カフェの照明計画 第2章 自動調光で空間デザインの質を上げる最適な方法(後編)

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カフェの照明計画 ―インテリアデザインにおける照明の効果と役割―

第2章 自動調光で空間デザインの質を上げる最適な方法(後編)

前編はこちら

音と照明の連動と回転率

意外に見落とされがちなのが、BGMと照明の連動です。実は、音と光は密接に関係しており、両者を戦略的に組み合わせることで、客の滞在時間を巧みにコントロールできます。
心理学の研究では、明るい照明とアップテンポのBGMは「活動モード」を促し、暗めの照明とスローテンポのBGMは「リラックスモード」を誘うことがわかっています。

ランチタイムの高回転型店舗では、明るい照明(700ルクス以上)とテンポ120~130BPM程度のBGMを組み合わせることで、自然と食事のペースが上がり、滞在時間が短縮されます。これは決して客を追い出すのではなく、「心地よい活気」を演出する手法です。
一方、ディナータイムやカフェタイムでは、照明を落とし(300~400ルクス)、ゆったりとしたBGM(80~100BPM程度)を流すことで、リラックスした滞在を促します。結果として、追加注文が増え、客単価の向上につながるのです。

某大手チェーンは、この音と光の連動を巧みに活用していることで知られています。時間帯ごとに照明の明るさと色温度、そしてBGMの選曲を変えることで、朝は活気を、午後は落ち着きを、夜は寛ぎを演出しています。

自動調光システムには音響制御と連動できるものもあり、そういったシステムを導入することで、小規模なカフェでも高度な空間演出が実現可能になります。 

BPM(Beats Per Minute)とは♪

音楽のテンポを表す指標で、1分間に何拍刻まれるかを数値で示したものです。
数値が小さいほどゆったりとしたテンポになり、
大きいほど速く、躍動感のある印象になります。
たとえば、バラードは60〜80BPM前後、ポップスは90〜120BPM、
クラブミュージックやダンス系楽曲では130BPM以上が一般的です。
BPMは楽曲の雰囲気や聴き手の心理にも影響し、
落ち着きや集中を促したい空間では低め、
活気や高揚感を演出したい場面では高めのテンポが効果的とされています。
近年では、店舗やオフィス、イベント空間のBGM選定においても、
BPMが空間演出の一要素として注目されています。

空間デザインの質を上げる調光パターン

自動調光の真価は、単に明るさを変えるだけでなく、「空間の質」そのものを変える点にあります。

色温度の変化で演出する雰囲気

色温度(ケルビン値)の変化は、空間の印象を大きく左右します。

高色温度(4000ケルビン以上)は、クールで清潔感のある印象を与え、集中力を高める効果があります。
一方、低色温度(3000ケルビン以下)は、温かみがあり、リラックスを促します。

たとえば、モーニングタイムに3500ケルビンでスタートし、ランチタイムに4000ケルビンでピークを迎え、夕方以降は徐々に2700ケルビンまで下げていく──この緩やかなグラデーションが、一日の中で自然な時間の流れを演出します。

色温度のイメージ

照度調整で生まれる空間の奥行き

照度の変化は、空間の「奥行き」や「メリハリ」をつくり出します。
すべてを均一に明るくするのではなく、意図的に明暗の差をつけることで、空間に立体感が生まれるのです。

たとえば、客席全体の照度を300ルクスに抑えつつ、テーブル面だけを500~700ルクスに保つ。この「手元の明るさ」と「周囲の落ち着き」のコントラストが、居心地の良さを生み出します。
ここに演色性の効果を付加するとさらに良いテーブル照明が完成します。

ひとり席はスポットで手元を明るく、テーブル席ではテーブル面だけでなく一緒にいる人の表情がわかるよう全体を明るくするなど、照明の明るさと範囲も検討が必要です。

具体的な数値

カフェの照明計画では、自動調光を取り入れ「シーン」を作ることを意識します。
シーンに直結するのが回路設計です。ここが決まれば具体的な数値を考える必要はありません。店の雰囲気に合わせて色温度と照度を決めると良いでしょう。

