人生100年時代の住環境を整える [1]

  • 取材

目次

[1]100歳住宅🄬とは?
[2]20年後を見据えて少しずつがポイント
[3]将来のためにインテリアをどうするかも考えてほしい

「人生100年時代」。厚生労働省もそれに向けた会議を立ち上げるなど、日本の高齢化は進んでいます。
20年前、福祉住環境コーディネーターの資格を取ったことをきっかけに高齢者の住まいとインテリアについての研究を始められた松本佳津氏に、ご自身が提唱する「100歳住宅🄬」について伺いました。

松本佳津 氏:
インテリアコーディネーター&デザイナー/愛知淑徳大学・教授/株式会社マツドットコムアイエヌジー
【関連】3Dアーキデザイナー導入事例記事もぜひご一緒にご覧ください。
 「変更ありきでスピード勝負。完成形からはじめるインテリア提案に3Dデザイナーシリーズは最適

100歳住宅🄬とは?

ずばり、100歳住宅とは?        

松本さん:
「100歳住宅」は100年住める家ではなく、「100歳になっても自分らしく安心して暮らせる家」という意味です。「100」という数字は観念的な数字です。
 
日本ではある程度の歳になると施設に入るという考えが強くあります。
日本の住宅はバリアフリーではないし、自分もどうなるかわらないし、家族に迷惑はかけられないしで、いずれは専門の人がいる専用の施設に入った方がいいんだろうな、と多くの方が思っているようです。
ところが調査してみると高齢者の8割の方はずっと自宅で暮らしていたいと思ってらっしゃるんです。これは、内閣府の資料でも同様でした。
*内閣府・高齢者白書/平成27年版高齢者社会白書(全体版)/6 高齢者の生活環境 より
 
でも自分の家にいたいという方が多いのだとしたら、自宅で豊かに過ごす方法を考えないといけないと思って。
そうしたら、インテリアにできることがたくさんあるんじゃないかと思ったのが始まりです。

確かに、室内のことがほとんどなので、インテリアの分野ですね。
そのお考えに至るまでの経緯を知りたいです。

松本さん:
きっかけは「福祉住環境コーディネーター検定試験*」です。高齢化が取り上げられ始めた20年くらい前に始まった試験で、私も受験しました。

*福祉住環境コーディネーター検定試験
福祉住環境コーディネーターは、高齢者や障がい者に対して住みやすい住環境を提案するアドバイザー。検定試験は東京商工会議所が実施しており、2級と3級がある。

 
ですが、テキストにはなんとも仰々しいことばかりが書かれてあったんですね。
天井に吊り金具をつけて引っ張って移動するとか、こんなの普通の住宅でできるやろうか?と疑問を持ったのがそもそものきっかけで、
同時に「介護が必要な方のための住環境をこれからちゃんと考えて行かないといけないなぁ」と思ったんです。

「天井に吊り金具をつけて引っ張って移動する」のイメージ

松本さん:
それで、いろんな人に話を聞いてみたいと思い異業種の方「在宅介護研究会」を立ち上げました。
ところが、介護とつくだけで、施設の話になったり、介護状態になったときの対応策だったりの話になってしまうわけです。
でも、介護状態に至るまでの時間があるじゃないですか。もちろん事故や病気で急にってこともありますが、
高齢化は徐々に進むわけで、その過程の時間が抜けているなと感じました。

そうしていたら「介護予防」という言葉に出会ったのです。

医療系がみんな予防にシフトし始めていたころでした。定期検診を推奨する予防歯科もその一つですね。
それを聞いたときに、介護されないようにするための家づくりがいいと思って、「介護予防研究会」と名前を変えました。

介護状態にならないようにする方法を考えるということですね。

松本さん:
はい。歳を取るということは、とても個人差があり少しずつ衰えていくんですよ、良くて現状維持なんです。

介護業界の人たち大勢とコンタクトをとってきましたが、彼らは打つ手がなかなか見つからなくて、疲弊していくばっかりで、それを食い止める何か決定打のようなものを建築に求めていたんだと思います。
でも、介護されることを前提で考えるのもなんか違うなと思っていて、介護されないようにするためのことを考えたいと思いました。

そんな中で論文をお書きになったんですね。

松本さん:
論文では、実態調査のために50軒のお宅をシータ(360度カメラ)で撮影させていただきました。
ご家庭やその方のご事情も様々だし、事例を追いかけると時間もかかってしまいます。
いろいろな観点があるとは思いますが、その方のお体の状態は考えないで、シンプルに物と物との関係性を拾いだすようにしました。

*松本氏の査読付論文、博士論文をご覧になりたい方は下記リンクよりダウンロードしてください。
日本インテリア学会 査読付き論文>
住宅の居場所の床に置かれたモノから高齢者のためのインテリアの活用の研究
居場所のモノから高齢者のためのインテリア活用の可能性の考察
<博士論文>
高齢世代の居場所のモノからみる長寿社会のインテリアの活用の可能性」(名古屋工業大学学術機関リポジトリ)

360度カメラで撮影した室内。(個人宅のためイラスト風に編集済み)

――「100歳住宅」の考え方は、高齢者だけじゃなく、”今まで暮らしてきた空間が暮らしづらくなってきた人たち”のためともとらえることができそうですね。

松本さん:
そうなの。パーソナルなユニバーサルデザインみたいな考え方ですね。

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