[連載]クライアントから選ばれるための3D活用 インテリアから始める建築設計【クライアントから選ばれるための3D活用】
- 3D活用法
一級建築士/インテリアデザイナーの佐藤のりこと申します。(プロフィールはこちら)
当コラムの連載では、設計デザイン業務のプロとして、CGで作る3Dパースを活用しながら、どんなスキルをどのように積み重ねることができるか、数回に分けてご紹介していきます。
今回は、ハウスメーカーで設計を担当した際に、3Dをどのように活用していたのか、その経験と実際に得られた効果についてお伝えします。
帰ってきたときに必ず見るわが家の外観。外観デザインにおいて窓は重要なアイテムでもあります。
① インテリアから始める建築設計のすすめ
ハウスメーカーでインテリアコーディネーターをしていた頃は、インテリア打合せを行う時に、設計が決まった図面を見て、なぜこんな中途半端なところに窓があるのだろう?と思うことがありました。
外観のデザインに合わせて窓の位置を決めるからなのですが、外観の都合のみで決められた窓の位置は、内側からは使いにくい場合があります。
設計者がインテリアデザインの観点を持ち合わせていない限り、このような現象は起こり続けます。そこまでの打合せでお客様がそこに気が付くのは稀で、だいたいはインテリア打合せの際にインテリアコーディネーターが指摘することになります。
間取りが確定した段階でインテリア打合せとなる場合もあり、窓の位置や大きさを変更することが出来ないとなると、インテリアコーディネーターはかなり苦労して家具のレイアウトを考える事になります。
しかし、最近は住宅を購入する方のこだわりも多様化してきています。住宅の価格が上がっているためでしょうか、ひと昔前より住宅購入者の熱量が上がっているように感じます。そのため、インテリアと建築物の設計が同時に行われる、もしくは、インテリアありきで建築物を設計する視点も少しずつ増えているようです。
インテリアを重視する男性も以前より増えていますし、昨今では住宅の性能もますます注視されるようになってきていますので、住宅の建築設計の会社様は、これまでどおりのやり方では顧客満足度を維持できなくなってきたのではないでしょうか。
② 3Dソフトが思考のスピードと精度を上げる
ハウスメーカーのインテリアコーディネーターを卒業し、いくつかのキャリアを重ねた後に、今度は別のハウスメーカーで設計を担当することになりました。土地条件から建物の配置と間取りを設計し、外観から設備や内装まで一貫してプランニングと顧客対応を担当しました。
そこでは、インテリアコーディネーターはおらず、設計者が壁クロスの打合せまで行っていましたので、私にとってはインテリアコーディネーター時代の問題意識を、設計の立場で解決したいという挑戦となりました。
そして、その時に大きな力を発揮したのが、3Dマイホームデザイナーでした。
3Dマイホームデザイナーでは、高低差のある敷地も入力できます。その上にプランニングした間取りを組み立てて屋根を作り、要件を入力すると、高さ制限や斜線制限を簡易的にチェックしてもらえます。また、屋根勾配や屋根形状の検討も、一瞬で立体的に見比べられます。
何より役に立ったのは、やはり窓の位置です。外観的にはこの位置にこの窓がいいけどインテリア的にはどうか?という検討を、3D画面上で実際に見て確認しながら進める事ができるのです。
位置だけでなく大きさを変えたり、二連や三連の窓にしてみたりと、いろいろなシミュレーションをCG上で行い、外観もインテリアもしっくりくる一番のパターンを選び出します。


位置、大きさ、二連と三連。窓のシミュレーションも手軽に作って比較ができる
※上の画像では、バーを左右にスライドすると、窓の形状やサイズの違いを比較できます。
もちろん、2DのCAD図面上でもその検討はできるのですが、当時使っていたCADでは外観の立面図と内装の展開図が連動する事はなく、自分の脳内で2Dから3Dへ、逆に3Dから2Dへ、の変換作業を繰り返しながら図面化する必要がありました。