自動調光導入時の注意点と3Dシミュレーションの活用

自動調光を導入する際、最も重要なのは「事前検証」です。
照明器具のカタログスペックだけでは、実際の空間でどう見えるかはわかりません。
調光対応のLED器具を選ぶ際は、調光範囲(何%まで暗くできるか)と、調光時の色温度変化(暗くすると色温度が下がる器具もある)を確認しましょう。また、調光器との互換性も重要です。

ここで威力を発揮するのが、3Dシミュレーションソフトです。
照明計画のイメージを3D空間上で再現し、時間帯ごとの照度分布や色温度の変化を視覚的に提案できます。クライアントへのプレゼンテーションでも、静止画だけでなく、時間経過による照明変化を動画で見せることで、提案の説得力が格段に高まります。
器具の配置、照射角度、照度分布──実際に施工する前に、何度でも試行錯誤できるのが3Dシミュレーションの強みです。

実例に学ぶ自動調光の効果

実際に自動調光を効果的に活用しているカフェがあります。皆さんもご利用になったことがあるカフェチェーンです。
同社の店舗では、時間帯ごとに照明の明るさと色温度が変化し、朝は爽やかで活気のある空間、夜は落ち着いた大人の空間へと変貌します。
特に注目すべきは、窓際席と奥席で異なる照明戦略をとっている点。窓際は自然光を活かし、奥席はペンダント照明や間接照明で温かみを演出する。全体としての統一感を保ちながら、エリアごとに最適な光環境を提供しているのです。
同社に限らず他社も同様に時間帯による照明調整を行っており、「サードプレイス」としての居心地の良さを追求しています。
こうした大手チェーンの手法は、地域密着型の個人カフェでも応用可能です。自動調光システムの導入コストは年々下がっており、中小規模の店舗でも十分に導入できる選択肢となっています。

窓際は自然光を活かし、奥席はペンダント照明や間接照明で温かみを演出

まとめ

自動調光は、単なる省エネ機能ではありません。時間帯ごとの客層に合わせた空間演出、回転率と客単価のコントロール、音響との連動による心理的効果──これらを実現する戦略的な重要なツールです。
3Dシミュレーションで事前に検証し、最適な照明計画を立てる。そして、自動調光システムでそれを確実に運用する。この組み合わせが、カフェの空間デザインの質を大きく引き上げるのです。
次章では、具体的な照明器具の選定と配置について、3Dシミュレーションを活用した検証方法を詳しく解説します。

自動調光システムは、”シーンコントローラースイッチ”や”メモリーライトコントローラー”などの名称で各照明器具メーカーから販売されています。ぜひチェックしてみてください。

執筆者紹介

三原 慎一

株式会社 灯り計画(https://design-akari.com/) 代表取締役
北海道出身
土屋ホーム、遠藤照明、パルコスペースシステムズを経て、2014年10月に独立
一般社団法人 照明学会 認定照明士
一般社団法人 日本商業施設士会 認定商業施設士
一般社団法人 日本商環境デザイン協会 正会員
一般社団法人 日本インテリアプランナー協会 一般会員

照明計画、照明設計、プロダクト、協会活動、住宅、商業、エクステリア、スキー場、竹灯り…そして、マーケティング。いろいろなモノといろいろなコトを掛け合わせながら、商環境の照明ノウハウを住環境に移植する照明プランナーとして活動。最近は子どもたちに「デザインの楽しさ」を伝える「JCD soda(子どもたちと創るデザイン)活動(https://www.jcd.or.jp/jp/soda/)」にも参加しています。
本連載を通して、読者の皆様に灯りの大切さ、灯りの持つ力を知っていただき、「灯りを計画する」という武器を手にしていただければと考えています。

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