【第2回】音の専門家の雑談「騒音ってどんな音?(子どもの声は騒音か)」~コミュニティノイズは相互への配慮が重要~

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住宅地や集合住宅で、トラブルになりがちな騒音問題。
音の専門家はこの問題をどう捉えているのでしょうか。音に特化したサービスを提供する株式会社Sound Oneの石田康二さん、楠美貴大さんが「騒音ってどんな音?(子どもの声は騒音か)」をテーマに、音と地域コミュニティの関係について掘り下げます。
 
当記事は、株式会社Sound Oneが配信するポッドキャスト『音の専門家の雑談』から抜粋、編集しています。全文は、ポッドキャストで軽快なトークとともにお楽しみください。
 音の専門家の雑談 Presented by Sound One #93【騒音ってどんな音?(子供の声は騒音か)】

人物紹介

株式会社Sound One 取締役 石田康二
40数年間「音」を探求しています。研究、ビジネス、趣味の対象でもあり、人生の大半、音のこと考え、関わってきました。今は、GoogleやAIで、誰でもすぐに正解に辿りつける時代。
「知ること」より「感じる」こと、「はかること」より「はかないこと」を大切にしたいと思う今日この頃です。

石田
石田

株式会社Sound One セールスマーケティング チームリーダー 楠美貴大
音の回路設計やマイクの企画、開発、商品化設計に携わり、現在は、Sound OneサービスのセールスマーケティングやPodcastコンテンツの運営を担う。
好きなもの:歌、歴史(特に戦国時代)、パグ
好きな瞬間:考え方や概念が繋がって、自分の世界観が拡がるとき
人生のテーマ:「あらゆるシーンにユーモアを」

楠美
楠美

※前回(第1回)「うるささ、やかましさ、音の大きさ」はこちら>>

コミュニティノイズは相互への配慮が重要

楠美
楠美

「人によって騒音と感じるかはバラバラ」という結果は理解したんですけど、そこから先どういうアプローチをとっているのかっていうのがすごく気になります。

例えば、とても大きい音を出す建設用の重機から、建設工事騒音みたいなものが大きくなりすぎるとそれは誰にとっても迷惑じゃないですか。
だから、「騒音規制法」と「環境基準」っていうのがあるんですね。
「騒音規制法」というのは、音を出す側を規制してるんです。

石田
石田
楠美
楠美

なるほど。

例えば、車は単体規制があって。
規格に則った走行で、あるポジションで車外騒音を測って、規制値を超えると、その車はマーケットに出せなくなる。
だから自動車メーカーさんは一生懸命その走行音を低減するための策を打っているわけです。

石田
石田
楠美
楠美

車を作る側が配慮しているんですね。

規制法というのは車だけではなくて、建設工事や交通機関の音を出す機械に対して規制をかけてるわけです。「これ以上、音を出してはダメよ」と。
法律なので、これを守らなきゃいけないわけです。
一方で、騒音っていうのは音が出て、それを受け取るまでに間に空気中の伝搬がありますね。音源からの放射をエミッション、その音が受音点まで伝搬することをプロパゲーション、そして、エミッションに対して音を受け取る側はアイミッションといわれます。

臭気、匂いだとかもエミッションとアイミッションで定義されたりするんです。

石田
石田
楠美
楠美

へぇ〜。音を出す側と受け取る側、ですか。

アイミッション側は、例えば高速道路から距離のあるところの住宅とか、遮音性の高い住宅に住んでると当然アイミッションは下がります。

だからアイミッションってなかなか規定するのが難しいので、ガイドラインでこれ以下のレベルが望ましいっていうのが決められてる、それが環境基準なんです。

アイミッション側は環境基準で、望ましさを定義しているガイドライン
エミッション側は規制法で音を出す側を縛ってる法律、こういう図式なんです。

石田
石田
楠美
楠美

Sound Oneに携わってきて、今ならその意味が理解できるんですけど、以前はうるさいとか静かっていうのは、物理的な大きさ小ささとしての捉え方になっていたような気もします。

なるんですよ。僕も、“静かな環境”みたいに言うんだけども、例えば住宅地の夜間や病院とかは40dB以下にしなさいっていうのは、これは“静か”かどうかっていうのはわからないよね。

石田
石田
楠美
楠美

確かに。

人が静かと感じているか、うるさいと感じているか、感覚として受け取っているわけなので。

石田
石田
楠美
楠美

だとすると、音のレベルだけで規定しても、ちょっと足りない部分が出てきちゃうんじゃないかなって思っちゃうんですけど。

うん、足りないんです。
足りないけど、他に方法がないんだよね。

石田
石田
楠美
楠美

そうですよね。一人一人の受け取り方次第って言われても。

難しいよね。
そもそも共有できないから、そういう結論になってしまっている。
騒音問題ってなかなか解決が難しいのは、例えば「うるさい」って声を上げて自治体の騒音課みたいなところにクレームを出す人。これも、その人がひょっとしたら心理的にすごく騒音にナイーブで感覚過敏な人かもしれない。

石田
石田
楠美
楠美

そういう人もいそうですね。

クレームも、いろいろな種類があるわけで。
どういう心理状態でその苦情を自治体に情報としてあげてきているのかっていうのをちゃんと聞かないと、一刀両断に紋切り型で「それは騒音じゃないでしょう」とは言えないわけだよ。

石田
石田
楠美
楠美

どういう心理状態でっていうのを明らかにするのって難しいですね。
例えば、電話してきた人のテンションとか声色とかで判断するんでしょうか。

いや、それは非常に難しいと思いますね。
しかも苦情を受けるっていうのは、受ける側もストレスだよね。

石田
石田
楠美
楠美

確かに。判断する人の受け取り方で、変なフィルターがかかっちゃう可能性もありますし。

本当に、心理的な苦痛でやむを得ず自治体に苦情を電話してきたりする人もいれば、そうではなくて、受忍限度の範囲内だと思えるようなことでも、自治体に苦情として寄せられる案件ってたくさんあるわけだよね。

石田
石田
楠美
楠美

うん、なるほど。

でも一つ一つをちゃんと聞いて対応を取らなきゃいけない。
無視することができないわけですよ。

石田
石田
楠美
楠美

それってめちゃくちゃ大変ですし、騒音問題が収束していくのをイメージしづらいですね。
どうすれば納得してもらえるだろう?って。

コミュニティノイズの大きな原因っていうのは、人間関係だけではなくて。騒音に曝露されてる側の心情を、騒音を与える側の人があまり斟酌しないで、「これぐらい当たり前でしょう?」みたいな態度を最初の接点で取ることによって、本来和解できるような問題も、泥沼にはまるみたいなケースってあるんですよ。
お互いが成熟してないと自分よがりになっちゃうというか。

石田
石田
楠美
楠美

そういうケースで問題が解決する方向に行かないことっていうのは多いですよね。

第3回は、「子どもの声」をめぐる騒音問題について、集合住宅や地域社会でのトラブルの複雑さを話します。お楽しみに。(1月14日(火)更新予定)

プロフィール

株式会社 Sound One

音・振動分野の電子計測機器や試験機の開発を行う株式会社小野測器のグループ会社。
音を聴いた印象を評価するWebアンケートサービス「Sound One」の開発、運営を行っています。

Sound One 公式サイト
https://soundone.jp/
 
【異音の問題をスピーディに解決】音のWebアプリケーション
https://sound-one.net/lp/abnormal-noise/

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