庭の必要性と庭づくりの進め方―庭づくり【基本編】
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マイホームデザイナープラスをご覧のみなさん、こんにちは。
毎月1回「日本庭女子会~にわとわに~」のメンバーが家の外まわり(外構やお庭)にまつわる情報をお届けする本コラム。今回で第7章となります。
今回はお庭の必要性とお庭づくりを進める順序について、「株式会社スタジオ・クレド」の河合朋代が担当いたします。(プロフィールはこちら)また、弊社が手掛けた外構デザインの施工写真を、本連載のアイキャッチ画像に使用していただきました。
住まいの印象は、建物だけではなく外構や庭によっても大きく変わります。
そうした「暮らしの風景」を感じ取っていただけたらと思います。
なぜ、お庭は必要なのか
「お庭」と聞くと広い敷地の一軒家でしか楽しめないもの、とお思いではないでしょうか。
敷地はなるべく効率的に利用して、機能的な駐車場や駐輪場にした方がいいのでは?
ガーデンで木々やお花を楽しみたいけど、それって贅沢な使い方じゃない…?とお思いの方も多いはず。
お庭は、決して贅沢なもの=無駄なものではありません。
なぜならお庭は“暮らしに余白をつくる”ことができる、唯一無二の大切な場所だからです。長い目で見れば、お庭のある住空間は人の健康寿命にも影響します。
家が雨風をしのぎ、安心して暮らすための「機能」を守る場所だとすれば、庭は、そこで生きる人の「心」を整える場所です。
心に作用するお庭と、安全な生活を守る家とがあることで、快適な住空間が成立します。
朝、カーテンを開けた瞬間に差し込むやわらかな光。
葉を揺らす風の音。
木々の緑に、ふっと目を休める時間。
春の芽吹きや、夏の木陰、秋の色づき、冬の静けさ。
忙しい毎日のなかで、ほんのわずかでも自然とつながる時間があるだけで、人の心は驚くほど穏やかになります。呼吸が深くなり、思考が静まり、「今ここ」に戻ることができるのです。
自然に触れることで、ストレス値が減少することは有名な話ですが、自然豊かな地域に住む高齢者は、メンタルヘルスの状態が良い傾向があります。米ワシントン州立大学の研究では、緑地面積が10%増えると、深刻な心理的苦痛のある高齢者が12%減少したという研究結果もあります。
庭は、外にある空間でありながら、実は家の中の暮らしをも豊かにする存在です。
窓の向こうに広がる風景が変われば、住まいの質も、日常の感じ方も変わっていきます。
そして庭は、家族の思い出が積み重なる場所でもあります。
子どもが走った足跡。
はじめて植えた一本の木。
毎年変わらず咲く花。
何気なく過ごした夕暮れの時間。
それらはやがて、その家だけの「風景」になります。時間が経つほどに価値を増し、記憶とともに深まっていくのが庭なのです。だからこそ私は、庭を「人生の時間を育てる場所」だと考えています。
お庭づくりを進める順序
さて、実際にお庭づくりをはじめるにはどこから着手すればいいのか、整理していきましょう。
私はプランナーの立場から、施主様に理想の庭をとことん語っていただくことにしています。
① 理想の暮らしを描く ― 時間の設計
庭づくりは、「形」をつくることではありません。人生の“時間”を設計することです。
どんな時間を、この庭で過ごしたいのか。
朝の光のなかでコーヒーを飲むひとときでしょうか。
子どもやお孫さんが笑顔で走り回る景色でしょうか。
それとも、静かに季節を感じながら過ごす穏やかな時間でしょうか。
まずは理想の暮らしを描き、その家族にとっての“豊かな時間”を言葉にすることから始めます。
施主様がどのような時間を庭で過ごしたいのか、現在・5年後・10年後の暮らしを想像しながら整理していきましょう。
ここでは予算は度外視で、施主様が思い描く理想の暮らしをできるだけ言語化していくことが大切です。
② 緑のある暮らしの価値を共有する
理想のお庭のイメージが表現できたなら、次は緑をどうするかを考えていきましょう。
メンテナンスが大変だから、植物は少ない方がいい…というご意見もありますが、植物は、庭を華やかにする単なる装飾ではありません。
心を落ち着かせ、四季の変化を教え、
光と影をやわらかくし、風の流れを生み出し、街並みに潤いを与えます。
植物が入ることで、庭は「空間」から「風景」へと変わります。人工物だけでは完成しないのが庭です。
“ともに成長する素材”があるからこそ、時間とともに味わいが増し、本物の庭へと育っていきます。
ここでも、まずはメンテナンスのことはいったん忘れて、施主様の理想とするお庭に緑がどんな風にあるのか、をイメージしてみましょう。
③ 現状の条件と課題を整理する
ここからは少し現実的になり、具体的に課題を整理していきます。
・敷地の方位や周辺環境
・動線や視線の抜け方
・ご予算やメンテナンスへの考え方
・将来の暮らしの変化
