理想の外構計画の進め方

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理想の外構計画の進め方

マイホームデザイナープラスをご覧のみなさん、毎月1回「日本庭女子会~にわとわに~」のメンバーが家の外まわり(外構やお庭)にまつわる情報をお届けするコラムも4回目。
今回は「空間とライフスタイルの観点からまちなみをデザインする」ランドスケープアーキテクト・山本結子が担当させていただきます。(プロフィールはこちら

これまで、家づくりと外構の基本から土地選びなどをご説明しました。それでは、今回のテーマ「外構計画の進め方」 についてみていきましょう。

理想の外構計画とは

住まいを検討する際、家(建築)を優先するあまり、外構が後回しになることがよくあります。
第1章・3章でも触れましたが、プランや予算に大きく影響する要素は多く、その中でも特に重要な3つの要素に着目してご説明します。

1.What:[内容]必要な計画・機能

どのようなプランにするのか。
例えば「車庫2台、自転車3台、おしゃれな門袖・門扉と宅配ボックスが欲しい。シンボルツリーを植えて、お庭にはデッキかテラスをつくりたい」という要望があったとします。

しかし、これらの要素を盛り込む前に必要なのは、何よりも機能性・安全性です。
最低でも、以下の3点を押さえておきましょう。

希望台数のが無理なく駐車できること。駐車に支障のない勾配・間口を確保する。
玄関までスムーズにアクセスできること。段差や階段、アプローチの有効開口を確保する。
隣地境界・建物まわりの高低差を適切に解消すること。

これらは、敷地が限られていたり高低差がある場合、建築と外構を同時に計画することで解決できるケースが数多くあります。

外構計画だけでは対応できない場合、宅盤設定敷地の基準となる地盤高さ(GL)を決めること。の変更、玄関ポーチ形状の変更、土留めの位置や高さ、深基礎通常より基礎を深くして、高低差や土の崩れを抑えるための構造。の検討、平均GL敷地の地盤高さの平均値。外構や建築の高さ基準になるレベル。の設定、門袖を道路沿いに立てても問題がないかどうか?――など、建築設計とのやりとりが発生する場面があります。上記の3点を下記の参考図に当てはめて見ていきましょう。

外構計画の図面

① 車2台が無理なく駐車できるかどうか?
建物の配置や形状によって車庫の取り方は大きく左右されます。参考図では、切り返しのスペースを考慮し、日常的に使いやすいように車2台をL字に配置する想定。

② 玄関までスムーズにアクセスできるかどうか?
建築図に階段がGLまでしか明記されていないケースもあります。その場合、下図のブルーの1段は外構で追加することになり、建築側のポーチ・階段や車庫・アプローチの仕上がりによって蹴上が異なるため、階段レベルの調整が必要になるので注意が必要です。

③ 隣地境界・建物まわりの高低差を適切に解消できているか?
北・東・南の3方にある隣地境界ブロックを、敷地のどちら側に積むか、また必要な高さはどの程度かを検討します。
特に北側など狭く、隣地と高低差がある場合、建築着工前にブロック工事を施工したほうが建築の足場や工事中の土が隣地に流出する心配がなくなります。建物際の土留めも予算、計画などが事前に想定され、構造にも注意が必要です。

以上の機能面がクリアになって、はじめてプラン・デザインの領域に進むことができると考えます。

2.How:[どのように]過程・手段

どのように進めていくのか。
建築設計の段階で、ある程度想定して外構計画が進むケース、建築が確定したあとに外構計画の依頼をいただくケースなど、進め方はさまざまです。いずれの場合も、計画や予算の調整が後から大変にならないよう、建築計画の初期段階から早めの相談をおすすめします。

下記の写真は、着工前の敷地と外構工事が完成した後の様子です。
計画を進めるにあたっては、事前準備として正確な敷地調査が極めて重要になってきます。

高低差がある土地の外構

外構計画をスムーズに進めるための理想的なステップ

第1段階 ― 計画段階のチェックと予算取り

建築計画や造成工事、解体工事に伴い、外構計画もスタートします。
宅盤設定、隣地境界や越境物の有無、車庫位置がおおよそ決められているかなどを確認します。
古い塀や危険な境界塀がある場合は、事前に解体し、新たに塀を新設する計画も必要です。

第2段階 ― 確認申請のチェックとプラン

確認申請図に記載する内容との整合性をチェックします。
塀の高さや土留めなど、構造的に問題がないかどうか、建築設計と外構設計の間でやりとりが必要になります。深基礎にするか、土留めで対応するかなど、建築側での判断が求められる部分もあります。

