[連載]カフェの照明計画 ―インテリアデザインにおける照明の効果と役割― カフェの照明計画 第4章 3Dシミュレーションでの実践的な検証方法(前編)
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カフェの照明計画 ―インテリアデザインにおける照明の効果と役割―
第4章 3Dシミュレーションでの実践的な検証方法(前編)
なぜ3D検証が必要なのか──カタログでは見えない「空間の真実」
第3章では照明器具の選定方法を解説してきました。光の目的を明確にし、素材と色温度の関係を理解し、配光角やグレア対策を考慮する考えを示しました。しかし、どれだけ理論を積み重ねても、実際の空間で「本当にそう見えるか」は別問題です。
「カタログで選んだ中角25°のダウンライトが、実際には思ったより暗かった」「配光図を見て計算したはずなのに、隣のテーブルまで光が広がってしまった」「壁面の反射で、予想外に空間が明るくなりすぎた」──。
こうした問題は、平面図と器具メーカーのカタログだけでは決して見えません。
平面図だけでは確認できない要素
光の広がりと重なり
複数のダウンライトを配置したとき、それぞれの配光がどう重なり合い、床面や壁面にどんな光のパターンをつくるか。平面図上では円を描くだけですが、実際には光は立体的に広がり、複雑に干渉し合います。
中角25°のダウンライトを1.5m間隔で配置した場合、天井高2.7mであれば、床面では光が重なり合います。しかし、天井高が3.5mになれば、光は届かず暗い部分が生まれます。この「立体的な光の広がり」は、平面図だけではなかなか判断するのは難しいでしょう。
壁面・天井の反射光
壁面はコーニス照明(画像左)。
壁面の演出を目的とし、凹凸のある素材を施工することで影ができ立体感を出すことができます。
天井面はコーブ照明(画像右)。
空間全体の照度を確保することを目的とし、天井と光源の隙間で光の出方をコントロールします。隙間は200mm以上を推奨します。
間接照明の効果は、壁や天井の素材と色によって大きく変わります。白い漆喰壁であれば、光は柔らかく広がり、空間全体を明るくします。一方、ダークブラウンの木材やレンガ壁では、光は吸収され、陰影の強い演出になります。
この「反射光による空間への影響」を、平面図やカタログスペックだけで予測することは不可能です。
視線の高さでのグレア予測
客が座った状態(床上約1.2m)での視線の先に、器具が直接見えるか。展開図では器具の設置高さはわかっても、実際の視線との関係は把握しにくいものです。その場合、カットオフアングルの角度を参考にします。35°以上の器具を選定すると良いでしょう。
特に、配線ダクトレールを使ったスポットライトは、角度調整が自由なため、設置後に「眩しい」と指摘されるケースが多くあります。客席からの視線を考慮せず、商品演出だけを優先した結果です。
こうした「視線の高さとグレアの関係」は、3Dの空間上で視点設定をすれば確認することが出来ます。
3Dシミュレーションが出来る3つの課題解決
3Dシミュレーションソフトを使うことで、以下の3つの課題が解決します。
1.施工前に光環境を「見る」ことができる
器具の配置、配光角、光束、色温度──これらすべての要素を3D空間上で再現し、実際にどう見えるかをレンダリング画像で確認できます。朝の自然光と照明の組み合わせ、夜の人工照明だけの状態、時間帯ごとの調光シーン──あらゆるパターンを視覚化できます。
「テーブル面は十分明るいが、顔が影になっている」「壁面のアート作品に光が当たっていない」といった問題を、施工前に発見し、修正できます。
器具の位置を10cm動かすだけで、光の当たり方は大きく変わります。3Dシミュレーションなら、この微調整を何度でも繰り返し、最適な配置を見つけられます。
3Dシミュレーションソフト(3Dアーキデザイナー)では、ライティング(照明)の調整が可能。天井に設置したスポットライトからの灯りの広がりを赤い円錐で明示している。(立面図の青い形状は視点位置を示すもの)
2.空間全体の確認ができる
一般的な照度分布図は平面上の数値を確認し判断します。机上面照度は500ルクス、床面照度は300ルクスなど。これだけでは空間の「明るさ感」を判断することができません。大切なのは鉛直面の光り方を確認できるかです。広範囲が良いのか部分的な方が良いのか。人間の視線は床でも天井でもなく鉛直面を軸にそこに入る視界に影響します。すなわち、壁面の演出が空間全体の印象を左右するとても重要な役割を担うことに繋がっているのです。
3Dシミュレーションでは、壁面の照度分布、テーブル面の照度、そして視線の先の明るさ──これらすべてを立体的に確認できます。数値だけでなく、「見た目の印象」まで検証できることが、3Dシミュレーションの最大の強みです。
この確認作業が、設計者の専門性と信頼性を大きく高めます。ここで、この先のアウトプットの精度の違いをお伝えします。ひとつはイメージ先行型。もうひとつは、クオリティ重視型。高い精度を求める場合、BIMなどのハイスペックの3Dソフトは沢山あります。今回は、イメージ先行型のソフトを使った場合を想定し、簡単にわかりやすく施主にイメージを共有できる方法を軸に解説します。
3.施主と「体感」を共有できる
照明効果の確認ができたら、次は回路計画に進みます。ベース照明と演出照明に分け、さらにゾーニングごとに細分化しても良いでしょう。1日を4つの時間帯に分けてシーン設定するくらいがちょうどいいと思います。3Dシミュレーションではシーンの細かな数値設定は必要ありません。好みの明るさ設定は竣工後に決めると良い。ということを前提にします。
この回路計画とゾーニングのイメージの共感をスムーズに進めることができるのが「3Dシミュレーション」です。施主は「自分の店がどうなるか」を具体的にイメージできます。
ここで重要なことは、「シーンコントローラースイッチ」を採用することで、竣工後に色温度も照度も変えられる仕組みを取り入れることで施主に期待感と安心感を同時に与えることができます。
これは「思っていたのと違う」という竣工後のクレームが、劇的に減少することを意味します。
※シーンコントローラースイッチについて
シーンコントローラースイッチについての詳細は、三原氏のブログをご参考に。
株式会社 灯り計画>ブログ>暮らしの灯り>シーンコントローラースイッチを知る
次章予告
後編では、3Dシミュレーションを使った具体的な実践ステップを解説します。内装素材の反射率設定、IESデータの活用、複数視点でのレンダリング確認──。そして、施主への効果的な提示方法までを、実務に即した形でお伝えします。 後編へ>
執筆者紹介
三原 慎一 氏
株式会社 灯り計画(https://design-akari.com/) 代表取締役
北海道出身
土屋ホーム、遠藤照明、パルコスペースシステムズを経て、2014年10月に独立
一般社団法人 照明学会 認定照明士
一般社団法人 日本商業施設士会 認定商業施設士
一般社団法人 日本商環境デザイン協会 正会員
一般社団法人 日本インテリアプランナー協会 一般会員
照明計画、照明設計、プロダクト、協会活動、住宅、商業、エクステリア、スキー場、竹灯り…そして、マーケティング。いろいろなモノといろいろなコトを掛け合わせながら、商環境の照明ノウハウを住環境に移植する照明プランナーとして活動。最近は子どもたちに「デザインの楽しさ」を伝える「JCD soda(子どもたちと創るデザイン)活動(https://www.jcd.or.jp/jp/soda/)」にも参加しています。
本連載を通して、読者の皆様に灯りの大切さ、灯りの持つ力を知っていただき、「灯りを計画する」という武器を手にしていただければと考えています。







