイナー11Professional」の機能で特徴的なのは作図支援機能です。3Dでプランを作り上げたところで、「確認申請図支援キット」を使えば、「配置図」、「敷地求積図」、「床面積求積図」、「平面図」、「立面図」、「断面図」、「屋根伏図」を一括で自動作成できます。
これらはPDFやJWW形式にも変換でき、レイヤも整理された状態で出力されるため、JW-CAD上で比較的スムーズに修正や調整を行う事が可能です。
私はまだこの機能を完全に使いこなせているわけではありませんが、単純に「図面を自動作成する」というだけではなく、設計製図に着手するための下地としても活用できるのではないかと感じました。
高さ関係を踏まえた空間のバランスは、まず3Dで確認した方が頭の中を整理しやすいのですが、その後、最終的には図面として情報をまとめ直す必要があります。
その際、一度PDFに変換して紙に出力し、平面上の寸法や高さ関係を、紙面上で整合性を確認しながらメモを書き込み、内容を整理した上でCADの白紙状態から一気に描き上げる流れが、自分には合っていると感じました。
また、一括作図だけでなく、作成したプランから部分的に展開図を作成してJWWデータとして出力したり、パース作成時に入力した情報をエクセルで一覧化して、仕上げ表や建具表を作るサポートをしてくれたりもします。
3Dで空間を検討し、その内容を図面へつなげていく。
その間を埋める存在として、こういった機能は非常に興味深いと思っています。
それから以前からある機能ですが、斜線や日影を簡易的にチェックしてくれるので、その意味では安心して一戸建てのプランニングができます。
このように、設計者やデザイナーが便利に使える機能は色々とあり、使いこなすことで強力な武器になると思います。
③ もっと活用できる
私が今特に注目しているのが、「イエクラウド」です。
3Dでのプランニングが完了した後、それをクライアントに提示する時、皆さんはどのようにしていますか?
私の場合は、部屋ごとによいアングルを視点登録し、それをレンダリングしながらJPEGやBMPなどの画像データとして出力しています。そして、出力したデータをクライアントにメールで送るか、打合せ時にPCやタブレット上で提示するか、プリントアウトして提出していました。
ただ、画像枚数が増えるとデータ容量も大きくなり、メールでは一度に送りきれないこともあります。そのため、大容量ファイル送信サービスを使ってリンクを送って納品することもありますが、こうした手順は簡単な操作ではあるものの、意外と時間がかかりますし、間違えてしまわないように神経を使います。
その点、イエクラウドでは、フォルダへJPEGやBMPなどの画像データをアップしておくだけで、クライアントがスマートフォンアプリ「イエクラウド」を通して閲覧できます。フォルダにはロックをかけておくことができるので関係者以外に見られる心配はありません。
さらに、画像データだけでなく、3Dデータもイエクラウドに格納することができ、クライアント自身が空間を立体的に確認することができます。また、パース以外の図面などの書類(PDF)も同じ場所へまとめて格納できるので、打合せ前に必要な書類一式を格納しておけば、クライアント側でも事前に内容を確認することができます。
3Dデータや画像のやりとりが簡単になるだけでなく、打合せ日ごとにファイルを分けて他の書類も一緒に格納しておけば、プロジェクトを通して議事録がわりの運用もできそうです。
これからの3D活用は、「パースを作る」だけでなく、「どう共有し、どうコミュニケーションを取るか」まで含めて進化していくのかもしれません。
④ 今後期待するもの
生成AIの利用が一般的になってきた現在、AIを使いこなせない企業は生き残れないともいわれるほど、生成AIは無視できない存在となっています。
「AIに仕事を奪われるのではないか」と危惧していたフェーズはとっくに過ぎ去り、今や、仕事の効率を高めるために、AIをどのように利用するかが問われています。
3Dパース作成においては、AIが図面を読み取って一瞬でパースを生成する技術が作られるのも、もうすぐそこではないかと思っています。ただ現状では、プロンプト(AIへの指示文章)を作る難しさもあり、「思ったような画像がなかなか出来上がらない」という声もよく耳にします。
最近では、そのプロンプトの難しさを解消するためのAIサービスやツールも各社で開発が進められており、建築・インテリア分野でも、今後さらに活用が広がっていくのではないかと感じています。
ただ、私は「パースを描く」という行為そのものには、そのプロセスに大事な意味があると思っていますので、3Dソフトが不要になることはないと考えています。
CGでも手描きでも同じですが、「空間を組み立てながら考える」というプロセスの中で、アイディアが浮かんだり、問題点に気付いたりできるからです。
もし、図面からパッとパースを生成するAIが一般化すれば、クライアント自身でも簡単にイメージを作れる時代になるかもしれません。しかし、そのパースを実際の建築として成立させるためには、素材・寸法・納まり・光・動線など、現場へ落とし込むためのノウハウが必要になります。そのノウハウの中にはプロが「パースを描きながら考える」という過程で積み重ねている体感や気付きも含まれているはずだと思います。
そういった意味では、3Dパースの作成ソフトは今後も使い続けられ、一部の機能をAIで補うといった形へ進んでいくのではないでしょうか。
例えば、
・生成AIで作成した家具などの3Dデータを取り込む
・完成したパースと家具画像をAIに読ませて合成させる。
・完成したパースを、AIでよりフォトリアルに仕上げる。
・出来上がったパースを使って、AIに別のデザインテイストに一括変換してもらう。
といった使い方は、今後ますます増えていくと思います。
レポートなどの書類を作成する時は、まずAIでたたき台を作り、そこに自分なりの解釈を加えて仕上げていく。そんな方法で使っている人は多いと思います。3Dパースも同じように、全てをAIへ任せるのではなく、人が考えた提案をAIが補助していく方向へ進んでいくのではないでしょうか。
使い方がより簡単になれば、使う人は増えます。
AIと組み合わせる事でもっと手軽に、もっと伝わりやすく進化していく3Dパース。これからの発展にも期待したいと思います。
筆者紹介
一級建築士、インテリアデザイナー
佐藤のりこ
PhD株式会社
英国インテリアデザイン協会正会員
中部インテリアコーディネーター協会 初代会長
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ハウスメーカー・建築士事務所などで、建築とインテリアの業務に従事し、2010年に一級建築士資格取得。2013年ロンドンのThe Interior Design SchoolにてInterior Design Professional Diplomaを取得。2015年~2025年NOCO DESIGN一級建築士事務所を運営し、現在はPhD株式会社所属。
建築を知るインテリアデザイナーとして、「良いデザインは人を幸せにする」という信念のもと、空間が持つ力を最大限に引き出している。







