暮らしを左右する“家の外まわり”の基本【前編】
- お役立ち

ごあいさつ
『マイホームデザイナープラス』をご覧の皆さん初めまして、今回から「家の外まわり」=「外構」についてのコラムを書かせていただくことになりました「日本庭女子会~にわとわに~」と申します。
私はこの会のプロフェッショナルメンバーであり、住宅の外構やお庭の設計施工を生業としております芦川美香と申します、どうぞよろしくお願いいたします。(詳しくはページ下部のプロフィールをご覧ください)
早速ですが、皆さんが「外構」と聞いて、どんな印象を持たれているでしょうか?
・家ができた後考えればいいもの?
・ハウスメーカーや工務店がなんとなく一緒にやってくれるもの?
・予算的に後回しになってしまうもの?
いやいや、それはちょっともったいない、と私たちは考えます。
外構次第でその家の住みやすさ・暮らしやすさが圧倒的に変わりますし、その完成度に決定的な違いが生まれてしまうからです。
そして、「外構」全般を意味する「エクステリア」と、お庭造りや緑化計画を意味する「ガーデン」を合わせてトータルで設計・提案するのが、私たち「エクステリア・ガーデンデザイナー」あるいは「エクステリアプランナー」の仕事です。
専門職によって手がけられた「外構」は重要なポイントをしっかりと抑えながらも、住宅を快適にして、暮らしに寄り添ってくれます。
ではその「外構」とはどういうものなのか、基本的なところを一緒にみてみましょう。

芦川設計・施工例
家づくりのはじまりと外構とは
まず家づくりの最初の話をしましょう。
家づくりの第一歩は、「土地の取得」から始まることが多いはずです。
この「土地」の境いを表す「境界杭」を結ぶ直線「境界線」に囲まれた、建物を建てるための土地を「宅地」といいます。

「宅地」の権利を取得し家づくりがスタートしますが、法的な手続きや予算計画、建築条件の確認に時間を要し、さらに設計・施工会社との打ち合わせ、確認申請など・・・。もうこの時点で、頭がいっぱいで、対応すること・考えることに疲れてしまった・・・という方が、少なくないのは事実です。実際私もこの段階のそういうお客様にたくさんお会いしてきました。
そんな中で見落とされがちなのが、法律上の様々な規制に従い「宅地」に「家」を建てると必ず発生する「宅地内の余地」、つまり家を建てたあとに残る“外まわりの土地”です。
これは、どんな敷地でも必ず発生します。
そしてこの外まわりの土地こそ、住みやすさ・暮らしやすさ・機能性・安全性・メンテナンス性・将来的な
資産価値・家族の心身の健康にまで大きな影響を与えるにもかかわらず、設計や施工の初期段階では十分に検討されていない「外構」の対象エリアなのです。


その余地をどのように適切に計画していくのか、更には有効活用していくのか、そこを考えるのが「外構」という分野になるのですが、意外と、家づくりの失敗や後悔はその「家の外まわりの土地」に目を向けてないから起きていることも多いんです。
ちょっと視点をずらすことによって、家づくり計画の今後も大きく変わってくるかもしれません。

また、家づくりは「家」だけでなく、取得した「宅地」のすべてにおいて、所有権を得ると同時に「管理責任」も発生してきます。
「家の外まわりの土地」=「外構」をどうするかで、その家の住みやすさ・暮らしやすさが圧倒的に変わります、と先ほどもお伝えしましたが、玄関やお庭などの家に近接する住空間だけでなく、家の顔ともなる「道路境界線」沿い、お隣同士接している「隣地境界線」沿いの、各境界線に接する部分の処理もご近隣との関係性を円滑に保つために、所有者そして管理責任者としての気遣いが必要な部分となります。
そう表現するとちょっと堅苦しくて面倒な感じに聞こえてしまうかもしれませんが、主たる住空間と併せてそういったところにも意識を持っていくことで、家の防犯・防災対策であったり、将来の暮らし方の変化まで、様々な今後の心配ごとの対策ができるようになるんです。
「土地がそんなに広くないから・・・」と外構を計画せずに進めていませんか?
そんなに広くない土地こそきちんと家の外まわりを考えておかないと、それ故に後で大変なご苦労をされるケースもあります。
特に道路と宅地に高低差があったり、狭小宅地や変形宅地だったりすると、車が入らない!車は入るけど自転車が入らない?玄関に人が入れない?!など。築年数が浅いのに一部壊したり、リフォームせざるを得なくなって、予定外の出費が発生することもあったりします。
「予算があまりないから・・・」と外構費用を最小限にしていませんか?
最初にまるっと全て豪華にやらねばならんってわけではないのです。
きちっと要所を押さえて、できるところからでいいのです。ただ、様々な可能性を想定して、少し先の完成形を想像していることが重要です。極力、無理や無駄にならないように、必要なところから必要なものを造っていく計画が大切なんです。
そうして家が建ち「良い家できた!」と心から言えるのって、実は外まわりも完成してからだったりします。
外まわりを含めた家の完成度によって、玄関ドアを開けた、室内からふと窓の外を見た、毎日のモチベーションが劇的に変わります。これもまた紛れも無く、私がお客様と共有してきた経験値です。
さあ、あなたも私たち専門家と一緒に「家の外まわり」=「外構」のこと、考えてみませんか?
筆者紹介
連載『家づくりは“外まわり”で決まる ― 外構から考える住まいづくり』
外構の大切さを理解し、心から安心できる住まいを築いてほしい——そんな思いから始まった「日本庭女子会〜にわとわに〜」のコラム。新築計画に役立つ外構の知識やアイデアを、月1回更新でお届けします。
プロフィール

日本庭女子会〜にわとわに〜
エクステリア・ガーデン業界やそれをとりまく業種に従事する・携わる女性たちが、交流や情報交換を目的とし2017年に活動開始。
「庭や外部空間を美しく快適にすることが、住まいや暮らしを豊かに送るのに不可欠なことであり、ひいては日本の街並や景観・環境を美しく創り保ってゆくのに重要な役割を担っている」
また「住まい手だけでなく造り手・働き手の身になって考え、幅広い知識で美しく機能的な空間を造っているプロフェッショナルな女性たちがいることを知ってほしい」
そんな熱き想いを持った庭女子たちが、所属や経験・年齢を超え様々な切り口の委員会を組織し、日本各地で活動・躍動中。現在メンバー150人超。
https://niwatowani.jp/執筆者

芦川 美香 (あしかわ みか)
横浜市を拠点とするこの道25年超のエクステリア・ガーデンデザイナー。
株式会社アフロとモヒカン代表取締役。
「はじめのいっぽからさいごのちゃくちまで」を社のモットーに、日々お客様宅の外まわりをお客様らしく、美しく暮らしやすく整えるべく、設計・営業・現場に奔走中。
にわとわにプロフェッショナル会員、「美未備っと安心安全委員会」委員長、1級エクステリアプランナー、ブロック塀診断士、E&Gアカデミー講師
https://niwatowani.jp/?itemid=120&catid=12