【第1回】音の専門家の雑談「騒音ってどんな音?(子どもの声は騒音か)」~うるささ、やかましさ、音の大きさ~
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住宅地や集合住宅で、トラブルになりがちな騒音問題。
音の専門家はこの問題をどう捉えているのでしょうか。音に特化したサービスを提供する株式会社Sound Oneの石田康二さん、楠美貴大さんが「騒音ってどんな音?(子どもの声は騒音か)」をテーマに、音と地域コミュニティの関係について掘り下げます。
当記事は、株式会社Sound Oneが配信するポッドキャスト『音の専門家の雑談』から抜粋、編集しています。全文は、ポッドキャストで軽快なトークとともにお楽しみください。
音の専門家の雑談 Presented by Sound One #92【騒音ってどんな音?(子供の声は騒音か)】
人物紹介
株式会社Sound One 取締役 石田康二
40数年間「音」を探求しています。研究、ビジネス、趣味の対象でもあり、人生の大半、音のことを考え、関わってきました。今は、GoogleやAIで、誰でもすぐに正解に辿りつける時代。
「知ること」より「感じる」こと、「はかること」より「はかないこと」を大切にしたいと思う今日この頃です。
株式会社Sound One セールスマーケティング チームリーダー 楠美貴大
音の回路設計やマイクの企画、開発、商品化設計に携わり、現在は、Sound OneサービスのセールスマーケティングやPodcastコンテンツの運営を担う。
好きなもの:歌、歴史(特に戦国時代)、パグ
好きな瞬間:考え方や概念が繋がって、自分の世界観が拡がるとき
人生のテーマ:「あらゆるシーンにユーモアを」
うるささ、やかましさ、音の大きさ
この間、マンションの管理組合から通知が来ていて。
「深夜にボールをつく音が聞こえるので気をつけてください」っていうクレームがあったんですよね。こういうクレームもあるんだなぁと思って。
実際に市のホームページを見てみると、生活騒音の種類とか対策とか騒音の種類ってたくさんあるんだなって思う一方で、騒音ってどういう定義なのかなって疑問に思ったんです。
なので、今回のテーマは「騒音ってどんな音なの?」にしたいなと。
そもそも、どういうものを騒音っていうんだっけ?っていう疑問を語ってみたいなと思います。
一般的な解釈として、そもそも騒音ってどういうものとして定義されているんですか?
まあ、「ジャマな音」っていうか「不快な音」っていうか。
自分にとってあってほしくない音だよね、騒音っていうのは。
だから、もちろんネガティブな要素になる。
騒音のくくりってすごく広いんだけども、英語で言うと、よく使われる「アノイアンス」っていう言葉があるんですね。
どういう意味なんですか?
「うるささ」みたいな。 “ジャマされ感”みたいな感じなんです。
騒音を評価するときに、住民のアノイアンスの度合いを調査して評価するということが疫学的研究でおこなわれるんだけども、それと同じような言葉で「ノイジネス」ってあるんですね。
これはアノイアンスの“うるささ”に対して、ノイジネスは“やかましさ”っていう言い方があって。このやかましさには若干、物理的な意味も含まれる。
ああ、なるほど。
さらに、「ラウドネス」というのもある。
「アノイアンス=うるささ、ノイジネス=やかましさ、ラウドネス=音の大きさ」なんだけど、よく我々は取り違えていて、ラウドネスが大きいグラフを見ると、「これうるさいよね」と言ってしまうんだけども、アノイアンスとラウドネスの間にはちょっと距離があって。
というと?
うるささっていうのは個人がどうその音に邪魔されたかっていう心理的なことなので、物理では説明できないんですよね。
騒音を浴びせられる意味の「曝露(ばくろ)」という言い方があるんだけども。
例えば、航空機の騒音の曝露で、普通の生活に対してどれくらいその航空機騒音が生活を邪魔するような音になってるかっていうのを測る。
「とってもうるさい=ハイリーアノイド(highly annoyed)」っていう反応をした人のパーセンテージを縦軸に、測定した音圧レベルを横軸にとって相関を取ると、当然音圧レベルが高いとハイリーアノイドと反応する人のパーセンテージが増えていくので、当然右肩上がりになる。
そうですよね。
でも、普通にあるざわざわした騒音レベル55dB~65dBあたりでは、てんでバラバラのカオス状態。全く相関がない。ところが40 dB以下になるともう、ほとんどの人がうるさくないと。
逆に70~75 dB以上になると、ある程度の人はとってもうるさいって反応する。
騒音のレベルがかなり低いか、かなり高い環境では、うるささとの相関はあるんです。
ところが一般的にあり得る騒音環境の中では人によって全然評価が違う。
なるほど・・確かに言われてみればそうなりそうですね。
境界線を引こうと思うとパチッと引けなくて。そこにはすごくばらつきがあるっていう感じ。
でもそれを、静かな40 dBぐらいの環境と、うるさい80dBぐらいの環境を相関があると考えて一本の線で引かないと、住民の何パーセントの人がとってもうるさいって反応していて、このコミュニティは航空機騒音に曝露されているんだっていう説明ができないじゃないですか。
数値としては使いづらいですよね、ありのままだと。
だから一本の直線にしちゃうわけですよね。
近似線にしてしまうと。
だから、それぐらい心理的な要因になるんです。
航空機騒音であってもそうなんですよね。
心理的な航空機騒音との距離感っていうと、親密な人はあまりいないと思うんですよ。
だから心理的な距離が遠いにもかかわらず、マジョリティのデータ群ではレベルと反応の相関っていうのは全く取れないという事実があるんですよね。
なるほど。
もう少し物理的に、騒音って何dB以上/以下みたいに決まっているのかなって思ったんですけど、今のお話を聞くと騒音っていう定義は、結構人によってバラついてしまうんですね。
そうそう。何が言いたいかっていうと、航空機騒音でさえ、それなわけですよ。
例えば、もっと身近なところのコミュニティノイズ「近隣騒音」っていうのは、音源が分かって「あそこの家の、あの中学生たちが、バスケットボール部に入って、夜にドリブル練習するからうるさいんだよ」みたいな話になる。
その中学生が親密にしている関係の人であれば、「まあしょうがないな」と思ったりするわけだけども、全然知らない人間関係のない人たちがどう思うかっていうと、単にノイズとしか受け取れないなと思うよね。
そういう近隣騒音の難しさっていうのは、その音を発生している理由と、それを起こしている人とその音に曝露される人との関係、これでほぼ決まってしまう。
確かにそれはありますよね。
だから物理的な音の大きさではないんだよね。
第2回では、騒音規制法と環境基準についての解説や、コミュニティの騒音問題の解決の糸口に迫ります。
お楽しみに。(2025年1月7日(火)更新予定)
プロフィール
株式会社 Sound One
音・振動分野の電子計測機器や試験機の開発を行う株式会社小野測器のグループ会社。
音を聴いた印象を評価するWebアンケートサービス「Sound One」の開発、運営を行っています。
Sound One 公式サイト
https://soundone.jp/
【異音の問題をスピーディに解決】音のWebアプリケーション
https://sound-one.net/lp/abnormal-noise/