当然間違える事もありますし(お客様との打ち合わせまでには、何人かのチェックを受けますので、お客様にご迷惑をおかけすることはありませんが)、そもそも考えながら図面を描くのは時間がかかります。
3Dマイホームデザイナーなら一瞬で入力し、外観とインテリアを同時に見比べる事が可能です。そのおかげで設計精度が上がったのは間違いありません。
前述の家のインテリアイメージ。視点を切り替えるだけで外観とインテリアを同時に見比べられる
更にお客様との打合せに自分のPCを持参して、CG画面を見てもらいながら説明する。という手順を踏んでいました。
今でこそ当たり前に行われている事かもしれませんが、当時はまだ2Dの紙の図面での打合せが主流でした。そのためか私の場合、完成後に「思っていたのと違う」という声はほとんどありませんでした。
これは、設計段階でお客様に「外観とインテリアを同時に見える化」出来ていたからだと感じています。
③ もう一つの学び:現場に喜ばれる図面への昇華
一戸建て住宅の設計図を見ながら3Dパースを起こす作業は、全体の寸法を把握してから、詳細な寸法へと思考を進めます。が、図面に記載してある寸法の入れ方が悪いとそこで作業が止まります。記載されている数字を再計算しながら組み立てる必要があるからです。
つまり、図面に描かれる寸法の入れ方によっては作業の進み具合に差が出るという事です。そしてそれは、図面を見ながら制作する職人さんも同じなのだと気が付きました。
それを理解してからは、自分が建築物のプランニングをして設計図を描く時には、現場への伝わり易さを意識して作業するようになりました。作図の時にどこからどこまでの寸法を優先して図面に明記するのかは、作り手側の読みやすさをイメージしながら行うクリエイティブな作業でした。
その成果もあってか、私の図面は分かり易いと、何度か現場の方々に言われた事があります。
④ 更に伝わり易くするために
インテリア専門の方は、図面上の寸法の押さえ方を内寸で行う事が多いように思います。インテリアの立場では、家具や設備がそのスペースに入るかどうかが重要になってくるので、特に内寸=有効寸法を気にするからでしょうか。
が、通常建築図面は柱芯で寸法を押さえますし、現場の職人さんも寸法を柱芯で読んで制作することが多いと思います。壁の下地材と表面の仕上げ材が変わっても壁芯の寸法には影響しないからです。内寸よりも壁芯での表記の方が、寸法の把握がし易いのです。
普段から内寸での表記を多用されている方がいらっしゃったら、リフォーム案件などの図面を描くときは、壁芯で寸法表記してみることをお勧めします。合わせて、必要なところには有効寸法の記載を忘れないようにしましょう。
3Dマイホームデザイナーの「自動寸法」の機能。芯々、内法、外寸を選ぶことができる。
最後に
3Dは単なるプレゼンツールではない事が、本コラムからお分かりいただけたと思います。私にとって3Dは思考を加速させる拡張装置でもあります。
その結果、お客様からお引渡し時に「イメージ通り。満足です。」という言葉をいただき、確かな手応えを感じます。
お客様が新しい生活を喜びと共にスタートされる。これこそがデザイナーとしての最大の報酬だと感じています。
筆者紹介
一級建築士、インテリアデザイナー
佐藤のりこ
PhD株式会社
英国インテリアデザイン協会正会員
中部インテリアコーディネーター協会 初代会長
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ハウスメーカー・建築士事務所などで、建築とインテリアの業務に従事し、2010年に一級建築士資格取得。2013年ロンドンのThe Interior Design SchoolにてInterior Design Professional Diplomaを取得。2015年~2025年NOCO DESIGN一級建築士事務所を運営し、現在はPhD株式会社所属。
建築を知るインテリアデザイナーとして、「良いデザインは人を幸せにする」という信念のもと、空間が持つ力を最大限に引き出している。







