カフェの照明計画 第2章 自動調光で空間デザインの質を上げる最適な方法(前編)

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カフェの照明計画 ―インテリアデザインにおける照明の効果と役割―

第2章 自動調光で空間デザインの質を上げる最適な方法(前編)

自動調光とは何か──基本的な仕組み

カフェは、立地やサービス、内装デザインによって客の店を選ぶ基準が変わります。さらにカフェスペースは、時間帯や業態によって客の目的が大きく異なります。そういう空間であるカフェにこそ、私は、「自動調光」をオススメしたいと考えています。
 
では、自動調光が何故必要なのか──。
カフェで時間帯別に照明の明るさを変えることは良くあります。しかし、運営上スタッフが毎日忘れずに手動でコントロールするのはなかなかできるものではありません。
LED照明の進化に伴い、調光・調色が簡単にできるようになった昨今では、内装デザインと照明を絡めた空間を構成することも増え、照明設計において回路設計は重要な役割を担います。
回路ごとに時間によって照度や色温度を変える。回路数が多くなればなるほどシーン設定が必要になります。
これを解決する手法として私が提案したいのが自動調光システムです。
 

自動調光とは、時間帯や環境条件に応じて、照明の明るさや色温度を自動的に変化させる機能です。
住宅では生活リズムに合わせた快適性向上が目的ですが、カフェなどの店舗では「売上」「客単価」「回転率」に直結する戦略的な営業ツールとなるからです。
 

自動調光の制御方法

自動調光の主な制御方式は3つあります。

時刻制御:
あらかじめ設定したスケジュール(時刻)に従って照明を変化させます。
モーニングタイムは明るく爽やかに、ディナータイムは落ち着いた雰囲気に──といった演出が可能です。
 
照度センサー制御:
自然光に応じて、自動で照明を入り切りします。
”EEスイッチ”の名称で扱われています。主に外回りやサインなど夜間に点灯したい回路に使います。
 
人感センサー制御:
人の有無を検知して照明をオン・オフします。
トイレやバックヤードなど、スタッフの作業効率と省エネを両立させます。
 
カフェでは、スタッフが時間毎に手動で明るさを変えることはなかなか出来ないため、時刻制御が一番重宝します。

【参考】飲食店・エリアごとの明るさの目安(JIS規格より抜粋)

カフェの業態による店舗運営方針の違い

カフェの照明計画を考える上で、まず理解すべきは「業態による運営方針の違い」です。
 
一口にカフェといっても、低単価・高回転型と、高単価・低回転型では、求められる照明環境がまったく異なります。
低単価・高回転型の店舗では、回転率を上げることが収益の鍵。
そのため、照明は明るめ(500~700ルクス程度)で、色温度も高め(3000~3500ケルビン)に設定されます。明るく活気のある空間は、長居を促さず、次の客への入れ替わりをスムーズにする効果があります。
 
一方、高単価・低回転型の店舗では、滞在時間を延ばし、客単価を上げることが重要。
照明は控えめ(200~400ルクス程度)で、色温度も低め(2700~3000ケルビン)に。落ち着いた雰囲気の中で、コーヒー一杯にプラスして軽食やデザートを注文してもらう──そんな空間づくりが求められます。
 
自動調光は、この運営方針を時間帯ごとに柔軟に切り替える武器となります。

低単価・高回転型カフェのイメージ

高単価・低回転型カフェのイメージ

時間帯による客層の違い

カフェの客層は、時間帯によって大きく変化します。そして、それぞれの客層が求める空間も異なるのです。
 
🕖モーニングタイム(7:00~10:00)
出勤前のビジネスパーソンや朝活利用者が中心。
外光と合わせ、全体照明と、やや高めの色温度(4000ケルビン)が効果的です。爽やかで活動的な雰囲気が、一日の始まりにふさわしい空間を演出します。
 
🕛ランチタイム(11:30~14:00)
最も回転率が求められる時間帯。
明るく活気のある照明(800~1000ルクス、4000ケルビン)で、食事を美味しく見せながら、適度な賑わい感を演出します。滞在時間は短めに抑えつつ、満足度は高く──そのバランスが重要です。
 
🕒カフェタイム(14:00~17:00)
客層が多様化する時間帯。読書や勉強をする学生、打ち合わせをするビジネスパーソン、ゆっくりとお茶を楽しむシニア層。
照明はやや落ち着いた明るさ(400~500ルクス、3000ケルビン)に調整し、多様な過ごし方を許容する空間をつくります。
 
🕖ディナータイム(17:00~21:00)
仕事帰りのリラックスタイムや、友人との語らいの場。
照明は最も抑えめ(200~400ルクス、2700ケルビン)にし、落ち着いた雰囲気を演出します。アルコールメニューやデザートの注文を促すには、この「心地よい暗さ」が効果的です。
 
自動調光を活用すれば、これらの切り替えをスタッフの手を煩わせることなく、最適なタイミングで実現できます。

▲時間帯による客層の違いと店内の明るさ

後編では、音と照明の連動による回転率のコントロール、具体的な調光パターンの設計手法、そして3Dシミュレーションを活用した導入検証について解説します。    後編へ>

執筆者紹介

三原 慎一

株式会社 灯り計画(https://design-akari.com/) 代表取締役
北海道出身
土屋ホーム、遠藤照明、パルコスペースシステムズを経て、2014年10月に独立
一般社団法人 照明学会 認定照明士
一般社団法人 日本商業施設士会 認定商業施設士
一般社団法人 日本商環境デザイン協会 正会員
一般社団法人 日本インテリアプランナー協会 一般会員

照明計画、照明設計、プロダクト、協会活動、住宅、商業、エクステリア、スキー場、竹灯り…そして、マーケティング。いろいろなモノといろいろなコトを掛け合わせながら、商環境の照明ノウハウを住環境に移植する照明プランナーとして活動。最近は子どもたちに「デザインの楽しさ」を伝える「JCD soda(子どもたちと創るデザイン)活動(https://www.jcd.or.jp/jp/soda/)」にも参加しています。
本連載を通して、読者の皆様に灯りの大切さ、灯りの持つ力を知っていただき、「灯りを計画する」という武器を手にしていただければと考えています。

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