第3段階 ― プラン確定と予算把握

建築の外装や外構とのカラーコーディネートを整え、デザインや仕様を確定していきます。
この頃、建築工事はすでに進行しているため、インフラ(電気・ガス・水道)の位置調整が必要になることが多いです。
この段階で起こりやすい注意点としては、門袖や階段に設備マスが干渉する、水道メーターが車庫のタイヤにかかる位置にあり検針が困難になるなどがあり、建築側に外構の情報がタイムリーに伝わらないことも少なくありません。

3.How much:[コスト]予算の優先順位

外構予算は、敷地の広さや高低差、敷地境界の状況や条件、さらに盛り込む内容によって大きく変わるため、一概に「1棟○○万円」「坪単価○○万円」といった形で簡単に算定しにくいものです。当然予算もあるでしょう。
本来であれば、2.How の3段階で示したように、

「計画段階での予算取り」
  ↓
「確認申請図ができて具体的なプラン作成」
  ↓
「正確な積算」
  ↓
「仕様確定による最終予算決定」

という流れでプランと予算をチェックできるのが理想です。
しかし、時間がないなどの理由で、なかなか理想どおりには進まないことも多いものです。
そこで、意外に見落としがちな “予算に影響するポイント” をいくつかピックアップしてみましょう。

① 隣地境界を既存のものを利用しようとしていたが、万年塀や古い塀だったため、解体と新設で多大な費用がかかった。

② 階段が追加になり、建築側・外構側のどちらでも想定されていなかった。

残土掘削して出た不要な土。が想定より多く発生した(建築・外構で土工事をどの程度の費用で見ているかの差)。

④ 水道メーターやガスメーターの移設に費用がかかった(建築工事側の負担)。

⑤ 道路境界のL型切下げ車が出入りできるように、歩道の縁石を下げる工事。U字溝道路脇などにある“U字型の排水溝”。など、自費工事が必要になるが予算に入っていなかった。

⑥ 奥にあるタイルテラスを後工事で行う場合、道路から遠く、ポンプ車や小運搬現場で材料や土を近距離だけ手運び・機械で運ぶ作業。が必要となり余計な費用がかかった(建築工事時に一緒に行うほうが安価なことが多い)。

繰り返しになりますが、いずれの場合も現場状況と図面・見積に差異が生じないようにするため、現場調査は非常に重要です。

そして、予算には優先順位をつけることが大切です。
機能と安全性に関わる部分は、当然ながら最優先で確保すべき経費ということを覚えておいてください。

外構の現地調査

まとめ

What:必要な計画・機能―更地・白紙の段階で完成形を想定する

How:それぞれのタイミングでプラン・予算を検討

How much:予算の優先順位をつけるー機能・安全が最優先

機能性や予算を早い段階で想定する――と、難しいことを書きましたが、実際には、当初の予算をはるかに超えても「素敵な提案」や「コストメリットに見合う魅力的なデザイン」があれば、クライアントを納得させる力が建築にも外構にもあると思っています。

そして、建築と外構の設計から工事までを安心して相談・提案し合えるパートナーシップがあれば、あらゆるリスク回避ができるだけでなく、より良い提案を実現できるはずです。

筆者紹介

連載『家づくりは“外まわり”で決まる ― 外構から考える住まいづくり』

外構の大切さを理解し、心から安心できる住まいを築いてほしい——そんな思いから始まった「日本庭女子会〜にわとわに〜」のコラム。新築計画に役立つ外構の知識やアイデアを、月1回更新でお届けします。

プロフィール

日本庭女子会〜にわとわに〜

エクステリア・ガーデン業界やそれをとりまく業種に従事する・携わる女性たちが、交流や情報交換を目的とし2017年に活動開始。

「庭や外部空間を美しく快適にすることが、住まいや暮らしを豊かに送るのに不可欠なことであり、ひいては日本の街並や景観・環境を美しく創り保ってゆくのに重要な役割を担っている」
また「住まい手だけでなく造り手・働き手の身になって考え、幅広い知識で美しく機能的な空間を造っているプロフェッショナルな女性たちがいることを知ってほしい」

そんな熱き想いを持った庭女子たちが、所属や経験・年齢を超え様々な切り口の委員会を組織し、日本各地で活動・躍動中。現在メンバー150人超。

https://niwatowani.jp/

執筆者

ランドスケープアーキテクト・山本結子氏

ランドスケープアーキテクト 山本結子

大学卒業後、環境造形・パブリックアートのデザイナーを経てエクステリア業界へ。主に集合住宅、分譲住宅、まちなみ企画から空間デザイン・設計管理まで行っている。メーカーの商品開発、セミナー、コンテスト審査員などもつとめる。

・一般社団法人日本エクステリア設計協会 理事
・日本庭女子会にわとわに プロフェッショナルメンバー
・E&Gアカデミー講師

https://niwatowani.jp/?catid=12&itemid=116

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