理想だけを追えればいいのですが、現実には様々な条件や前提があるのがお庭づくり。
①で書き出した理想のお庭像から、譲れないこと、絶対にかなえたいことを条件と照らし合わせながら、丁寧に受け止め、設計していきます。ここで重要なのは、施主様に我慢や無理をさせないこと、です。
無理のない豊かさこそが、長く愛される庭を生み出します。
④ 庭のコンセプトを定める
理想と諸条件の整理ができたら、次はコンセプトを決めます。
コンセプトはベースとなる「芯」のようなもの。その庭の方向性を決める大切なものです。
コンセプト例
・光と緑がやわらかく包む植物を楽しむ庭
・街並みに溶け込みながら品格をもつ庭
・家族の成長とともに育つ庭
・四季の変化を楽しみながら家族の趣味が楽しめる庭
・たくさんのゲストをお出迎えできる広いファサードがある庭
・プライバシーを守り、お庭でまったりお昼寝のできるクローズドなお庭
などなど…
コンセプトは施主様によって千差万別。デザインの軸となり、年月が経ってもぶれない指針となります。
⑤ デザイン提案 ― 未来を見据える
③で調整した諸条件と理想像を④で決定したコンセプトの上に落とし込んで、プランニングをしていきます。
お庭は、ゲート、フェンス、機能門柱、カーポートなどの躯体物、積石や敷石で使う石材、デッキや枕木で使う木材、レンガやブロック材、高木・中木・低木・下草・花・芝などの植栽、照明から発する光など実に様々な要素で構成されています。
それら一つ一つの要素を単体で考えるのではなく、一つの“風景”として連続性を持たせたつながりを意識して、設計します。
木陰がどこに落ちるのか。
室内から見える風景はどうか。
夜になったとき、どんな表情を見せるのか。
10年後、樹木はどんな姿に育っているのか。
それらを一つの風景として捉えながら、時間とともに育っていく庭を設計していくことが大切です。
植物選定のポイント
植物の選定も、「手入れが楽かどうか」だけではなく、“どんな時間を生み出すか”という視点で決めていきます。コンセプトに則った植栽計画をすることが、根底にあります。
たとえばプライバシーを守りたいのであれば、常緑で比較的背の高いものを選びます。
季節の移ろいを楽しみたい場合は落葉樹を選定しますが、メンテナンスの面は施主様の理想を反映しながら選定していきます。
⑥ 施工、そしてその先へ
お庭は竣工した時がゴールではありません。
住まう人とともに時間を重ね、成長していくのがお庭の本質的な部分です。
植物が育ち、季節が巡り、家族の思い出が重なっていく。
時間とともに深まり、その家庭だけの物語が刻まれていきます。
家族の心の原風景として、お庭は欠かせないものであると思います。
私は、緑とともに施主様の人生の時間をデザインしています。
家族のかたちが時間とともに変化し、必要とされるお庭の姿が変わることもあります。
その時は、また一緒にお庭づくりができるプランナー、伴走者でありたいと日々、思っています。
お庭の必要性と、お庭づくりの順序をご紹介しました。
庭は、空間づくりではなく、未来づくり。10年後、20年後の豊かな風景へとつながっていくと信じています。
筆者紹介
連載『家づくりは“外まわり”で決まる ― 外構から考える住まいづくり』
外構の大切さを理解し、心から安心できる住まいを築いてほしい——そんな思いから始まった「日本庭女子会〜にわとわに〜」のコラム。新築計画に役立つ外構の知識やアイデアを、月1回更新でお届けします。
プロフィール
日本庭女子会〜にわとわに〜
エクステリア・ガーデン業界やそれをとりまく業種に従事する・携わる女性たちが、交流や情報交換を目的とし2017年に活動開始。
「庭や外部空間を美しく快適にすることが、住まいや暮らしを豊かに送るのに不可欠なことであり、ひいては日本の街並や景観・環境を美しく創り保ってゆくのに重要な役割を担っている」
また「住まい手だけでなく造り手・働き手の身になって考え、幅広い知識で美しく機能的な空間を造っているプロフェッショナルな女性たちがいることを知ってほしい」
そんな熱き想いを持った庭女子たちが、所属や経験・年齢を超え様々な切り口の委員会を組織し、日本各地で活動・躍動中。現在メンバー150人超。
https://niwatowani.jp/執筆者
河合 朋代(かわい ともよ)
株式会社スタジオ・クレド 代表取締役
愛知県豊橋市を拠点に、女性ばかり5人の会社で、外構・庭づくりのデザイン・施工を手掛けています。
デザインを通して住まいと外構や庭が美しく調和する空間つくりを大切にしています。
ご家族の暮らしに寄り添い、心地良い時間が流れる空間をご提案しています。
・庭女子会【にわとわに】プロフェッショナル会員
・エクステリアコンテスト受賞歴多数
弊社ホームページにて沢山の施工例を掲載しています。
https://www.cledo.jp







